今回感想を書いていく作品は「花×華」
電撃文庫より2010年~2013年の間に刊行されていた全8巻のシリーズ。作者は岩田洋季。イラストは涼香。
※画像はAmazonリンク(1巻および2巻)
まずは本作のあらすじから。
””高校二年の夏休み。主人公・園端夕の元に一通のラブレターが届く。
「もう一度、あなたに撮られたい」
そんな内容の手紙とともに告白してきたのは、二人の女子。元気で明るい「花(1巻表紙の子)」とお嬢様然とした「華(2巻表紙の子)」――同時に告白してきた二人はどちらを選んでもらうかを決めてもらうためにその日から猛烈なアプローチを始める。その勢いは夕の所属する映像研に押しかけてくるほどのもので。
こうして始まる花×華の日々と恋の行方は果たして……””
と、こんな感じの作品。ジャンルとしては三角関係ラブコメ、青春、映画撮影あたりになるでしょうか。
個人的には今まで読んできた中ではトップレベルに面白かった青春ラブコメ作品ですね。作者が花×華の一つあとに出した作品に「叛逆のドレッドノート」というものがあり、その作品ではヒロインの吐き出す想いに圧倒される魅力がありましたが、この作品でもまたその熱量が二人のヒロインで発揮されるので三角関係ラブコメとしての魅力も素晴らしかったですよね。
あ、叛逆のドレッドノートの感想は以前に書いているのでよければそちらも見て欲しいです。↓
【ラノベ感想記事part12】叛逆のドレッドノート - ぎんちゅうのラノベ記録
と、そんなわけで感想にいきましょう。
1:1巻から見せつけてくる三人の関係性
本作のメインとなる三人。その魅力は1巻から存分に発揮されていました……、というか1巻の完成度があまりに高すぎる。こればかりは実際に読んでもらう他に正しく伝えることができないと思うのですが。
まぁ、ネタバレはしない程度に。
まず主人公の夕。彼は父親が映画監督であり、自らも映画撮影の道へ進もうとしていて映像研究会に所属している。
続いて二人のヒロイン花と華。花は快活、華はお淑やか。花は演技の経験はないけれどその才能は輝かしいものがあり、華は幼い頃から演劇をやっており努力して積み重ねた経験がある。と、挙げれば対照的な点はいくつも出てくる二人。けれど、その恋する相手は、その想いは同じ相手に。そして二人は旧知の仲でもあるようで……。
と、1巻で重要になってくるポイントはこのダブルヒロインが旧知の仲であるということと三人の関係性を繋ぐのは映画や演劇であるということ。
何故一つのラブレターで二人は同時に告白してきたのか。奇妙なきっかけから始まった恋の真相が明かされていく展開にはもう体の震えが止まらなかったですよね。とにかく密に編まれた三人の背景には圧倒されます。だから、ここを詳しく語るわけにはいかないのです。
そしてそこから全8巻で紡がれる三人の恋。お互いに決して引かず、相手を陥れることはなく、全力で真剣に自分を好きになってもらうための花と華の戦い。ただの恋だけでなく、彼の最も大切な映画でメインヒロインになるための戦いもあって。ここで花の才能と華の努力といった対比がめちゃくちゃ良い味を出してくるのですよ。そしてだからこそ花も華も最高に魅力的で、最後の最後までどっちが選ばれるのか分からない展開。だけど、最後にはちゃんと夕くんは決断しましたよ。曖昧な三角関係では終わりませんでした。これだけでも最高の完結があった作品と言って良いでしょう。
是非、こんな三人の恋路を多くの人に見届けて欲しいです。
2:いまここにしかない一瞬の輝き
わたしが本作に1つキャッチフレーズを付けるならきっとこれです。
本作のキーワードは映画撮影、三角関係、青春の3つが大きくあると思っていてその全てでこの作品は一瞬の輝きというものを大切にしていたように思うのです。
映画撮影では、文字通りに切り取ったその瞬間という意味。映画はメインの三人を繋ぐ絆であると同時に過去から続く呪いでもあって、しかしそうであればこそ今フィルムに映っているこの瞬間だけは過去も未来も関係ないのだという、三人の熱量や想いが輝いていましたね。
三角関係の一瞬とは、三人の関係が変らずに続けばいいのに……という楽しい心地よい時間を想うこと。いつかは二人のどちらかを選ばなきゃいけない、二人のどちらかは選ばれない、その未来は必ずやってくると理解している。自分が泣いてしまう可能性があると分かっていても、花と華はお互いを決して陥れることはなく、恋のライバルとして正々堂々思い合い戦うことができる強さを持っていました。この二人の気高さがどれだけ美しかったことか。
そして青春は真っ直ぐに、高校生の間にしかない時間のこと。恋に部活に全力を尽くす少年少女たちの青臭い眩しさです。
どの瞬間であっても、それが何よりも美しくて。綺麗だからこそ永遠に続いてほしいと願ってしまう。けれどそんな願いは決して叶わなくて、いつかは失ってしまうから。と、そんな想いが綴られる様子にには胸がきゅっと締め付けられるような気持ちになるのですよ。作中では”永続性のないものは美しい”なんて表現されていましたよね。
3:それだけじゃなくて
二人の”はな”の魅力と、3つの輝かしい”いま”
これこそが花×華最大の魅力と思っていて、その描写こそがわたしの心をわしづかみにした要因ではあるのですけど。
個人的にはそれ以外にも背景描写というものにも着目して見るとまた面白いのかなと思っていたりします。ここでいう背景はキャラのバッググラウンドという意味でなく、文字通りの風景のことで。映画撮影がテーマにある本作ではヒロインたちが映るフレームの奥にある景色の描写が本当に素晴らしかったんですよ。桜の木の下にたたずむ女の子が幻想的で綺麗に見える、みたいなイラストだったら顕著に表れる強みを文章でこれ以上無いほどに表現していたと言えば良いでしょうか。そんな感じ。
おわりに
これまで読んできた青春作品のなかで最も心に刻みつけられた作品。
それがわたしの正直な感想です。しかし、この作品の魅力は述べてきたようにキャラクターの関係性とそれを最大限に発揮する描写の良さなのですよ。わたしの言葉でこれを上手く伝えることができない……。
この記事もどうやってまとめればいいんだと悩みながらなんとか形にしたくらいで。
・三角関係として、主人公とWヒロインの関係性が最高すぎる!
・恋に映画に青春、一瞬の輝きが爆発した瞬間が最高すぎる!
・そんな彼ら彼女らの輝きを映えさせる背景描写が最高すぎる!
ということを、伝えられるようにがんばったつもりです。とりあえず1巻を読んでほしい、と言うのは説明放棄で無責任ですかね? でも、そうとしか言えないのですよー
というわけで、今回の感想はここまで。
もし気になった方は以下のリンクからチェックしてみてください。BOOKWALKERの方では読み放題の対象になっているので、そちらで読んでみるのもいいかもしれませんね。
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