ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part68】僕らは『読み』を間違える

 今回の感想は2022年12月の角川スニーカー文庫新作「僕らは『読み』を間違える」です。※2巻まで刊行中(2023年2月現在)、今回は2巻までまとめて読んだ感想になります。

僕らは『読み』を間違える (角川スニーカー文庫)僕らは『読み』を間違える2 (角川スニーカー文庫)

※画像はAmazonリンク(1巻および2巻)

 

 

あらすじ(BWより引用

 学生という生き物は、日々「わからないこと」の答えを探している。

 明日のテストの解答、クラス内の評判、好きなあの子が好きな人。

 かく言う僕・竹久優真も、とある問いに直面していた。

 消しゴムに書かれていた『あなたのことが好きです』について。

 それは憧れの文学少女・若宮雅との両想いを確信した証拠であり、しかしその恋は玉砕に終わった。

 つまり他の誰かが?

 高校に入学した春、その“勘違い”は動き出す。

 「ちょうどいいところにいた。ちょっと困っていたとこなんだよ」

 太陽少女・宗像瀬奈が拾い集めてくる学園の小さな謎たち――

 それらは、いくつもの恋路が絡みあう事件《ミステリー》だったんだ。

 

感想前書き

 さて、いつものように感想へ行く前に。

 

 今回は長い前書きを。

 少し前にブログに書きました「元ネタをお勉強しよう」というお話があります。

【雑談Part8】元ネタのお勉強 - ぎんちゅうのラノベ記録

 ざっくり要約すれば、作品を読むにあたって必要な前提知識の勉強って大事だよねというお話でして。

 

 本作「僕らは『読み』を間違える」は作中で様々な文学作品に対するお話が展開されるのが特徴の一つに挙げられます。それは本作の口絵や、目次の時点で作品のタイトルが挙げられていることからも分かりますね。

※1巻および2巻の口絵

 

 わたしは普段ラノベ以外の文章を全く読みません。

 なのでこういう文学作品へのアレコレを語る作品は基本的に何を言っているのか分からなくて楽しめないタイプなのですが……、この作品は口絵や目次の時点である程度作中で言及する作品が分かっているではないですか。

 であれば、実際にそれらの作品を読んでみれば楽しめるのではないかと!

 

 そう思ったわけですね。

 

 というわけで読んでみました。

 

 読みえる本編を読む前に読んだものなので、その時系列にそってまずはそれぞれの作品について簡単な感想を書きます。



走れメロス

 こちらはウェブの青空文庫さんにて無料で読めました。

 学生時代に国語授業で一度読んだことあったけど、改めて読んでみるとやはりメロスとセリヌンティウスが裸で抱き合うシーンはいいですね。てか、お互いを一度も疑ったことのない友人関係って強すぎませんか? (読みえる本編では、最後の裸のシーンは教科書にないみたいなこと言ってたけど、わたしの教科書にはあった気がするんだよね……、気のせいかな?)

太宰治 走れメロス

 

蜘蛛の糸

 こちらも青空文庫さんで読めました。

 あ、なるほど。このお話聞いたことある、って思いながら読んでましたね。

 蜘蛛の糸を昇って地獄から這い上がろうとするけどできない男カンダタのお話。自分本位なのは良くない、みたいな分かりやすいテーマのお話であると同時に、個人的にはお釈迦様の超常性、神の気まぐれみたいなのも感じましたね。

芥川龍之介 蜘蛛の糸

 

・はつ恋

 青空文庫さんマジ有能ですね。

 これはとある青年ウラジミールの持つ初恋の記憶を辿るお話でしたね。同時にその中で彼が恋した少女ジナイーダの持つ恋の話でもあって。恋をすると何でもできる、それこそが自分の全てだと思ってしまう。作中では「自分を犠牲にできる」なんて言われてますが、まさにそんな初恋に浮かれて溺れる様がありありと描かれていたのが印象な作品でした。

