ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【シリーズまとめ感想part9】俺、ツインテールになります。

 今回感想を書いていく作品は「俺、ツインテールになります。

 俺、ツインテールになります。通称俺ツイガガガ文庫より2012年~2022年の間に刊行されていた全22巻(本編21巻+4,5巻)のシリーズ。作者は水沢夢イラストは春日歩、最終巻のみ春日歩&bun150

俺、ツインテールになります。 (ガガガ文庫)俺、ツインテールになります。 (19) (ガガガ文庫) 

 ※画像はAmazon購入リンク(1巻および19巻)

 

 

 まずは本作のあらすじから。

 ""ツインテールをこよなく愛する青年・観束総二。高校入学の日の帰り道、彼は異世界やって来たという少女トゥアールに出会う。彼女は人の精神エネルギーである属性力(簡単に言えば人の趣味趣向性癖といった感情)を奪う怪人エレメリアンが世界を脅かし、それに対抗できるのは他の誰よりもツインテールを愛し、最強の属性力たるツインテール属性を持つ総二しかいないのだと言う。

 何が何やら分からないままにツインテールを愛する心を武器に戦うツインテールの幼女戦士・レイルレッドに変身することになる総二。幼馴染みの津辺愛香(テイルブルー)や生徒会長の(テイルイエロー)らと共にエレメリアンと戦う彼らの物語が始まる""

 といった感じの内容になっています。超ざっくり言うと「しょうもない性癖を持った悪の怪人集団と戦うヒーローモノの作品」です。なのでジャンルとしては変身アクションギャグコメディがメインになる作品ですね。

 この作品の魅力はパッと思い浮かぶだけでもいっぱいありますが、その全ては「好きなものに全力であること」に繋がっていると思います。好きなものに対して真っ直ぐであること、これこそがこの作品最大の強み。ですので、それを念頭に置いて大きく2つの「好き」に分けてお話ししていきます。

1:キャラクターの持つ「好き」

 本作の軸となっているのが"属性力"、いわゆる趣味や性癖です。

 自分の信念を貫くキャラクターって基本的にカッコいいですよね? この作品は登場人物全員がコレなんですよ! ……まぁ、紙一重で変態しかいないとも言えますが。

 この筆頭が本作の主人公である観束総二くん。彼はツインテール大好きな青年です。ツインテールに変身したり、ツインテールの気配を感じたり、ツインテールを見て感情を読んだり、ツインテールに一喜一憂して瀕死になったり、古代ツインテール語を話したり、自分の中にツインテールを飼っていたり、ツインテールを武器に変えて戦ったりするだけのごくごく普通の青年。……あれ、普通な要素が一つもないや、スーパーツインテール人か何かかな?

 ※この作品はツインテールという単語がこの通りゲシュタルト崩壊するくらいにあらゆる概念に対してツインテールツインテールしていて、一部が古代ツインテール語で書かれている作品です。これが受け入れられない人は読むのがつらいかもしれません。が、個人的にはこの手の「こいつは何を言っているんだ?」を勢いでゴリ押すタイプの作品が大好きなのでめちゃくちゃ楽しめました。

 ※※最強のツインテール属性を持つ主人公・観束総二はツインテールの女の子が好きなわけでなく、ツインテールが好きということに注意。例えばツインテールがめちゃくちゃ似合っている女の子がいたとして、そのツインテールの素晴らしさを絶賛することはあれど、その女の子に恋愛的な感情を持つことがありません。恋愛に関しては鈍感というか無関心なのかと思うくらいにヒロインの好意に気づけません。ツインテールのみを愛した障害が……。というわけで主人公とヒロインが最終的には結ばれるようなものを本作に期待してはいけませんね。

 ヒロインもキワモノ揃い。あらすじにも登場したトゥアールはキャラ紹介で一言痴女と書かれるような女の子。ことあるごとに総二の童貞を狙っては、総二の幼馴染みでありほぼ全キャラクターから蛮族として恐れられる愛香(テイルブルー)に殴られ投げ飛ばされ地面や壁にめり込んでいます。この2人のキャットファイトは本作のコメディや日常で一つの中核を成しており、一方で普段から喧嘩しかしない2人だからこそシリアスではその独特な絆が輝いたりもする側面があったりします。さらには露出癖とドMをこじらせたイエローや根暗にストーカーを合わせたブラック、結婚願望強すぎるアラサー教師などなど。ツインテールバカな主人公でレッドに負けず劣らずで仲間たちもいろとりどりすぎるキャラクターが揃っているわけですね。

 さらに、変態なのは味方だけでなく敵も変態しかいません。怪人エレメリアンは人の持つ属性力を奪う怪人であり、自身がその属性力を持っているのです。つまりはロリコンの属性力を狙う怪人はロリコンで、貧乳好きの属性力を狙う怪人は貧乳好き、というように変態しかいないということですね。これもまた本作のコメディの中核を担ってくるポイント。しかし、奴らは変態は変態でも変態紳士であり、変態なりの流儀を持っているのです。だから悪の怪人なのに決して憎むことができない。悪の怪人にだって好きなモノがあっていいじゃない、それを語っていいじゃない、彼らの日常シーンを見ているとそんな思いが生まれてきます。敵と共同戦線を張るというお約束展開がある巻では、まさにこの怪人たちが主役でその変態たる生き様を見せてくれて、これがめちゃくちゃカッコよくてグッとくるんですよ!

 もう一度言います。自分の信念を貫くキャラクターってカッコいいんですよ! 仲間も敵も誰もがバカで変態だけど、それでいいんです、それがいいんです。そんなふうに思わせてくれるほどに自分の好きなものに全力な作品が面白くないわけがないんですよね。

 

2:作者の持つ特撮「好き」

 この作品はヒーローモノであり、特にスーパー戦隊仮面ライダーといった特撮に影響を受けていることが作品の随所から感じられます。これは作者が特撮好きであり、全力で好きなものを書いている結果でしょう。しかし、そうであるからこそ、作者の持つ「好き」だとか「面白い」ものを書こうという熱量がこれ以上なく読者に伝わってきて面白いのです。

 最初に本作は本編20巻と言いましたが、正確には本編完結が19巻です。20巻はいわゆる劇場版MOVIE大戦で水沢先生の描く俺ツイ以外の作品「ふぉーくーるあふたー(全4巻)」と現在3巻まで刊行中の「双神のエルヴィナ」とのオーバークロスな内容になっています。20巻の刊行時期としてはエルヴィナ発売前になっていて俺ツイとふぉーくーるという二世代共演に、次世代のエルヴィナの初お披露目といった形になっていて、まさしく劇場版という形になっていました。そのため20巻だけはイラストが春日先生だけでなく、ふぉーくーるのイラストを担当されたbun150先生も加わっているわけですね。読んだときには、あぁこれは水沢先生の夢が詰まってるんだなと不思議な感動を覚えてしまいましたね。ですので20巻を読む前にはふぉーくーるとエルヴィナをあらかじめ読んでおくことを推奨します。それぞれの1巻購入リンク(BOOKWALKER)を貼っておくので気になったらこちらも要チェックです。

ふぉーくーるあふたー - ライトノベル(ラノベ) 水沢夢/bun150(ガガガ文庫):電子書籍試し読み無料 - BOOK☆WALKER -

双神のエルヴィナ - ライトノベル(ラノベ) 水沢夢/春日歩(ガガガ文庫):電子書籍試し読み無料 - BOOK☆WALKER -

 と、少し話が逸れましたが戻しましょう。

 本作が作者の特撮好きから生まれている。これが最大の強みとなるは、読者の期待に最大限に答えてくれる、ということだと思います。わたし自身、特撮全般とは言いませんが、仮面ライダーは好きでよく見ているので、仮面ライダーのカッコいいところ、良いところ、王道パターンみたいなものを感覚としてたくさん知っています。なので特撮好きな作者なら「こういう展開はやってくれるだろう」と期待するモノがいくつもあった訳ですよ。そして、俺ツイはその期待に全て応えてくれました! いえ、応えた上で期待以上を見せてくれたのです!

