ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part71】ミリは猫の瞳のなかに住んでいる

 今回の感想は2023年3月の電撃文庫新作「ミリは猫の瞳のなかに住んでいる」です。

ミリは猫の瞳のなかに住んでいる (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

 

あらすじ(BWより引用

 瞳を覗き込むことで過去を読み取り追体験する能力を持つ大学生・紙透窈一(かみすきよういち)。退屈な大学生活の最中、彼は野良猫の瞳を通じて、未来視の能力を持つ少女・柚葉美里(ゆずのはみり)と出会う。

 猫の瞳越しに過去の世界と会話が成立することに驚くのもつかの間、『ミリ』が告げたのは衝撃的な『未来の話』。

「これから『よーくん』の周りで連続殺人事件が起きるの。だから『探偵』になって運命を変えて」

 調査の過程で絆を深める二人。ミリに直接会いたいと願う窈一だったが……

「そっちの時間だと、わたしは、もう――」 

 死者からの手紙、大学の演劇部内で起こる連続殺人、ミリの言葉の真相──そして、嘘。
 過去と未来と現在、真実と虚構が猫の瞳を通じて交錯する、新感覚ボーイミーツガール!  

 

感想

 映画でありそうな感じ。

 

 読み終わった最初の印象がコレです。

 綺麗に1冊でまとまっていて、いい感じの読後感がある。特別な何かがあるわけではないけど、全体的にいい感じの作品。

 そんな風に感じました。

 

 詳しくお話していきましょう。

 まず本作のあらすじを改めて、噛み砕いてみると。

 

・主人公は、他者の瞳を覗くことで、その者の記憶を見ることができる。

・主人公が猫の瞳(猫の記憶)を除いて、出会うのが本作のヒロイン。未来を見ることができるしょ。

・ヒロイン曰く、これから主人公の所属する大学の演劇部で連続殺人が起こり、主人公はそれを解決しなくてはいけない。

・ヒロインは主人公のいる時間にはもう死んでいる。

 

 と、箇条書きでこんなところでしょう。大きく4つの要素があるわけですね。

 なのでこのそれぞれについてお話ししますと。

 

 まず3つ目の要素「連続殺人」について。

 演劇部内で起こる事件というだけあって、演劇部での活動を通じてそこにいるキャラたちについて情報を得ていくという形で事件解決に進んでいきます。

 個人的にここはやや淡々としていて退屈と感じました。キャラ小説という感じでもないので、メイン以外のキャラに魅力があるようにも感じず。

 また後で述べますがこの殺人事件関連は本筋の外側にある話で、その本筋の部分が複雑な内容になっていて咀嚼が大変なので、この殺人事件のアレコレまではちょっと情報量多すぎると思いました。

 強いて言えば、この中では様々な文学作品や演劇の作品についての引用描写があり、それらについての知識があればより楽しめるかもしれませんね(わたしはちょっと……、ごめんなさい)

 

 続いて、1つ目と2つ目の要素。

 主人公とヒロインの能力について。

 他人の記憶を覗く能力と、未来を見る能力、これらは殺人事件解決にも大きな役割を持ちますが。

 それ以上に、二人の恋物語に深く関わる要素だとわたしは感じましたね。

 

 ここで出てくるのが。

 4つ目にあげた「ヒロインが既に死んでいる」という要素。

 ざっくり言うと、””主人公””が””猫の持つ記憶(過去)の中にいるヒロイン””を見て、そこにいる””ヒロイン自身が未来を見る力””で””未来に自分が死ぬ””ことが分かっている、という状況なんですよね。……うん、ちょっと複雑よね💦 整理するの大変です。

 

 主人公は猫の瞳を通して知るヒロインに徐々に惹かれると、当然ですが彼女の死因についての謎にも触れていかなければならないわけです。

 すると本作は演劇部の殺人事件の真相よりも、その裏側にあるヒロインの運命を巡る物語という側面が強くなってくるわけですね。まさにあらすじで述べるようなボーイミーツガールがメインだ。

 

 能力によって文字通りに過去と未来が複雑に絡み合って、運命としか言いようのない悲痛な袋小路に向かうしかない状況をなんとか解決できないのかと悩み考え戦う。

 終盤、全ての真実が明かされることで、猫の瞳を通して触れ合う二人の恋物語、という淡く切ない美しさがスッと染みてくるんですよね。

 過去を見る青年と、未来を見る少女、この二人だったからこその物語だった。基本的な二人の設定を活かした良い作品。



 というわけで、感想をまとめると。

「1冊の読後感は良い、映画にありそうな作品。」

 ってことになるわけです。

 

 ただ、綺麗な作品だっただけに特別心に刺さるなにかがあったかと言われると首を傾げてしまうのも事実ですね。また言ったように殺人事件云々の部分はちょっと退屈でしたし。

 

総評

 ストーリー・・・★★★ (6/10)

 設定世界観・・・★★★ (6/10)

 キャラの魅力・・・★★☆ (5/10)

 イラスト・・・★★☆ (5/10)

 次巻以降への期待・・・★★ (4/10)

 

 総合評価・・・★★★(6/10) 全体的に綺麗に仕上がっている作品。誰が読んでもある程度は楽しめそうですね。

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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