ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part65】クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所

 今回の感想は2023年2月の電撃文庫新作「クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所」です。

クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所 ~看板ネコ娘はカワイイだけじゃ務まらない~ (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 訪れるのはワケあり相談者ばかり?異種族同士の婚活ってタイヘンなんです!

『自由とは、エルフとドワーフが愛し合っても咎められないことである』

 種族間戦争終結後──十七の種族はすべてのヒトが平等に暮らすための実験都市・ミイスを設立。それから数年、この街で『相談者満足度100%』を謳う結婚相談所には、今日もたくさんの異種族が訪れる。見習いスタッフ・猫人族のアーニャは謎多き美人所長・ドナのもと、クズな指導係・ショウとともに、相談者たちの縁を結ぶために日夜奔走していた。

 アーニャが憧れたのは、この自由な街で、異種族同士の幸せな出会いをサポートできる素敵な仕事……しかし現実は、ワケあり相談者の対応に追われる日々だった! 理想がハイなエルフ女子(彼氏いない歴三世紀)、厄介能力でSクラスパーティを崩壊させた優男──って、いくらなんでもクセが強すぎるんですけど!? ドタバタ婚活ファンタジー、はじまります!!!!

 

感想

 

これはもう、大満足ですよ!

 異・種・族・恋・愛!!

 この五文字だけで優勝できる今季電撃文庫でいちばん期待していた本作は、そんな期待を一歩も二歩も超えて素晴らしいものを見せてくれました!

 

 まず、本作の概要は基本的あらすじに述べられている通りです。改めて情報を補足しつつ説明しましょう。

 

 舞台は17の種族が生きる世界。それぞれの種族が争いあった戦争が終息してから生まれた実験都市ミイス。

 田舎の里からやってきた猫人族の少女アーニャが様々な種族のために結婚相談所ではたらく中で、クセの強すぎるキャラたちに手を焼かされて――というお話。

 

 基本的にはコメディ調の作品でしたね。

 しかし、それ以上に「異種族」や「結婚」というテーマが重要な作品だと個人的には感じました。

 

 

 まず、本作のコメディ要素について。

 冒頭では実験都市ミイスにやってきたアーニャが異種族の結婚というものに惹かれて、そのお手伝いができる結婚相談所に押しかけるシーンが描かれます。

 そこでアーニャの面接が行われるわけですが。

 初体験はいつ? とイタズラで問われた質問に、アーニャは四歳と答えるんですよね(笑)

 字面だけ見ると問題しかない状況なのですが、アーニャの中では初体験=猫人族として一人前と認められる狩りができるようになった日、という認識なんですよ。

 結果として生まれたのがこのやり取り。

 

 つまるところ、本作のコメディ要素の一助には種族間の常識の違い、そしてそこに根ざすそれぞれのキャラの持つ感情があるわけです。

 結婚相談所に訪れるクセの強い人たちが、クセが強いと問題児扱いされる理由にもこういった側面があります。

 ……まぁ、もちろん純粋にダメ人間すぎるアーニャの指導係ショウとか、単純に性癖がちょっとアレな人とかもいるんですけどね💦 貴腐人の人にはめっちゃ笑いました。

 

 ともあれ「異種族」という要素がコメディを助長させる部分がある、ということがまず一つ上手いなぁと思わされた部分、という話です。



 続いて、本作のストーリーライン。

 主なストーリーは結婚相談所で働くことになったアーニャが様々な相談者と関わり、彼ら彼女らのサポートをしていく短編連作のような形式で進んでいきます。

 なので物語の主軸には「結婚」や「恋愛」があります。

 

 そして先ほど述べたような種族固有の価値観や考え方というのがここにも大きく味を出していくことになるんですよね。

 見た目や体格の違い。寿命の差。生まれる子どもはどっちの種族の特性が強く反映されるか分からないこと。などなど、違うからこそ不安になる部分、恐れる部分があるのだということを本作はしっかり描写していく。

 しかし、それを理解した上で、それでも添い遂げたいと思える気持ちはどういうものなのか。それも同時に描いているから、本当にもう異種族恋愛として素晴らしい。

 

 そして何よりも、この様々な事例を通して。

 まだまだ子どもで恋愛のレの字も知らないようなアーニャが、少しづつ人と人が思い合うことを学んで成長していくんですよ。さらには彼女自身、猫人族として自分に持っていたコンプレックスと向き合っていく終盤は最高にグッとくる。

 1つ1つの短編のような物語が、1冊を通した大きなお話にしっかり結びついているのすごくいいよね。



 さらに述べるなら。

 あらすじでサラッと述べられている「戦争終結後」という要素。

 これも上手い設定だと思わされていて。

 かつての争いあっていた時代を知っている人と知らない人がいる。

 そして知っているからこそ、過去のそれぞれの種族はそれぞれの種族で在るべきという価値観を変えられない者もいれば。知っていてそれでもなお変わり始める新しい時代に向き合う人もいるのだという。

 異種族だからこそ生まれる価値観の違い、とはまた別の切り口から生まれる価値観の違いも見せているんですよね。

 これがもう単純にフィクションとしての「異種族恋愛」にとどまらない現実的な「違う価値観、違う考え方を持つ人同士が交流すること」にも強くフォーカスしているように感じるのも作品の深みを増していたように思えます。

 またこの過去と今とを繋ぐ物語の主役はアーニャが務める結婚相談所の所長ドナと指導係ショウ。表向きの主人公がアーニャなら、裏の主人公がショウとドナ、みたいな感じでしょうか? この二重構造の物語が面白いですし、この二人の持つ戦争時代の過去や物語もめちゃくちゃ気になるので、2巻以降で描いてほしいな〜って!

 

 

 面白おかしいファンタジーコメディとしての楽しさはもちろんのこと。人種のるつぼ、そんな街だからこその問題と物語にどこまでも魅力される作品。

 これは完璧か? と思わず言いたくもなる構成をしていました。

 

 結論、めちゃくちゃ大満足!

 

総評

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)

 設定世界観・・・★★★★★ (10/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★☆ (9/10)

 

 総合評価・・・★★★★☆(9/10) 想像以上に世界観と価値観の奥が深い、最高の異種族婚活ファンタジー!!!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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