ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想Part62】ステラ・ステップ

 今回の感想は2023年1月のMF文庫J新作「ステラ・ステップ」です。

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あらすじ(BWより引用

 突如飛来した隕石により地上は荒廃。人々は新しい国家を建て、闘争や略奪を繰り返していた。

 国家間の戦争の手段として「暴力」と置き換えられたのが、少女たち「アイドル」だ。

 砂漠で覆われた「砂の国」に、国民からは崇められ、少女たちからは恐れられているアイドルがいる。

 技術を高めることだけに関心を持ち、感情はどこかに置いてきてしまったかのような少女・レイン。

 最強を誇る彼女の無敗記録はずっと続くはずだった。

 だが、感情豊かに歌う少女・ハナによってその記録は止められる。

 このハナとの出会いは、レインの胸にこれまで知らなかった感情を芽生えさせ――。

 

感想

 【前書き】

 ちょっと、今回はかなり感想を深く書いてしまっているから、未読の方に優しくない感想になってしまっているかもしれませんね。

 以下、大きなネタバレはしていませんが、その一歩手前(終盤にどんでん返しがあるぞ)みたいな発言はしているので、未読の方は自衛お願いします

 また未読の方には、最後の総評の部分だけ見てもらえば良いように、最後の一言をいつもより多めにしておきます。

 

 

 では改めて感想。

 本作は感情をエネルギーに変える共心石と呼ばれる未知の資源、それを活用するためにアイドルを使い、ライブバトルで領土を奪い合う荒廃した世界が舞台。

 そんな世界で感情のない至高のトップアイドルとして君臨するレインと、愛と笑顔を届けるアイドルを夢見る少女ハナが出会うことから、物語は動き始めます。

 

 そんな感じのあらすじを聞くと、

「なるほど。二人の少女の関係性にフォーカスして、アイドルモノらしい真っ直ぐな熱さ、そこに終末世界的な設定を加えてアイドルのもたらすエネルギーに意味をもたせる感じのストーリーか。」

 そんなふうに思いながらわたしは読み始めました。

 

 実際、序盤はその予想から外れることはありませんでした。

 ところどころで荒廃した世界観に基づく設定や、中盤や終盤に繋がりそうな伏線だろうなと思わせるアクセントはありますが、基本的には真っ直ぐなアイドルモノの雰囲気。

 それまでトップアイドルで他の全てを些事だと興味を持っていなかったレインが、眩しいくらいの笑顔を振りまくハナに興味を持って、二人の関係が始まって、少しづつレインの心が色づいていく……みたいな少女たちの友情、微百合? とでも言うのかな。

 そんな感じを楽しみながらスラスラと読み勧めていました。

 

 

 しかし、中盤で雲行きが怪しくなる。

 機械のように正確に踊り続け、アイドルであること以外に興味を持たないレインの背景と、ハナが皆を笑顔にするアイドルになりたいと願う理由。

 

 これを一気に掘り下げるスパイスとなるのが”星眩み”という病気。

 

 レインのプロデューサーやハナの母親もまた、ここには大きく関わってきて……、二人から明かされる内容はどれもこれも衝撃的なものばかり。

 レインにとっては絶望的、とすら言えるもの。

 ハナと関わる中で自分以外の人にも目を向けられるようになってきたからこそ、これがすごく重い……。

 

 けれど、そんな真実を知ったからこそハナの笑顔がレインの心の支えとなり二人の関係が強固なものへと変化していく。

 この大きな変化を経て、あとは終盤のクライマックスとなるライブバトルに突っ走る。

 

 アイドルに対して夢も希望もない世界に真っ向から立ち向かうレインとハナの戦い。

 序盤の誰もアイドルに見向きもせず、アイドルすらも国の道具として勝つことしか考えていないような凍りついた状態とは打って変わって、二人の歌を聞いた人たちにぽつりぽつりと温かさが広がるような熱に、強く魅せられるものでした。

 また、最初からレインのライバルとして登場しているフレアも、ライバルキャラとして非常に魅力的であり、次回以降のフレアも交えた関係性が気になるところです。

 

 

 

 と、そんな感じで、面白かったですね。お疲れ様でした。

 

 

 

 ……と、完全に気を抜いたときだよ。

 

 あまりの衝撃に言葉を失った。

 

 なんかもう、いきなり横から全力で殴られた感覚。

 

 ここまで設定や世界観詰まってて、アイドルモノの面白さがあって、星眩みにまつわるレインやハナの変化も見せてきて、正直十分だと思ってたんですよ。

 だからもう最後のライブ終わって、次巻以降に繋げられるいい感じのエピローグで終わりなのかな〜くらいで読んでたら……、爆弾降ってきたんよ……。

 

 いや、これは流石に不可避でしょ。

 

 実を言えば、わたし中盤で物足りなさを感じていたんですよね。絶望を与えるならもっと落差を与えればいいじゃないかと。やや駆け足気味なんじゃないかと。

 

 でもそうじゃなかった。

 中盤はジャブだったんだね。

 本作の本命の一撃はここにあったよ。

 わたしは中盤のあそこが、本作のいちばんの肝だと思っていたから読み違えていて、不意打ち食らったわけですが……、それにしたって強烈でした。人外異種族大好き人間大歓喜の爆弾だったから、より一層わたしへのダメージは大きかったし……。

 

 こうして見ると、レインの感情ぐちゃぐちゃにされすぎでしょ……。

 それこそ心が折れても仕方ないレベルだし。でも、ハナがいるからまだ壊れてないだけで。心の支えが脆すぎる気がするんですよね。

 そうなると、次回以降に不安しかないし、期待しかない。

 

 

 色々言いましたが。

 とにかく読後感のめちゃくちゃ”良い”作品でしたね!

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★ (6/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) アイドルとしての少女たちが生み出す熱量に魅せられ、そこに濃厚な世界観と設定をぶち込むことでコクを出し、それを見事に操る展開で読者の情緒を破壊する作品!

 

※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp