ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【シリーズまとめ感想part37】シュガーアップル・フェアリーテイル

 今回感想を書いていく作品は「シュガーアップル・フェアリーテイル」です。

 角川ビーンズ文庫より2010年から2015年まで刊行されていた全15+2巻のシリーズ。作者は三川みり。イラストはあき。

 完結済みのシリーズ、ではありますが。2023年のアニメ化に際して、また新しく新章が始まりました。また、1~6巻の内容をまとめた単行本版が2023年に発売予定になっています。わたしはこのアニメ化の機会に乗じて、文庫版で17冊読んでみた感じですね。

シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黒の妖精 (角川ビーンズ文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

 まずはいつものようにあらすじを。

 

 ””人が妖精を使役する世界。

 また砂糖菓子は妖精の寿命を延ばす神聖な食べ物とされていて、特に砂糖林檎と呼ばれる特別な林檎から精製される銀砂糖を用いた砂糖菓子は幸福を招く、と言われている世界。

 銀砂糖師の母親と二人で砂糖菓子を売る旅をしていた少女アンは、しかしその母親を失ってしまう。一人寄る辺も行く宛もないアンは、母親と同じ銀砂糖師になろうと決意する。そのために王都の品評会に向かうのだが、その道中の護衛のために一人の戦士妖精シャル・フェン・シャルを買うことになって……。””

 

 といった感じ。

 ジャンルとしてはファンタジー、恋愛になりますね。

 

 そんな本作の感想としては、一言で言えば「幸福をもたらす砂糖菓子、というテーマがものすごく良い!」でしょうか。

 

 詳しく話していきます。

 

 

1:妖精と人のもどかしい恋愛模様

 まずは、本作のメインとなる恋愛についてお話しましょう。

 

 言うまでもなく人間のアンと妖精のシャルのお話です。

 

 二人の出会いはあらすじに述べたように、アンがシャルを買う、というものです。

 この作品世界では妖精は人間に支配される存在です。売買されている妖精たちは、自分の命と同義である、羽の片方を切り落とされて人間に握られることで逆らうことができなくなっていると。

 そんな状況で妖精が人間へ抱く感情は憎しみと怒り以外にありえない。

 実際シャルも最初は人間を信じることができず、アンもそんな人間なんだろうと御見込み。アンから自分の羽を取り戻し、逃げ出すことだけを考えていました。

 

 しかし、アンの妖精とは対等な友達になりたいという思い、あまりに純粋で無防備すぎるその様子を見る中で少しづつその気持ちに変化が。

 最初こそ気の迷いのようなものだったかもしれないけど、共に時間を重ねるうちに自分の中でアンが何よりも特別なことに気づいて……。

 

 と、まぁ、このね。

 王道とも言える恋愛ストーリーは言うまでもなく最高じゃないですか!

 

 最初はただ憎しみで口の悪かったシャルが、好きな相手への意地悪で口が悪くなっていったり。あるいは人間は全て敵で、自分の命を守るためなら殺してもいいと、人間の気持ちなど一切鑑みることもなかったシャルが、アンと一緒にいるためにはどうすべきか、アンの幸せのためには何をすべきかと悩み葛藤するようになる。

 

 もちろんそれはアンの方も同じで。

 シャルを好きな自分の気持ちと、妖精と人間という立場を考えてシャルの幸せのためにはどうすればいいのかという気持ちに揺さぶられる。

 

 こんなの見てるだけでもどかしく甘酸っぱくて、いいじゃないですか。

 そして紆余曲折はあっても最後にはラブラブイチャイチャと……、あーもう異種族の恋はやっぱり素晴らしいですねー!!

 

 マジでシャルのデレっぷりは最高でしたよ!