 その結果、3回も泣きました!

 泣いた3回はそれぞれかなり盛り上がる巻で感動的なシーンもありましたし、文句なしに面白い巻ではありました。しかし泣くようなエピソードだったかと言われると首を傾げてしまう。それでも、実際に泣いているんですよね。それが何故かと言えば、この作品がわたしの「こういう展開が見たい」を期待以上に見せてくれたからだと思っています。感極まってしまうくらいに読者の希望を満たしてくれる。それが最上の満足感となってぶつけられるのです。

 これは作者が自分の好きなものを全力で書いていて、それが読者の好きとがツインテールするからこそ生まれる現象ではないでしょうか? 是非ともわたしみたいに仮面ライダーが好きだったりする人、戦隊モノ特撮が好きな方には読んでみてほしい作品です。

 

おわりに

 「好き」の力って凄まじい。そんなふうに思わされ、涙を流した作品。

 そんな作品なので、最後にわたしの「好き」も話したくなってしまいます。

 わたしは異種族ヒロインをこよなく愛しています。ここで言う異種族というのは、単にエルフだとかけも耳美少女とかに限った話ではなく普通の人とは異なる性質、能力、あるいは状況に陥っていることを指します。この定義で言うと例えば、タイムリープや未来からやってきたキャラクター、あるいは異世界の住人、魔法使いや超能力者も含まれるのです。このようなヒロインの何が好きって、他の普通の人とは違う自分に悩み苦しみ誰にも言えない想いを抱えている、そんな少女たちが唯一信頼できる人に出会ったり、大好きな人に救われたときに見せてくれる笑顔、コレですよ!

 俺ツイで言えば異世界からやって来たトゥアールがまさしくここに当てはまり、もう堪らなく大好きなんですよ! この作品を読み、彼女の過去や背景を知ったらもう、彼女には幸せに笑っていてほしいと願ってしまい、彼女が救われた巻はもう涙なしじゃ見られませんでしたよね。ぶっちゃけ読む前から泣きそうでした。で、読んでガチ泣きです。特にトゥアールは性格もわたしの好みドンピシャだから感動もひとしお。変態ですし、普段からアホな言動も多く、すぐに壁にめり込まされるようなネタ枠な彼女ですけど。その胸の中にはずっと過去の重荷がつきまとっていて、けれどそんなの表に出さず笑顔の仮面を貼り付けて、そんな少女が心の底から笑うようになるんんですよ! 泣いちゃうのは仕方ないでしょう! トゥアールにはもう一生幸せに笑っていてほしい!

 

 こんなわたしの「好き」も満たしてくれて、キャラクターたちの「好き」に彩られ、特撮「好き」な作者の想いを存分に乗せた作品はまさしく「好き」に満ちあふれた作品で、最高に面白い作品でした!

 今回の感想は以上。

 気になった方は是非、以下に1巻のリンクを貼っておくのでチェックしてみてください。 

 

Amazonリンク

俺、ツインテールになります。 (ガガガ文庫)

 

BOOKWALKERリンク

俺、ツインテールになります。 - ライトノベル(ラノベ) 水沢夢/春日歩(ガガガ文庫):電子書籍試し読み無料 - BOOK☆WALKER -

 

 

→次のラノベ感想「神様のいない日曜日」

【ラノベ感想記事part10】神様のいない日曜日 - ぎんちゅうのラノベ記録

 

→前回のラノベ感想「この中に1人、妹がいる

【ラノベ感想記事part8】この中に1人、妹がいる! - ぎんちゅうのラノベ記録