 ただ一方でこの初恋の一喜一憂って一言で切ってしまえば情緒不安定というか、躁鬱激しすぎだろと言いたくなるものですよね。なのに恋してるからというそれだけで納得できちゃうのって、改めて考えると不思議。恋ってすごいなと思いました。

 それはそうと、わたしもジナイーダみたいな女の子に弄ばれたいな。

ツルゲーネフ 神西清訳 はつ恋

 

・D坂の殺人事件

 これまた青空文庫さんで読めます。

 この作品の感想としては、なんというか、人間って業が深いな……と思いました(笑)

 一見すると不可解な殺人事件を、物的証拠ではなく、そこに関わる人の関係性で見ると違う側面が見えてくるみたいなのが肝なのかな? でも”私”の推理も筋は通ってて見事だと思いましたよ。

江戸川乱歩 D坂の殺人事件

 

春琴抄

 青空文庫さん(略)

 いやぁ……、これはすごかったですね。

 盲目の三味線奏者である春琴女と、それに仕えた丁稚の佐助の物語なんですが。この二人の関係があまりに美しくて堪らない。

 主従であり、師弟であり、恋人のようなそうでないたった二人だけの何かを終始見せつけられた。わたしの言うところの尊さが詰め込まれている感じ。往年の春琴を襲った事件からの佐助の行動は狂気的にすら思える献身で言葉を失うレベル。幼少期の押入れのひとときともリンクして心と心で通じ合うってこういうことなのかなって、なんかもうただただ美しかった……。

谷崎潤一郎 春琴抄

 

グレート・ギャツビー

 これは新潮文庫さんのをブックオフで購入して読みました。

 そして感想としては、こういう小説はやっぱり苦手だなぁと思いました……。

 内容が単純に理解するの難しいですよね……、実際内容の概要は何となく分かったと思いますけど、細かい部分の表現とか意味合いは全然分かってないと思います。

 

ティファニーで朝食を

 こちらは新潮文庫さんのものを読みました。

 語り手の視点で描かれるホリーの生き様に魅せられる作品。旅行中、鳥かごや猫、ティファニーで朝食を〜に続くセリフなどから、自由に生きること、自分の居場所を探すことなどの意味や意義を考えさせられるのだけど……なかなか難しい。終盤のホリーを彼女自身から止めてあげるべきなのか否かという問いも、果たしてどちらが正解なのか分からないですね。

 色々ともう少し咀嚼できて読むとまた味わいが変わりそうですが、とりあえず一読ということで、感じる、に留めておきます。



 1巻口絵であらかじめ分かっていた作品の事前勉強はここまで7つ。

 本編を読むとそれ以外にも様々な作品に触れられていまして、その中で短編で読みやすいもの、なおかつ青空文庫さんですぐに読めるものは読んでみました。

 というわけでここからは1巻読了後に読んだ5作品の感想です。

 

・藪の中

 これは大体読みえる本編で語られていた通りの内容でしたね。本文はちょっと昔の言葉だから、もはや読みえる本編の要約を見ながら読むのがいいレベルでした。

 しかし、これ読んですごい気になったのだけど、この終わり方で読者は「???」ってならないのかな?

 真相は藪の中、という言葉その通りの内容ですしそういうものなんでしょうけど……。

芥川龍之介 藪の中

 

・黄いろのトマト

 読みえる本編で語られていた内容を蜂雀から語り部の”わたし”が聞いている、という形で描かれる作品でしたね。最初、蜂雀が喋るのにびっくりしたけど、童話だしなと思って納得する恥ずかしい一幕もあったり……。

 黄いろのトマト、文字通りのそれを子どもの純粋な心で見るとたしかに黄金の珍しいものに見えるのかもしれない。けど番人さんみたいな大人から現実を突きつけられて……、こうして子どもは夢を失うんだなぁと思いました。

宮沢賢治 黄いろのトマト

 

