ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part59】不可逆怪異をあなたと 床辻奇譚

 今回の感想は2023年1月の電撃文庫新作「不可逆怪異をあなたと 床辻奇譚」です。

不可逆怪異をあなたと 床辻奇譚 (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 『床辻市に住むと、早死にする』
 そんな噂が古くから囁かれているこの地方都市には、数多の禁忌と怪異が蠢いている――。

 

 大量の血だけを残して全校生徒が消失した『血汐事件』。その日遅刻して偶然にも難を逃れた青己蒼汰は、血の海となった教室で、彼にとっての唯一の肉親である妹・花乃の生首を発見する。だが、花乃は首だけの状態でなお生きていた。

 花乃の身体はどこに隠されたのか。

 この凄惨な事件は何故起きたのか。

 借り受けた呪刀を携えて床辻市内のオカルトを追っていた蒼汰の前に、謎の少女・一妃が現れた。彼女は街の怪異から人々を匿う『迷い家』の主人だという。

 そして少女は告げる。私が君の運命を変えてあげる、と。

 ――踏み出したら戻れない、怪異狩りの闘争がここに始まる。

 

感想

 うーん。評価が難しい。

 終盤の伏線回収や衝撃の事実、みたいな部分は確かに強烈でその点だけを見ればかなり良い。のですけど、その終盤を存分に味わうだけの没入が序盤中盤で得られなかった作品。……みたいな感じになります、率直な感想は。

 

 少し、整理してお話しますね。

 

 まず、本作の良いポイントを挙げます。箇条書きで。

・いきなり生首だけで生きている妹という設定で度肝を抜いてくる。
・禁忌を犯すと怪異に襲われるという独自の設定が面白い。
・様々な怪異と戦うアクションが素直に面白い
・終始危険と隣り合わせの空気感でハラハラしながら読み進めることができる。
・終盤の伏線回収、衝撃の事実にあっと言わされる。
・この最後まで読むとヒロインの一妃がめっちゃ好きになる(異種族、人外、狂人みたいなキャラが好きでたまらない人間の個人の見解)

 これをまとめると、設定ヨシ、ストーリーラインヨシ、キャラヨシ、ってことになるはずなのですが。

 

 それがそうも行かない……。

 

 わたしが引っかかっているポイントは1つ。

 1冊の物語として読んだときに感情がついていけなかった、ということ。

 

 どういうことか。

 改めて本作の概要を説明すると。

 とある集団神隠し事件に巻き込まれた主人公と、身体のみを失って生首だけで生きている妹、花乃。更に、そんな二人の前に現れるどう見たって訳ありすぎる主人公への好感度が最初からMAXな少女・一妃。

 主にこの三人が中心となり、街の禁忌を打ち壊していく物語になるわけですね。

 

 そして、終盤にはこの生首だけの妹や訳アリなヒロインの気になる部分が一気に解消されるわけなのです……が。

 個人的には、そこに至るまでにこの三人の謎がどうにも曖昧なままで進みすぎており、それ以外の部分でキャラの魅力の掘り下げが十分で無かったために、最後に一気に来られても「あ、そうだったんだ」としか受け止められないものに感じてしまったんですよね。もう少し序盤、中盤からキャラに魅力を感じる展開がほしかったです。

 

 また、メインとなるキャラだけでなく。

 サブキャラに関しても。正直キャラ数が多くて、どうにもそれぞれのキャラの印象が薄くなってしまうように感じました。

 

 個人的にはキャラがあってこその、その上に来る物語だと思うので。

 特別キャラに魅力を感じられない状態でそのキャラのあっと言わされる事実を見ても感情はついていけませんでした。

 なので、正直。これは作品そのものの悪い点というわけでもなく。わたしに合わなかったというだけかもしれません。なので、感想が難しいのです。なんとも言えない。

 まぁ、とはいえ、それでも最後で一妃だけは好きになれましたけどね。やはり人外ヒロインは強い、間違いないです。

 

 ※あとはすっごいどうでもいいことだけど。禁忌っていうのが本当に日常生活にあるタブーのようなもので、この街の人間で普段どうやって生きてるんだ? ってめっちゃ思ったんですよね。何をしたら禁忌に触れるか分からないような状況でまともに生きていられる気がしないんですけど……。子どもなんか特にそうでしょうし。この街の子どもの五年生存率とか、十年生存率、現実の医療環境とかが整ってない地域よりも低そう……。

 

総評

 ストーリー・・・★★★ (6/10)

 設定世界観・・・★★★ (6/10)

 キャラの魅力・・・★★ (4/10)  ※最後のヒロインだけ見れば(8/10)

 イラスト・・・★★★ (6/10)

 次巻以降への期待・・・★★☆ (5/10)

 

 総合評価・・・★★☆(5/10) 設定世界観は申し分ないけれど、もう少しキャラに没入させてほしかったですね。

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp