ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【シリーズまとめ感想part22】バロックナイト

 今回感想を書いていく作品は「バロックナイト
 MF文庫Jより2012年~2014年の間に刊行されていた全4巻のシリーズ。作者は葉村哲 。イラストはほんたにかなえ

バロックナイト (MF文庫J)バロックナイト 2 (MF文庫J)

※画像はAmazonリンク(1巻および2巻)

 

 

 今回はいつもとちょっとだけ形式を変えていきます。というのもがっつりネタバレ有りな感想を書くので。

 

1:作品の概要と感想(ネタバレなし) 

 まずは作品のあらすじから。

 

 ””放課後の屋上に呼び出された京弥を迎えたのはバロック――【歪み】という名を持つ少女だった。彼女と口づけを交わした瞬間、京弥は『レガシーオブタナトス』という異空間に『幻想接続』した!!
待ち受けるのは悪魔に天使、妖精と幻獣、神々の遺跡。バロックは、京耶と共にバトルゲームの頂点『王冠』を目指すという。実は現世で存在が消滅していた京弥の「因果」を取り戻すため、バロックは京弥と共に武器を手にしたのだった!
 そう、全ては――、「私はキミを、あいしているから」
 剣哮と弾丸が交差する、アンノウンバトルアクション開幕!””

 

 と、これは1巻あらすじを丸々コピペしました。

 え、なんでコピペしたっかって? わたしがこの作品の概要をまとめられないからですよ!!! てか、まずこのあらすじも全然足りてねぇですし!!!

 

 はぁ、落ち着きましょう。

 まず本作をわたしが一言で表すなら「痴情のもつれと愛憎で歪んだ世界のお話」です。え、あらすじを見ると異空間でバトルゲームをするお話っぽく見えるけど? と思ったそこのアナタ! それはまやかしです。ウソです。

 

 この作品は頭のネジがぶっ飛んだヒロインたちがたった一人の愛する人を手にするために世界を歪めていくお話なんです。ヒロイン全員病みまくってます。闇抱えまくってます。そして、歪みに歪んだ結果の最終巻の結末はマジでヤバい。あまりの衝撃にわたしは言葉を失いました。

 

 本作に関してはこのヒロインたちの病み具合だけでも相当にイカれてますが。そもそもに作中の設定描写が足りていないこと、作品用語の固有名詞が非常に多いこと、展開がぶっ飛んでいること。これらが合わさって、読者に内容を理解させる気がないんじゃないかと思わせてくる闇も抱えています。正直、いろいろな意味で頭が痛いです。読むならちょっと覚悟した方がいいかもしれませんね。

 

 ただ、それでも。

 

 わたしはこのあまりに歪んだ痴情のもつれの結末は一読の価値があるように思えますね。

 

 では、ネタバレ有りで感想にいきましょうか。

 

 

2:感想(ネタバレ有り)

 まず本作は主人公である京耶の前にバロックという少女が現れ、彼女に「レガシーオブタナトス」という異空間で行われているゲームに巻き込まれるところから始まります。そして、バロックの目的は、実は存在が消滅していた京耶を救うためにその因果を取り戻す、つまりは他者との繋がりを作り出すことにありました。

 というここまでは最初に説明したあらすじに嘘偽りありません。

 

 しかし、問題がこれが本作のマジで氷山の一角しか見せていないことにあるんですよ。

 

 バロックが京耶を救いたいのは、彼のことを愛しているから。シンプルな理由です。しかし、これはただ一途に京耶だけを愛し続ける天使の恋であった。それの何が問題なのかって? バロックは京耶”だけ”を愛しているんです。よどみのない笑顔で言いますよ「世界中が敵になってしまえば、自分だけが京耶の味方でいられるね」と。そして街中の人間の3割が即死する最悪のゲームを引き起こす片棒を担いでいくのが2巻のラスト。

 2巻にして、メインヒロインの闇が……。と思いましたよ。ええ。

 しかし、大丈夫です。まだ序の口。

 

 1巻のお話に戻します。1巻ではバロックともう一人の少女・瑠璃子が現れます。2巻表紙の子ですね。彼女は京耶の元彼女でした。存在が消えかかっていた京耶はその記憶の一切を失っています。そして瑠璃子は自分を捨てて京耶に復讐するためにやって来たと言い出して。