・ツェねずみ

 いや、なんでしょうね。

 すごくイラッとしました💦 たしかにこんなやついたら皆関わりたくないですよ。

 本作は「ツェ」という名前のねずみの話なのですが、彼は何かにつけて「みんなして僕をいじめて騙すんだ、ひどい、償え」とか言うんですよね。これがもう面倒くさすぎますって。

 これは読みえる本編でも言ってるように、いるよねこういう人、って感じがしました。そしてそういう人は嫌われるよ、というのが子どもにも分かりやすいように可愛い動物さん視点で書いていると一層皮肉が効くかもしれないですね。

宮沢賢治 ツェねずみ

 

・手袋を買いに

 お手々がちんちんこする。

 とか、読みえる本編で言ってたので気になって実際に読んでみようと思って読みました。

 これは、すごくほっこりしました。子ども狐が、初めて見る雪にはしゃいだり、手袋を買うために人里に行くお話でした。はじめてのおつかい、を見守るような気持ちになります。

新美南吉 手袋を買いに

 

山月記

 国語の授業で一度読んだことのある作品ですが改めて。……感想は大体走れメロスと同じでいいですか? 男の友情いいよね!

中島敦 山月記




 さてこれにて1巻感想番外編はおしまい。

 続いて1,5巻感想番外編に突入です。

 本作はカクヨムにて、1,5巻と称して約10万字(普通にラノベ1冊分くらいあるんですが……)が公開されています。

kakuyomu.jp

 

 そしてこれもまた6つの作品について紹介されていまして竹取物語」「リップヴァンウィンクルの2つは青空文庫さんで、「変身」ブックウォーカーさんで無料で読めたので1,5巻を読む前に読みました。

「タイムマシン」「夏への扉は今回は読みませんでした。

桜の園青空文庫さんで読めるのですが……、この作品戯曲なのでスマホで読むにはちょっと読みづらくて断念しちゃいました💦 すみません。

 

 とりあえず「竹取物語」と「桜の園」は青空文庫さんのリンクだけ貼っておきます。※竹取物語は感省略です。

和田萬吉 竹取物語

アントン・チェーホフ 神西清訳 桜の園 ――喜劇 四幕――

 

リップヴァンウィンクル

 すごい浦島太郎みたいな話だなと思ったら、実際ちょっと調べると西洋版浦島太郎と言われるような作品だということで納得。

 アメリカ、ハドソン川の流れる山脈の谷で奇妙な集団に出会い、酒を飲んで寝てたら二十年ばかりの時が過ぎていたというお話でした。

 ただこの作品は浦島太郎みたいな終わり方ではなく、時代が過ぎて鬼嫁から開放されたという結末が印象的でしたね。

ワシントン・アーヴィング Washington Irving 吉田甲子太郎訳 リップ・ヴァン・ウィンクル ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿

 

・変身

 あまりに理不尽ですよこれ……。

 ある日突然害虫の姿に変わってしまった男の話で。父から倦厭され、母や妹からは多少世話をされても距離を取られる。やがて耐えきれないとばかりに殺されて……。というお話なんですが。

 何がひどいって、男が虫になる前と、虫になったあとで、他の家族たちはよりいい生活に前向きになっているというところ。なんだかやるせない気持ちになりました。

【無料】変身 - 文芸・小説 フランツ・カフカ/原田義人(青空文庫):電子書籍ストア - BOOK☆WALKER -



 かなり省略しましたが、これで1,5巻の勉強は終わりです。

 続いて2巻のお勉強になります。

 2巻では口絵や目次にて、シェイクスピアの作品についてお話されるということなのでブックオフに行き新潮文庫さんのやつを買いました。

 以下、それぞれの感想です。

 

ロミオとジュリエット

 「タイトル聞いたことあるし、内容もなんとなく知ってるけど、実際に見たことはない作品」ランキングなんてものがあったらTOP3には入るんじゃないですかね?

