ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【シリーズまとめ感想part67】Babel

 今回感想を書いていく作品は「Babel」です。

 電撃の新文芸より2020年~2021年に刊行されていた全4巻のシリーズ。作者は古宮九時。イラストは森沢晴行

Babel I 少女は言葉の旅に出る (電撃の新文芸)

※画像はAmazonリンク(1巻)

 

 

 

作品概要

 まずはいつものように本作のあらすじから。

 

””現代日本で生きる普通の女子大生、水瀬雫。

 ある日、彼女が目の前に現れた不思議な穴に入ると、気がついたら異世界にいた。

 剣と魔法のファンタジー世界で寄る辺もない彼女が出会ったのは、魔法士の青年エリク。

 魔法文字の研究をしている彼は雫の世界の文字に興味を持ち、それを教えることを条件に、元の世界へ帰還するための手段を探すための旅のお供をしてくれることに。

 こうして始まった雫とエリク、二人の旅はやがて文字と言葉を介して世界の大きな謎へと踏み込んでいくのだった――””

 

 といった感じのお話ですね。

 

 ジャンルは「ファンタジー」です。

 そしてその中で鍵になるのは「言語」「文字」「会話」といった要素。

 本作はまさしくBabelというタイトルにふさわしい言葉を介した壮大な世界観を味わえる作品でした!

 

 ですので、今回はその世界観についてのお話をメインにして。

 その他に雫たちキャラクターへの個人的な感想をお話しすることとします。

 

 また今回は大きなネタバレ、しない、はずです!(あったらごめんなさい)

 同作者の「Unnamed Memory」「月の白さを知りてまどろむ」と二連続でネタバレ何ソレおいしいの?状態で感想を書いてしまいましたが、三度目の正直ってあると思います!

 前書きはこのくらいで、感想を書きます。



1:圧巻のファンタジー世界観

 本作の最大最強の魅力。

 それは何と言っても「世界観」

 本作は雫とエリクが旅をする中で徐々に世界の大きな秘密に近づいていってしまうというお話でありますので、そのコアになる部分が面白いって言うのはそれだけで満点と言いたい作品ですよね。

 

 そしてもう少し詳しくお話ししていきますと。

 最初に言ったように、鍵となるのは言語です。

 雫は現代日本、エリクは異世界で生まれた人間。

 当然扱う言語は異なるはず。しかしながら、二人は会話を普通にすることができます。

 一方で、お互いに書き言葉は一切理解することができませんでした。

 それは一体何故なのか?

 最初の疑問はここから始まります。

 

 それからは物語の様々な魔法事件に関わる中で雫は異世界の常識、自分の常識とは違う世界を知っていきます。

 同時にそんな雫の持つ現代日本の感性から発される言葉を介することでエリクは自分自身が不思議と思っていなかったものへ疑問を抱くようになります。

 

 話し言葉と書き言葉、それぞれに違いを持つ二人が関わるからこそ生まれていく謎。

 そして言葉が成す役割である「人と人とが相互理解すること」「人々が過去の記録を未来へと残すこと」の意味を考えさせられると同時に、過去の失われた記録、言葉の起源、そういったものへと迫っていくのです。

 

 読めば読むほどに謎が深まり、広がる世界観。その果てには一体どんな真実が眠っているのだというワクワクとハラハラが止まらない。こういう面白さって最高だと思いませんか?

 

 そして本作は全4巻で完結しています。

 個人的には最初の3巻までは1つ1つのトピックとそこから得られた知見、謎への手がかりが点のままに存在していたように感じていましたが。

 最後の4巻でその全てが一変します。

 点と点が繋がり、そこまでに拾ってきた情報全てがあってようやく辿り着いた真実。謎が一息にパッとはじけるようなあの感覚は絶対に忘れられない! そのくらいの衝撃が襲ってきた作品だったのです。

 

2:メンタル強すぎな女子大生・水瀬雫

 本作の主人公である雫。

 彼女を一言で表すなら「メンタルのステータスがカンストしている女」でしょうね。

 

 彼女は一見すると普通の女子大生です。一見すると。

 魔法は使えない。武術の心得があるわけでもない。

 剣と魔法のファンタジー世界で生き抜くにはあまりにちっぽけで非力な少女。

 

 しかしながら、彼女は決してエリクに守られるだけのかよわい女の子ではなかった。

 そして無力な少女が一体何を以て過酷な世界を戦い抜くかといったら、その身一つしかないわけで。必要なのはたった一つの命、その危機を前にしても決して臆することなく自分の意志を貫くだけの勇気と覚悟。

