今回の感想は2021年9月のガガガ文庫新作「公務員、中田忍の悪徳」です。
※現在4巻まで刊行中(2022年8月)、そして4巻まで読了済みです。新作と言うにはかなり時間経ってますが・・・まぁ、気にしない。約1年でいいよね!(このラノ2023の記事でこの作品の感想をこの記事のリンクとしてでもいいから、簡単に載せたいという思惑がったりなかったり……)
※画像はAmazonリンク
あらすじ
区役所福祉生活課支援第一係長、中田忍(32歳独身)。
トレードマークは仏頂面、責任感が強く冷酷で誠実、他人に厳しいが、自分自身にはもっと厳しい男である。無感動、無愛想、無慈悲の三拍子揃った生き様は、他の職員に“魔王” “爬虫類” “機械生命体“などと評され陰口を叩かれているが、忍はどこ吹く風であった。
ある日の深夜。
仕事から帰宅した忍は、リビングに横たわるエルフの少女を発見した。
濡れタオルで鼻と口を押さえつつ、知恵の歯車を回し始める忍。
仕方あるまい。
忍は、地球の危機を悟ったのだ。
異世界からの来訪者と遭遇した際、まず警戒すべきは“異世界の常在菌”である。
仮に異世界エルフの常在菌が、人類絶滅系の毒素を放出していた場合、焼却処理では間に合わない。ダイオキシンの如く、半端な焼却処理が土壌を侵し、その灰が風に乗り雲になり、毒の雨となって大地に降り注ぐ可能性も否めないのだ。
ならばエルフを即座に、極低温で凍結し、最善で宇宙、あるいは南極、最悪でも知床岬からオホーツクの海底へ廃棄するしかない。
必死に足掻く忍の前で、エルフの両瞼がゆっくりと開きーー
第15回小学館ライトノベル大賞優秀賞を受賞した、紛うことなき問題作。
感想
いや、クセが強い……!
1巻を読んだ第一声でした。
突如現れたエルフと公務員の交流を描いた作品。ではあるけれど、その読み口としてはファンタジーのソレではなく、科学や法律を用いた超現実的なSF考察本のような感じ。
言語が通じない。食性が分からない。生態が分からない。そんな生物を相手にして一つ一つその理解を深めていくための理論や考察の引き出しがとにかく多いこと。これを中田忍という善悪よりも正誤で物語を判断する人間が用いることで、それはもう、訳の分からないカオスな状況に……。
読んでいる身としては「何でそうなった……?」としか言えない。ノーブラとかりんとうのところはひどかったなぁ……、てかカレーは良くてかりんとうはダメなのか。
とりあえず、クセが強い。
しかし面白い面白くないで言えば、たぶん面白い。
一つ一つのこの作品だからこその感性や視点、価値観で見せられる描写は間違いなくこの作品だけの武器になっていて、最強の個性になっている。
さらには2巻以降、中田忍という人物の内面とそこにある悪徳が異世界エルフのアリエルを含め忍の交友関係と共に徐々に深掘りされることで、キャラの魅力でも味わいがどんどん良くなってくる。
これは読まなきゃ分からない面白さ。
総評
ストーリー・・・★★★☆ (7/10)
設定世界観・・・★★★★ (8/10)
キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)
イラスト・・・★★★☆ (7/10)
次巻以降への期待・・・★★★★☆ (9/10)
総合評価・・・★★★★(8/10) 読めば読むほど深みにハマる魔性の作品!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
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