 わたしも初めて読みました。

 そして内容大体分かってて、読んでいるわけですが、それでも胸が痛かったですね……。どうして恋していただけなのにこんな悲劇になってしまうのか……。

 シェイクスピア1作目として読んだのですが、言葉の言い回しにすごい癖がありましたね。これが戯曲の特徴、ってことなんでしょうか? よく分からないですけど。

 ともあれセリフだけなのに読んでて面白くて、恋に一喜一憂するロミオとジュリエットの独白は思わず笑ってしまったりもして、楽しく読めました。個人的にジュリエットの、姿形の変わる月にかけて誓うなんてやめてほしい、っていうセリフが特に印象的でした。

 

・オセロー

 見事なまでの復讐劇、と言っていいですかね。イアーゴの悪魔のような囁きでどんどん壊れていくオセローの周囲があまりに悲しかったです。

 途中で何度「そいつを信じちゃダメだよ……」と言いたくなったことか。ただ、そんな出鱈目と嘘に塗れた中でもデズデモーナがオセローを一途に想う気持ちや、夫の悪魔のような所業を知ったエミリアの怒り、もう手遅れになってしまったとはいえ全部を悟ったオセローの行動なんかには悲劇をただ悲しいだけで終わらせないものがあったように思います。

 

ハムレット

 王家崩壊の物語。

 父を失い、悲しみにくれる間もなく母は再婚し、新たな王として叔父が君臨してしまった。そんな状態に悩むハムレットが、父親の亡霊と出会ってしまったが故に悲しい運命の歯車が動き出してしまって……。というお話。

 この作品はたしかに亡霊に会ってしまったが故にハムレットが自分はどうすべきなのかと悩み苦しむわけですが、父親の亡霊がなくともハムレットが追い詰められていたのは事実だったろうし、何かしらの悲劇には至ったのかもしれないですよね。そう思えばむしろ、逃げられない状況になって全てをやり切るチャンスが与えられたのは幸運と言えなくもない……、のかな? と思ったりしました。

 ただ、如何せん。狂気を振りまくときのハムレットとかオフィーリアの歌は何を言ってるか分からない部分が多すぎて……。読むのがちょっと大変でした。

 

リア王

 オセロー、ハムレットと続いて読んできましたがこれも相当に悲惨でしたね……。リア王は一言で言えば老害というか、クソジジイというか……そんなんだから身から出た錆、因果応報と言えばそれまでかもしれないけれど、それにしたって。

 グロスター伯の両目抉られるシーンはちょっと精神ダメージが大きくて……、しかもそのあとのエドガーとのいい関係を見せて救われたようになってからの追い打ちまでしてくるのひどい。

 そして終盤の怒涛の死。特にコーディリアは、本当にいい娘だったから胸が痛いですね。あんなクソジジイと血が繋がってるとは思えないくらいにいい子だったから……。

 それから、個人的に少し考えたのがこの作品誰がいちばんの悪なのかなと。リア王はクソジジイだったけどそれだけでこんな事態にはならないでしょうし、娘二人は親不孝者ではあったけど悪女というわけでもない。エドマンドは如何にも悪人でございという立場だけど、こいつがいちばん悪いかと言われると悩む。

 なんか、全員が全員悪い部分があってそれが奇跡的な噛み合い方をした結果全て崩壊して皆不幸になった、ようにわたしには見えましたよ。

 結局救いようはないんだけど、完全に悪人たるイアーゴによって壊されたオセローや、逃げられない運命に悩み苦しみ最後に戦ったハムレットとは違う悲劇があったなと思いました。

 

マクベス

 短いながらも濃厚な作品。

 魔女の予言と自身の心に翻弄された男の末路……とでも言うのか。王殺害に始まったマクベスの破滅の道。なまじ予言が当たるからこそ、自分の野心や望みに欲を出してしまい、同時に手に入れた自らの絶頂期が壊れることを恐れて止めることができなくなっていく。