 つまり、存在が消えかかっていて記憶を失っている京耶。それを救おうとして愛を唱え続けるバロック、復讐しようとする元恋人の瑠璃子。こういうわけですね。なかなか不安でいっぱいの三角関係ですね。

 

 そして、バロックが見せたような歪みを瑠璃子は持っているのか? 持っています。彼女が最初に見せた闇は、記憶を失っている京耶に、自分がどれだけあなたを愛していてどれだけ憎んでいるかという感情を訴えるということ。それを言葉でなく、ゲームで手に入れた能力で京耶の頭の中に直接。

 ……なんか能力の使い方がおかしいんですけど。まぁ、このくらいもまだ普通ですか。

 

 では第三のヒロイン、早香について。彼女はとある事件から京耶と出会い、仲をを深めていきます。が、事件の最後に明かされたのが、自分の彼女を皆殺しにした復讐相手が京耶だったという話。衝撃の事実と、彼に惹かれている感情に板挟みになりながら、彼女は都合のいい浮気相手のような態度を見せていくのです。

 関係性が四角関係になってきましたな。

 

 では、五角形にしましょうか。

 早香の家族を皆殺しにした京耶。何故、そんなことをしたのか? それは言うまでもなく京耶自身も歪んでいたから。彼は元々ゲームをぶち壊そうとしていた、殺人に躊躇のない最強最悪の死神として君臨していました。しかし、その戦いに破れ存在が消滅しかけてしまったと。

 じゃあ、なんで歪んでしまったのかといえば、その原因が彼女の妹にあったのです。妹の今日子は病弱で幼くして命を落としています。京耶はそんな妹を大切に思っていた。しかし、妹にとっては自分の全てといっていい兄との繋がりに依存し、お兄ちゃんの恋人だった瑠璃子に嫉妬した結果「お兄ちゃんの手でわたしを殺してくれれば、わたしはお兄ちゃんの心に永遠にいられる」と病院のベッドの上で京耶に自らの首を絞めさせませた。

 

 ……なんというか、狂気的な思考のオンパレードだな。まともなヒロインいねぇのかよと。いないですね。京耶との恋愛問題にならないキャラですらマッドサイエンティストとか天使とか、普通の人間じゃないのしかいませんから。

 

 さて、ここまででそれぞれのヒロインの立場がある程度整理できましたね。

 最後に一つだけ大事な説明をするなら。

 バロックは天使である。これは文字通りに超常的存在としての天使。で、彼女ははるか昔に初めて出会った京耶に恋をしていたのです。(……おいおい、なんか前世まで関わってきたぞ。と、わたしは思いましたね)

 で、恋したバロックはしかし、振られてしまいます。前世の京耶には、前世の瑠璃子がいたから。そしてバロックがこの二人が恋人であることが正しい因果であると認識してしまったがために、それ以降いくつもの時代で京耶と瑠璃子は恋人になって、そのたびにバロックはそれをいちばん側で見てきたのだと。

 何度も何度も失恋を続けていながら、それでも京耶だけを愛するというバロック。それが前世からの因果であることを認識せず京耶と結ばれ続けていた瑠璃子。あまりに深すぎる因縁ですよ。

 

 そんな複雑な関係性がいくところまで行き着く最終巻。

 まずは前述の瑠璃子以外が決して京耶と結ばれることのない事実が明かされて、色々な経緯の末にバロックと今日子は融合します。

 瑠璃子は京耶を監禁して、世界中の全ての捨てて京耶だけを手に入れる覚悟を決めました。

 早香はあまりに歪んでいるバロックと瑠璃子には京耶を渡せないと言い、戦う覚悟を決めました。がその直後しかし、瑠璃子が透明化の能力を使って、背後からバーン、早香は殺されてしまいます。邪魔な女は皆殺しなのですよ。

 それでも、早香は生き返りました。その代償としてたった一つの願い以外を失ってしまいますが。そのたった一つの願いとは「自分が京耶を殺すことで永遠に彼を自分のモノにすること」――結局、いちばんまともだと思っていたのにやっぱり病んでいた早香は京耶と戦い、敗れます。