 

 また、アンとシャルだけでなく。

 妖精と人の強い絆を感じるお話は多数あるので、そこも要注目ポイントですね。

 

2:砂糖菓子が招く幸福

 もう一つの本作の軸となる砂糖菓子に関する感想をお話していきましょう。

 わたしとしてはこっちがメイン。

 

 砂糖菓子、特に砂糖林檎から得られる銀砂糖で作ったものは幸せをもたらす縁起物として国中に広く知られているものです。

 そして、年に一度行われる品評会で選ばれる名誉ある称号が銀砂糖師。

 アンはそんな銀砂糖師を目指して物語が始まります。

 

 そして、このアンの作る砂糖菓子、ひいてはそこにアンが込める「誰かの幸せを願う気持ち」が本作最大の魅力だと思っているんですよ。

 

 というのも、この作品は他人の悪意や、どうしようもない世間の一般常識、理不尽としか思えないような出来事が多すぎるんですよ。いつだってアンの前に立ちはだかるのはどうしようもないものばかり。見てて胸くそに思う場面も多々ありますし、クソやろうと思うようなキャラも出てくる、読んでて「どうしてこんなにも上手くいかないんだ」って言いたくなる場面もいっぱい。

 でも、だからこそ、です。

 過酷な状況だから? 周囲が邪魔をするから? みんながこう言うから? そんなものは関係ないんです。

 どんな状況であっても決して曲げない意志、アンが砂糖菓子職人として願うこと、これは本作のテーマとして非常に強い。

 

 もちろんアンだけではなく。

 アンが出会う他の砂糖菓子職人たち。それぞれが何を思い、何のために砂糖菓子を作るのか。その意志と熱量は必ずや読者の胸に響くでしょう。

 個人的に、特にアンの砂糖菓子職人としてのプライドが見えたと思うのは10巻の「水の王様」と続く11巻「金の繭」ですね。ここは本当にめちゃめちゃ好き。


 そして、そんなアンたちが曲げない意志を持ち幸せを願うからこそ、この作品が最後に辿り着くハッピーエンドにはこの作品だけの特別な意味があるようにも思うのです。

 最終巻を読んだときの「ああ、良かった……本当に良かった」という気持ちはきっとこの先も忘れることがないでしょうね。

 

3:サブキャラ紹介

 先ほど、他の職人たちもアンと同じようにそれぞれの想いがある、みたいなことを言いましたね。

 

 なので、どんなサブキャラがいるのか簡単に紹介しよう……、というか純粋に好きなキャラを語りたい!



 まずはミスリル・リッド・ポッド

 彼はアンが出会った水の妖精です。手のひらサイズで、妖精と言われたら多くの人がイメージするような見た目。アンに助けられたことから、彼女に恩返しがしたいと旅に同行することになりまして。

 そんなミスリルは、一言で言えばバカですね。

 空気が読めないし、やかましいし、お節介だし……、でもめっちゃいいヤツなんですよ。裏表がないミスリルの言葉だからこそ、色々と悩むアンやシャルに届くものがあって。

 ミスリルがいてくれるだけで、どれだけアンの助けになっていたか。恩返しからアンについていくことになったミスリルだけど、一読者としてわたしはミスリルの恩返しは十分過ぎる程じゃないかって思いますよ。



 続いて、銀砂糖師のヒューキャット

 この二人はセットで語りたい。

 最初の頃はどこか因縁を持っている間柄、くらいにしか見えてなかったんですけど。

 二人の過去が明かされるとそれが一変。お互いがお互いに砂糖菓子職人として守りたいものがあって、ただその反りが合わないから反発し合うけど、内心では砂糖菓子職人としての実力は認め合っている関係性と分かってくるのです。

 つまり、ただの喧嘩ップルでしたね!