 結局、マクベスは最後の最後まで予言を信じていて、実際その通りになってしまうわけですが。なんというか、負の連鎖が凄まじい。予言とマクベスの心を合わせて見事なまでに駄目な方向に進んでいく様が描かれていて、濃厚だなと思いました。

 

ヴェニスの商人

 これは面白かったですね〜。

 やはりわたしはこういう読後感の良い明るいお話の方が好きだ。終盤のポーシャの裁き方が見事だったのは言うまでもないけど。そのポーシャが変装しながら、バサーニオーを弄る場面が思わず笑っちゃったんですよね。

 裁判中にバサーニオーが「今は妻やその他の何よりも友のことが大切なんだ」みたいなこと言ったときに、それをしっかり聞いてるポーシャが「それ妻の前では言わないほうがいいですね」と言ってるシーン想像しただけで笑うし。指輪のアレコレのシーンは、もはや弄るの楽しんでるだろと言いたくなるし。

 ここまで5作品全部悲劇だったので、喜劇のギャップが癖になってしまいました💦



・夏の夜の夢

 2巻の本編に登場しない作品なんですけどね、聞いたことあるタイトルで気になっていたのでついでに読んでみようと思って読みました。

 これはめちゃくちゃ面白かったです!笑

・シーシアスとヒポリタという人間の王と女王

・ハーミアはライサンダーという男が好きで駆け落ちしようとしている

・ヘレナはデメトリアスが好きだけど、デメトリアスはハーミアが好きで受け入れてくれない

・妖精の王オーべロンと女王タイターニアは喧嘩中

 という様々なカップルがいる中で、オーベロンはタイターニアに「目が覚めたとき最初に目にしたものを好きになる」という浮気薬を使ってやろうとして、同時に森でヘレナ言い争っているのを見つけたデメトリアスに浮気薬を使うようにパックに指示するところから始まるドタバタラブコメディという感じのお話でして。

 このドタバタ感ですごい笑える感じだったんですよね。特に浮気薬を使われてからのキャラの豹変っぷりが凄まじくて、戯曲だからなのか、それとも日本語訳の影響なのか、もう飛び出す発言全部がパワーワードですよ(笑)

「どけ、ちび。一寸法師。この南京虫、どんぐりめ」というセリフは本当にひどかったですw

 そして最後の結末はまさに夏の夜の夢、でして読後感も抜群でした。

 ※新潮文庫さんでは、夏の夜の夢と一緒にテンペスト(あらし)も収録されていましてそちらも読みましたが、こちらはわたしには合わないタイプのお話でした。なので感想省略です。

 

 

 と、ここまで読んで、ようやくわたしは1巻に着手しました!

 

 なのでここまでが前書きです。

 改めて感想に行きます。

 

1巻感想

 まず率直な感想を言いますと

 

「1巻時点ではなんとも言えない作品」

 

 になります。

 

 本作はタイトルから予想できるように、青春の恋心がすれ違う系のお話です。そして、それぞれのキャラの視点を巡ることで「それぞれがどんな気持ちを抱えているのか」そしてそれに伴い「誰が、何を、勘違いしているのか」が明かされていく構成となっていて、この1巻ではそれぞれのキャラの立ち位置を描くプロローグの印象を受けました。

 とはいえ、この1巻時点で視点が変わって描かれる内容には大きな予想外はありません。手堅くまとまっているとは思いましたが。

 なので2巻以降でそれぞれのキャラがどのように動くのか、キャラ同士の関係性がどう変わっていくのか、そういう部分に注目する作品だと思ったんですよね。

 

 なので1巻はプロローグ。

 まだまだこれから次第、というのが率直な感想でした。




 一方で本作はすれ違いの他にもう一つ大きな特徴があって。

 