 瑠璃子は融合したキョウコバロックと最後の戦いに挑むも、一歩及ばず。瑠璃子はキョウコバロックに取り込まれ融合してしまいました。

 京耶は自らバロックに呑み込まれ融合しました。

 最終的にバロック、今日子、瑠璃子、そして京耶は4人まとめて融合して一つの存在になり、永遠に異空間を彷徨うことに。やがてバロックの姿をしたバロック&瑠璃子&キョウコ、瑠璃子の姿をしたバロック&瑠璃子&キョウコ、キョウコの姿をしたバロック&瑠璃子&キョウコ、京耶の四つに分裂。

 3つの体に分裂したバロック&瑠璃子&キョウコ融合体は全く同じように愛の告白を京耶にするのでしたとさ。

 

 END

 

 一方、その頃ゲームから解放された現実世界。

 実は現実世界には京耶の存在の半分が戻ってきていたのです。
 その半分だけの京耶はバロックや瑠璃子などの記憶を失っていて、そんな彼の隣にはゲームの世界では死んで終わった早香の姿。
 二度と歪んだバロックたちの手には渡さないと、早香は京耶の手を離さないのであった。

 

 END

 

 ……。

 …………。

 いや、本当に訳が分からんって。

 主人公の存在が2つに分裂して、半分は三人のヒロインと融合して異空間を彷徨い続けて、半分は現実世界に一人残った少女の元になった? まず融合エンドがやばすぎるし、何気に早香が完全に浮気相手として一人勝ちしてるみたいな構図がやばいでしょ。
 どんなエンディングですか。ハッピーエンドともバッドエンドとも言えない。ただただ歪んだ愛憎が文字通りにぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、物理的に混ざり合って終わったじゃん。ハーレムエンドの新境地か何かですか?

 ここまでわたしなりに整理しつつ書きはしましたが、自分で書いていながら改めてヒロイン全員頭狂ってるなと思いましたよ。

 

 この恋愛相関図だけでもこれだけおかしいのに、途中途中に出てきたバロックが天使だとか、前世からの因果だとか、街中の人間の3割が即死する最悪のゲームだとか、どう見たって設定過多過ぎる大規模な展開が繰り広げられるのですよ。

 なんかもう、最初にも言ったけど。

 読者に理解させる気ないんじゃないかと思います……。

 挙げ句ヒロイン融合ENDとかいうそうそうお目にかかれないヤバい結末にしますし。

 ほんたにかなえ先生のポップなイラストからは想像できないくらいには歪んでますよ。読む前と、読んだ後の印象がここまで変わる作品は本当に珍しいと思います。

 

 追記

 ……ん、あれ? ちょっと待って。
 この作品って1巻表紙はバロック、2巻表紙が瑠璃子、3巻表紙が今日子で、4巻表紙はバロックだね。
 バロックは一応メインヒロインだから最終巻の表紙になったと思えるけど。
 これ1巻〜3巻までの三人が融合して一人になって見た目だけバロックになってる説……?
 早香が一回も表紙にならないのはこの融合する三人の裏側で一人勝ちしてるから説……?

 ちょっと想像したら怖すぎるんだけど……。

 

 

 

おわりに

 バロック。意味は"歪んだ真珠"というものらしいです。

 そのバロックという語に相違ない、歪んだヒロインたちを描ききった作品でした。そしてファンタジーらしいといえばらしい衝撃的な結末。ただ、かなり読みにくいという難点を抱えている作品でもありました。

 が、個人的にはこういう頭のおかしいの大好きなので、すごい良かった作品ですね。

 もし、気になったら以下に1巻のリンクを張っておくのでチェックしてみてください。

 

Amazonリンク

バロックナイト (MF文庫J)

 

BOOKWALKERリンク

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→次回のラノベ感想「失恋探偵ももせ」

【ラノベ感想記事part23】失恋探偵ももせ - ぎんちゅうのラノベ記録

 

→前回のラノベ感想「アリストクライシ」

【ラノベ感想記事part21】アリストクライシ - ぎんちゅうのラノベ記録