 いや、男同士だからカップルはおかしいけど(笑)

 喧嘩するほど仲のいい親友、ですね。なのでそんな二人のじゃれ合い(喧嘩)はなんか見てるだけでニマニマしちゃうのよ。

 

 そして、ベンジャミン

 キャットに使役されている妖精……、のはずですが、料理以外は基本的にしない怠け者です。そんなので怒られたりしないのか、と言われるとここにはキャットとベンジャミンだけの少し変わった関係性があるみたいで。

 そんなキャットとベンジャミンのお話は短編集にて詳しく語られていて、それを読んでから本編のベンジャミンを見ると印象もガラリと変わるので、個人的には必読の短編集だと思っています。

 

 忘れてはいけない人がいますね。

 キース君。

 おそらくこの作中でいちばんの”良い人”です。イケメンだし性格もいいし、悪意しかないクソ野郎だったり我の強い職人たちの中で見ると聖人に見えてくる。

 そんなキースはシャルの恋敵のような立場になるのですが……、この作品がどう見たって最初から最後までアンとシャルの物語であることと、キースが聖人レベルの良い人、という2つの要素が揃えばどんな展開になるかなんて言うまでもないこと。

 わたしはそう思いながら読んでいましたよ。

 だから、予想できていたものですが、それでもキースは本当にめちゃめちゃ良い人でした。この作品になくてはならなかった存在。

 

 あとはラファルエリル

 シャルと同じタイプの妖精で、本作の終盤のクライマックスにおける最重要キャラです。

 ラファルはアンと出会わなかったシャルのような感じでしょうか。とにかく妖精を支配する人間に対する憎悪だけを持ってしまった状態。ラスボスですね。

 エリルはシャルほど人間を愛しているわけでもなければ、ラファルほど人間を憎んでいるわけでもない。中立、と言えばいいのでしょうか。

 そんな三人それぞれの立場から見る人間と妖精の歩む未来は本作の終盤でもっとも重要なポイントでした。



 主な主要サブキャラはこんなところでしょうか?

 しかし、第2章の4〜6巻で主にアンと関わるエリオットやオーランド、ブリジットなどのペイジ工房のキャラたちも色々語りたいし。妖精のルルやノアなんかの話もしたい。でも、それを言い出すと長くなっちゃうから……ぐぬぬ

 

 なので、これでとりあえずおしまい。

 

4:シリーズ紹介

 本作は本編が全15巻、短編集が2冊刊行されています。

 タイトルにはナンバリングがされてなくて、サブタイトルがついているパターン。

 ぱっと見順番が分からないやつで、わたしはちょっと苦手なやつ(いや、背表紙の番号見ろよ)

 

 なので、一応簡単にシリーズ紹介です。

 本作は全部で4つの章に分かれていて。

 

 まず第1章。銀砂糖師編。

 1~3巻の「黒の妖精」「青の公爵」「白の貴公子」ですね。アンの最初の旅立ちの物語です。

 

 第2章。ペイジ工房編。

 4~6巻の「緑の工房」「紫の約束」「赤の王国」ですね。ペイジ工房で職人頭として働くことになったアンのお話です。

 

 第3章は銀砂糖妖精編。

 7~9巻の「黄の花冠」「灰の狼」「虹の継承者」ですね。これは妖精と人間の関係性に大きく踏み込む部分でした。

 

 最後の第4章。

 10~15巻の「水の王様」「金の繭」「紺の宰相」「銀の守護者」「緋の争乱」「黒の妖精王」ですね。最後のクライマックスです。

 

 そして短編集として「王国の銀砂糖師たち」「銀砂糖師たちの未来図」の2つがあります。王国の~は金の繭と紺の宰相の間に刊行されており、この刊行順のタイミングで読むのがベストだと思います。銀砂糖師たちの~はアフターストーリーなので最終巻を読んだ後で読むものですね。

 

おわりに

 今回の感想をまとめると

 

・人と妖精の関係性、いいよね!!

・理不尽が多すぎる作品だからこそ、その中で誰かの幸せを願う砂糖菓子というテーマが強く見える

 

 という感じです。

 

 アニメ化の機会で是非読んでみるのをオススメしたい作品です。

 とりあえず、今回の感想はこんなところで。

 

 1巻のAmazonリンクとBOOKWALKERリンクを貼っておくので気になった方はチェックしてみてください。

 

Amazonリンク

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前回のラノベ感想「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました」

【シリーズまとめ感想part36】真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました - ぎんちゅうのラノベ記録

 

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