 それは既に前書きで述べた「文学作品についてアレコレ語る」という部分。

 わたしは口絵と目次で紹介されている作品は一通り読んでから本作を読んだわけですが、やっぱりそれは正解でしたね。

 

 というのも作中でもある程度作品の概要は話されるわけですが、実際に読んでいると「あー、あのシーンか」と思いながら読めますし。

 本編ではネタバレになってしまうから言及を避けている部分(D坂やはつ恋の結末部分とかね)も「あ、なるほどね」と思いながら察することができますし。

 何よりも「初対面の人と話すとき、相手が自分の知ってる話題を話していると、自分も入り込みやすい」という感覚がやはり大きいですよね。

 

 つまりは元ネタの作品読んでいるだけで、この読みえるという作品に最初からある程度の親近感を覚えながら読むことができます。

 なので個人的にはあらかじめ読めるものは読んでおくといいのかなぁと思いました。

 もしくは本作を読んで、気になったのなら読んでみるといいかもしれません。

 

 とりあえず、走れメロス」「蜘蛛の糸」「D坂の殺人事件」みたいな短い作品はあらかじめ読んでおくのもいいかもしれないですね。

 口絵や目次にない作品で言えば「藪の中」「黄いろのトマト」「ツェねずみ」「手袋を買いに」「山月記あたりも短いから読んでおいていいかもしれません。(これらの作品は、本編読み終わってから青空文庫さんで読んでみました。感想は前書きにて)

 個人的に読んだ中で1つオススメをするなら「春琴抄ですね。読みえる本編でも言われているように、ラノベが好きな人が楽しめる作品だと思います。実際、わたしは尊い主従関係にあてられてもう最ッ高! ってなってましたし(笑)

 「はつ恋」「ティファニーで朝食を」の2作も結構面白かったので気になったら余裕があれば読むといいかもしれないです。「グレート・ギャツビー」は残念ながら、わたしには難しいお話でしたね……💦



 さて、そういうわけで感想をまとめますと。

 文学作品のアレコレを話すという部分で、齧った程度ではありますが実際に読んでみたわたし個人としては割と序盤から楽しめる作品でした。

 とはいえ、一方でこの読みえる本編の恋愛模様としてはまだまだプロローグなのでなんとも言えない感じです。

 なので2巻以降でここの動きに期待したいところです。



1,5巻感想

 カクヨムにて公開されている1,5巻の感想です。

 これは1巻で登場した様々なキャラの裏話短編集のようなお話でしたね。キャラの背景を掘り下げるお話と言ってもいいかもしれませんね。

 

 なので、よりキャラに感情移入したかったり、純粋に裏話が好き、短編が好きという人は読んでみた方がいいかもしれません。おそらくこの1,5巻を読んでいないからと言って、2巻が楽しめないってことはないでしょうけど。

 

 個人的には1巻よりも楽しめました。

 SF作品をテーマにして、それぞれのキャラの持つ状況や心情を上手にSFに合わせていたように感じました。また、それぞれの短編の小さな部分が別の短編で繋がっている構成が読んでていて非常に面白かったです。

 また文学部の部誌のお話と称して、本編じゃ絶対に入れられないようなそこそこの分量のあるオリジナル短編があったのが個人的にはかなり美味しいポイントです。「4,3光年」みたいな、こういう短編はサクッと読めて楽しいから好きなんですよ。

 

 ただ、この1,5巻は前書きで述べているように事前学習ほぼゼロなので、読んでいない作品がどんな内容が気になって集中できなかったところはありました。

 そのうち読めるかなぁ……、わたしの気が向けば読むかもしれないけど。

 

 とりあえず1,5巻は感想このくらいで。



2巻感想

 2巻のテーマはシェイクスピア

 とある覆面小説家を探す一件に始まり、文化祭で劇を行うことになるのが大まかな流れになっていました。

 

 そんな2巻の感想としては

「1巻で今後に期待と言っていた、キャラの変化がたしかに感じられる」

 といったところですね。

 

