今回の感想は2022年2月のオーバラップ文庫新作「創成魔法の再現者」です。
※現在4巻まで刊行中(2022年12月)、2巻まで読了済み。1巻2巻合わせて上下巻になっているので、合わせての感想です。
※画像はAmazonリンク(1巻および2巻)
あらすじ
名門貴族の子息エルメスは膨大な魔力を持って生まれ、将来を有望視された神童であった。
しかし鑑定の結果、貴族が代々継承する一族相伝の固有魔法『血統魔法』を受け継いでいない無能と発覚し!?
王都から追放された彼は失意の底で死の淵に立つが、その才能を見抜いた伝説の魔女ローズに救われて弟子となる。
そして修練の末、全ての魔法を再現する最強の魔法『創成魔法』を会得。
あらゆる価値の優劣を『血統魔法』の力で決める王国の常識が誤りだと知ったエルメスは、更なる魔法の研鑽のために王都へ帰還。
欺瞞に満ちた王国に変革をもたらす――!
無才の少年が世界の常識を覆す最強魔法譚、開幕!
感想
あー、面白い!
これは大満足ですよ!
血統魔法という特殊な魔法と、それを中心して作り上げられている”世界”をしっかりを描いているこの作品だけのファンタジーが堪能できました!
やはり物語っていうのはこうでないと!
血統魔法。それはかつて魔法に憧れた人々が生み出し、後世にどうにかして残そうと考えた結果、血筋に埋め込み、その家系のものであれば自在にその魔法が使えるようになるというもの。
しかし、長い時を経て、血統魔法は選ばれし者のみが使える神からの祝福のように思われてしまい……。
その結果として、魔法が使える者が偉く正しい。という貴族社会が出来上がってしまう。
これによって理不尽なまでの血統魔法偏重、貴族偏重、上下身分が出来上がっていってしまって、貴族は誰もが盲目的に魔法の力を信じ、絶対的な力を持つ王様を信じ、そして王様はあらゆる正義が自分にあると思ってしまう。
これはすごく歪んでいるようで、しかしある意味で順当に成長をした結果とも言えてしまう。
わたしたち現代人がいま使うあらゆる道具は、かつてそれを1から生み出した人がいたおかげで、いまのわたしたちがそれを1から作ろうなどとは思わないのと同じです。
便利なものは使えばいい。そして使って物事ができるならそれでいい。発明っていうのはそういうものですよ。もっとも、現代人にとっての技術の例は誰にでも使えるようにされているので、この作品ほどの格差は生みませんが。
この作品は便利なものをたしかに後世に残したけど、残せたのは一部の人間にだけ。だからこそ理不尽な上下社会ができてしまった。
そんなのはわたしたちの歴史でもあることです。科学技術が一般に普及せず、特権階級のみの道具であったら、いまもそうなっていたパラレルワールドはあり得るかもですから。
そして、ここまではあくまで世界観の話であって。
世界観は物語の土台です。
盤石な土台の上に作られる物語は、理不尽な魔法偏重の世界に立ち向かう少年の話。血統魔法に恵まれず、一人の魔女によって救われて、そこであらゆる魔法を使うことができるように修行する。
これは、言ってしまえば、どれだけ科学技術が発展しようと、多くの人々がそれを受動的に使うような世界になろうと。少数の伝統を引き続き、1からモノを生み出すことの意義を知る人がいるようなものです。
そして、そんな魔法を得た少年が、歪んだ社会に苦しむ幼なじみの少女を救い。暴虐の王に立ち向かう。と、王道な英雄譚を見せてくれるわけですよ。
これが面白くないわけがない!
と、そういうわけで、血統魔法というものを中心にしてこの作品だけのファンタジーを描いていた。
それがこの作品最大の魅力だって、わたしは思います。
主人公やヒロインのような真っ直ぐさも、悪役となる王様や貴族たちの妄信も、どちらも決して間違ってはいない。血統魔法というものによって作られたたしかな歴史による結果です。
そして、そんなこの世界の歴史が、主人公という新しい英雄によって変わっていく。
なんて素敵なファンタジーか。
物語だったりキャラ設定だったり、展開だったり、ありきたりとか、よくある感じ、と言われるとそうかもしれないですけど。
ただ、この作品なりのファンタジーを作っている。
それだけでとても良い。
フィクションとは、物語とはかくあらねば。
と、思います。
さて、なんか感想が無駄に長くなりましたね。
幼なじみヒロイン可愛い! 可愛いかよ! あー、可愛い! とか何とか言うのがメインの感想になるはずだったんですけど?
総評
ストーリー・・・★★★ (6/10)
設定世界観・・・★★★★ (8/10)
キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10)
イラスト・・・★★★☆ (7/10)
次巻以降への期待・・・★★★☆ (7/10)
総合評価・・・★★★☆(7/10) この作品だけの1から築き上げたファンタジーに圧倒されました!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。