 雫はその点において、精神的な強さが尋常じゃない女の子でした。

 

 エリクのように誰もが異世界の住人だなんて言う雫を簡単に受け入れるわけではないのです。異質な存在であるから排除すべきだという人もいました。雫自身がその価値観でひどいと感じることを平気でする人だっていました。世界が違えば常識が違う、当たり前の話。

 けれど、雫はたとえ世界が違ったとしても、普遍的な人が守るべきものであると自らの心で信じたものを貫くためには絶対に引かない。

 文字通りに何度も何度もその命をベットして、目の前の人間へと向き合っていく。対話をすることで自らの想いを訴える。

 

 そんな彼女の強い意志の込められた言葉だからこそ、その想いは相手にだって届くし、ときには相手の心を変えうるだけの力だって持っている。エリクだけじゃない、彼女が関わる全ての人間を通じて、それを強く強く感じます。

 そして彼女だからこそ、本作の全ての真実が明らかになったときも、その意志の強さと信じる心でそこに立ち向かうこともできたのだと。まさしく命を賭けまくってきた女の言葉は重みが違うってことです。

 これは本作の鍵である「言葉」の持つ力を最大限に魅せるものでありますし、それと同時に主人公としての雫の最高にカッコよくて痺れる姿を見せてくれたと思っています。

 

(しかし、そうであるからこそ考えてしまいますよね。普通の女子大生ってなんだろう……、って)



3:化け物メンタルさんに感化されていく異世界の住人たち

 雫は主人公です。

 これはもう間違いありません。

 これだけ肝の据わった女はかよわいヒロインだなんて間違っても言えません。

 

 となると、本作のヒロインって誰?

 エリクってヒーローポジなの?

 という疑問が沸いてきますので、他のキャラにも触れていきますと。

 

 まず、エリクは終始パートナーとして立場が強かったように思います。

 本作は雫とエリク、二人の旅がメインにある作品ですけれど、明確に恋愛的な雰囲気は見られません。なのであまりヒーローとヒロインって枠組みが当てはまらないと思うのですよ。

 しかしエリクは雫にとって異世界で唯一の信頼できる拠り所であったのは間違いありませんし、エリクもまた旅をする中で最も側で雫の気高い精神性を見てきた人物ですから好感を持っていたのは間違いない。お互いに特別な絆と信頼で結ばれていたのは疑う余地もありません。

 ですので、この作品に関しては雫とエリクは旅の仲間。信頼できる友。そんな印象を強く受けました。

 異世界の常識、魔法に関するアレコレ、直接的な武力を持たない雫の護衛、そういう側面でエリクはエリクにしかできない活躍をいっぱい見せてくれたと思っています。

 

 そしてこの二人だったからこそ、最後の真実を前に雫の覚悟は既に述べたように。側で見てきてそういう判断をするだろうという信頼をするエリクと、同時に彼女がそうであるからこそ彼女を守りたいと想う気持ちがとても良かった。エリクは元々魔法言語の研究者でもあり、また過去に彼も抱えているものがあるために、他人とあまり深く関わるタイプではなかったからより一層雫との旅でこうして変化したのが分かるのって良いんですよ。

 また現代日本の人間と異世界の住人っていう、世界の隔たりを介した相互理解という側面をいちばん見せてくれたのもやっぱりこの二人で。異なる世界の言語を教え合う二人だからこそのエモい場面ってのも多々あって、個人的には非常に満足。にっこり。




 そして主人公が雫、そのパートナーがエリクなら。

 ヒロインは誰かとなれば、オルティアしかいないのでしょう。作者自身もそう言っているので間違いないです。

 

 オルティアは雫が旅の中で出会う(……というより、彼女の部下に誘拐されてエンカウントした)、とある国のお姫様なのですが簡単に言えばワガママ放題なお姫様。

 権力を笠に他人に理不尽を強要しては、自らの手慰みにするような姫です。しかし、同時にそれは彼女の心が乾きに乾いているからこその周囲への態度なわけで。

 これが、まぁーーー、雫との相性抜群なんですね。

 どんな理不尽にも鋼のメンタルで向かっていき、姫相手だろうと自分が譲らないものは譲らない主人公が我らが雫さまですよ? これほどまでにおもしれー女いるわけないんだから。