 今回フォーカスされていたのは表紙にもなっているヒロイン更紗

 1巻で彼女の抱える想いが明かされているわけですが、一歩を踏み出せない彼女が悩んで悩んで悩みながらも少しづつ変化する様子がしっかりと描かれていたのがこの2巻の個人的な良かったポイントなんですよね。

 その変化の様子というのも、シェイクスピアというテーマに合わせてハムレットの心情に近いような気もしましたしね。Let be――あなたまかせさ、というほどにはまだ至っていないかもしれませんが。to be or not to be――生か死か、なんて言いながら苦悩していたハムレットが、フォーティンブラスの兵士たちを見て覚悟を決めるような……、少なくとも更紗がこれまでできなかった一歩を確実に動き始めているように感じました。

 そんなわけで更紗というヒロインの魅力がしっかり感じられるようになってきた、というので2巻は個人的に満足の1冊。

 

 これからも少しづつ、それぞれのキャラの変化が起こって、それが大きなうねりを生み出すような感じになるんでしょうか?

 そういう意味で今後も楽しみになってきましたね。

 

 また、個人的には1巻の表紙を務めて、作中でもあまり裏表がないように描かれているヒロインの瀬奈。ここまで一度として彼女の視点がないのは、何か大きな隠し玉があるのか……? そこも注目ポイントですね。



 最後に、2巻では事前学習がどのくらい役に立ったの? というお話をしましょう。

 まず2巻を読む上で優先的に読むといいかなと感じたのはロミオとジュリエット」「ハムレット」「リア王ですね。

 というのも作中で行われる文化祭の劇がこれらの作品のリミックスなので、元ネタを知っているとある程度の流れが理解しやすく、一方で原作と作中劇のストーリーラインやキャラの役割の違いなんかでクスリと笑えるので。

 読んでいると小ネタで笑える枠としてヴェニスの商人がありました。これは本当に最初のところでパロネタ(ひどい下ネタ)を味わう感覚なので、正直読んでなくても大差ないです。「マクベス」「オセロー」もほぼ同様に、読んでいなくても2巻の大筋には関係ないかな?

 

 ただ、せっかく事前学習がんばりましたし、作中で語られてた話にわたしが物申したいことがあるとすれば、

 

ヴェニスの商人でポーシャさんは旦那さんを弄るのが楽しいだけなんだよ! あれはイチャイチャしてるだけ! 微笑ましいじゃないか! ラブコメだぞ!」

 

 と言いたいですね(笑)

 わたしの脳内ではある程度の話が萌え変換されるデフォルト機能がついてますので。

 はつ恋でジナイーダに虐められたいとか、春琴と佐助の主従関係最高とか、ね? あと個人的にリア王でコーディリアが一人称コーディリアなのめっちゃ可愛い、とか思ってましたしね。三姉妹末っ子で一人称自分の名前だぞ、可愛いだろ。

 

 ※あ、あと。余談です。

 「変身」で最初、どんな虫になってたか分からないやつ。めちゃくちゃ共感しました。ゲジゲジみたいなのか、ゴキブリみたいなのか、色々想像して読んでて、結局分からなくて調べたりしましたもの。

 

 ※※それから余談。

 カクヨムにて、2巻の作中劇の台本および、今後更新予定の2,5巻があるそうです。

 2巻読み終わった人は読んでみてもいいかもしれませんね。

kakuyomu.jp

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総評

 ストーリー・・・★★☆ (5/10)

 設定世界観・・・★★☆ (5/10)

 キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10)

 イラスト・・・★★★ (6/10)

 次巻以降への期待・・・★★★ (6/10)

 

 総合評価・・・★★★(6/10) 正直に言います、普通に春琴抄とかシェイクスピア読むほうを楽しんでました💦 シェイクスピアの喜劇系は今後も少しづつ読みたいですね。

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp