ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part52】じょっぱれアオモリの星

 今回の感想は2023年1月のスニーカー文庫新作「じょっぱれアオモリの星」です。

じょっぱれアオモリの星 おらこんな都会いやだ (角川スニーカー文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ

 ギルド追放されたアオモリ魔術師ツート無詠唱魔術《ツガル弁》で最強ば狙う

「悪いんだけど、今日づけでギルドを辞めて欲しいの」魔術師、オーリン・ジョナゴールドは長年所属していたギルドからクビを言い渡される。「な、なすてすか!? わ、わだっきゃこのギルドばえどふとづだと思て今まで尽ぐすてきたのに!」オーリンの言葉に頭を抱えるギルド長。彼の出身、東と北の最果ての地アオモリの強烈な訛りが原因で誰ともまともに会話ができなかった。しかし【通訳】スキルを持つ美少女レジーナと出会うことで、彼は無詠唱魔法を使いこなすツート魔術師だということが判明する。彼女を相棒にし東北の地を縦横無尽に駆け巡る! 異世界アオモリファンタジー爆誕!!

 

感想

 いや、これは面白い!笑


 津軽弁の訛りがひどすぎて追放される主人公の物語という、一発ネタのようなものを軸にして作品全体に東北地方ネタをぶち込みまくった結果、字面だけでもう面白いことになっている作品でしたね。こういうのわたし大好きですわ

 

 まずさ、口絵を開くわけですよ。すると、主人公の名前からして。オーリン・ジョナゴールドっていう、林檎の品種なんだよね💦 この先制攻撃でまずツボって。(そして、その口絵オーリンの持っている林檎は普通に赤いですし、たぶんジョナゴールドなんでしょうね)

 そんな口絵を乗り越えて本編に入ると、冒頭から追放シーンなわけですが。

 こういう追放モノってしばしば追放理由が訳わからんと言われるものがあるのですが、この作品に関しては方言がひどいっていうのはもう一目で分かるもんだから、読者目線でも「あー……うん、なんかこれは仕方ないな(苦笑)」になるんですよね。実力はあっても会話ができないと連携ができないでしょ、と至極真っ当なことを言われていますし。その後の本編で【通訳】のスキルを持つヒロイン・レジーナとの旅の中でしっかりコミュニケーションができたとしても明らかに一般常識や価値観がズレていることも分かりますし、ギルドの追放判断は間違ってなかったなと思いますよ。

 とにもかくにも、周囲が会話できないくらいにはひどい方言訛りがある主人公。文字で読んでいる読者にもそれがよく分かるレベルで、もうそのくらい全力で方言をやっていると、それはもうこの作品の個性として強いから、冒頭から読者を惹きつける効果がバッチリですよね。

 

 そこからは本当は実力があるのに、方言がひどすぎてコミュニケーションが取れない問題がある主人公オーリンが、動物などと会話できるスキル【通訳】を持つ少女レジーナとタッグを組んで色々活躍する、というまぁ王道な流れになりまして。

 まず言及することとして、追放モノの作品ではありますけど、特別ざまぁ要素はありません。先ほども述べたように追放が不当なものではないですからね。
 それから旅先の土地の名前がベニーランドだったりズンダーだったりで、明らかな東北地方ネタ満載でもう一目見ただけで笑うのよ。更には主人公の口から語られるアオモリは農産や畜産農家が普通に禁呪魔法や瞬間移動魔法を使う魔境だったりで、気になりすぎて笑いが尽きない。

 一方で地方ネタをこするのは、キャラクター性にもよく活かされていて。タイトルが示す「じょっぱり」は「意地っ張り」や「頑固者」という意味の言葉で、主人公の性格をこういう県民性みたいなもので表しているわけです。主人公は自分の譲れないと思う部分では絶対に譲らない性格で、これがただただ面倒くさいやつになってしまうコメディにもなるのですが、同時に強い信念を持った男としてのカッコよさも出せるんですよ。ここの塩梅も上手いなぁと思いました。

 

 あとは、これだけで面白いのは間違いないんだけど。

 わたしがこの作品でいちばん重要なポイントだと思うのは、これ全編を通してヒロイン視点で話が進むことなんですよね。

 つまり「傍から見たら方言ひどい人ってこう見えてる」っていうのがめちゃくちゃ良く分かって読者が語り部の視点に入り込みやすいの。
 動物とかの言葉が分かる【通訳】というスキルが津軽弁にも適応されるというのが、そこはかとなくブラックユーモアを感じるしね。

 

 最初にも言ったけど、一発ネタのようなものをしっかり個性に仕上げている作品でした! 物語の設定としては言わずもがな、キャラクター性にもしっかり活かされており、次巻以降もあるのならすごく気になる。

 青森ネタで始まった本作だから、このまま東北一本でいくのか、それとも段々他の地方のネタもはいるのか。個人的には前者の一本で突き詰めた方がこの作品は面白そうなのだけど、それでどこまで話が作れるのかは気にかかるところですね。

 

総評

 ストーリー・・・★★☆ (5/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★ (6/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★☆(7/10) 地域ネタを作品の個性にちゃんと昇華してて面白いw

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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