 オルティアみたいな姫でありながら、そして姫であるからこそ、他人との本当の意味で信頼や愛情を育むことができなかったようなヒロインにはぶっささるわけですよ。

 

 ぶっちゃけ、オルティアとの話はガチ泣けます。

 理不尽に対して立ち向かう雫の努力が少しずつ少しずつ実を結んでいってオルティアの心はもちろん彼女の周囲の人々までも変えていくようなお話。

 雫の格好良さはもちろん、オルティアの背景も知れば、彼女にとって雫がどれだけ特別になっているか分かって、そんな雫を信じてただの傍若無人なお姫様の殻を破って本当の王族としての輝きを見せるようなやつですから。

 本当に素敵でした。




 雫に関わった人はまだまだいっぱいいて。

 とある傭兵稼業をするメンバーたち。特にその中でも暗殺者だったあの人とか。

 雫が元の世界に帰るための手段を探すために向かった魔法大国の王様やその王妹とか。

 1つ1つ語るとキリがないので、今回は特に関わりの大きかったエリクとオルティア中心にしましたが、どの物語もとても良かった。

 またこういう準レギュラーな人たちでなくとも、旅の中で出会う一期一会のキャラたちにも様々なエピソードがあって面白い人たちはたくさんいましたね。



4:Unnamed Memoryとの繋がり

 最後にこれは話しておきたいというポイントで。

 本作の異世界、エリクたちがいる世界は同作者の「Unnamed Memory」本編から数百年後の世界という設定になっています。

 そのため両作品を読むと、その繋がりを感じる部分がたくさんあって面白かったところでした。

 わたしは「Unnamed Memory」を現在刊行中のアフターストーリー4巻まで読んだ上でこのBabelを読みましたので、その上での感想を述べますと。

 

 まず、第一にめちゃくちゃニヤってできる場所があります!

 アンメモを読んでいるから分かるところ、特に繋がりの大きいキャラに関しての部分を別角度から見るのめっっちゃ面白いです。

 

 それから、アンメモを読んでいたときには疑問に思わなかった部分。

 これがBabelにおいて大きな謎への手がかりになることがあって「え、あっ、そうえいば!」みたいな驚きがいっぱい出てきました。

 

 また、アンメモの舞台となる魔法大国ファルサス。

 先ほどの段落では話飛ばした部分ですけど。

 その数百年後のファルサスの王様であるラルスと、王妹のレティシアを見ると「あー、たしかにこれはファルサスの人だ……、というかこの国の王様ってみんなこんななのか」という印象を受ける部分、これが面白かったですよね。

 特に王様ラルスからの、雫への絡み方が、完全におもしれー女を見て楽しむ人になってたので。雫は大変だったかもしれませんが、ぶっちゃけ読者視点ではかなり笑えたんですよね。



 今回わたしはアンメモが先だったのでこういう感想ですが。

 この2つのシリーズはBabelを先に読んでいても、楽しめそうですよね。

 同じように「こことここが繋がっているのか!」という発見と驚きを持ちながら読めると思いました。



巻別満足度と総合評価

 最後に本作の巻別満足度と総合評価です。

 

 まずは巻別満足度。

 本作はやはり謎の真相が明らかになっていく終盤に向かって盛り上がっていく作品でした。見ての通り右肩上がり、ですね。

 そのため全体を通した総合評価は最終4巻そのまま

 ★9.5/10

 とします。

 

おわりに 

 今回はBabelの感想を書いていきました。

 ここ最近の中では、割と落ち着いたシリーズまとめ感想ができたのではないかと思います。特別大きなネタバレは……、なかったですよね? 大丈夫かな……。

 ひとまずここしばらくは古宮九時先生のシリーズを連続して読んでいきましたが、ひとまずこのBabelで一区切りです。

 

 次のまとめ感想は「灼眼のシャナ」になります。読んだのが約4ヶ月前ですが、ようやく感想まとめましたので。

 その後は、細音啓先生の「黄昏色の詠使い」「氷結境界のエデン」「不完全神性機関イリス」の3作品を連続して読む予定なのでその感想を書くんじゃないかと思います。

 

 

 

 

 前回のシリーズまとめ感想「ご愁傷さま二ノ宮くん

【シリーズまとめ感想part66】ご愁傷さま二ノ宮くん - ぎんちゅうのラノベ記録

 次回のシリーズまとめ感想「灼眼のシャナ

【シリーズまとめ感想part68】灼眼のシャナ - ぎんちゅうのラノベ記録