【シリーズまとめ感想part68】灼眼のシャナ
今回感想を書いていく作品は「灼眼のシャナ」です。
電撃文庫より2002年~2023年に刊行されていた全22巻+0巻+短編集4巻のシリーズ。作者は高橋弥七郎。イラストはいとうのいぢ。
※画像はAmazonリンク(1巻および最終22巻)
作品概要
まずはいつものように本作のあらすじから。
””現実世界と隣合わせにある「紅世」と呼ばれる異世界から紅世の徒という存在がやってきては、人知れず人間の持つ存在の力を喰らっている。
そんな世界の真実を知ったときには主人公・坂井悠二はもうその存在の力を喰われ消滅を待つのみの状態トーチになってしまっていた。しかしミステスという紅世の徒の宝具を内蔵する特別なトーチになっており、その宝具によって彼は幸か不幸か生きながらえることとなっていた。
そして紅世の徒と契約して世界のバランスを乱す徒を狩っているフレイムヘイズの少女・シャナと出会い、シャナは悠二を守るために行動を共にすることになるのだった。””
というようなお話ですね。
ジャンルとしては「バトルアクション」「現代ファンタジー」ですね。
そして個人的にはシャナや悠二が成長しながら徐々に惹かれ合っていく「青春と恋愛」の色も強く感じました。
ですので、そのあたりを中心にお話ししていきます。
1:シャナの物語
本作のタイトルは「灼眼のシャナ」
そしてまさしくこれはシャナの成長の物語だったんですよ。
シャナについて話すには、フレイムヘイズというものを知らなければならないのですが。
ざっくり説明しますと。
紅世の徒が存在の力を喰らって消費することによって、世界には大きな歪みが生じてしまう。それにより大きな厄災が訪れることを危惧して秩序を守ろうとする紅世の徒が契約して無法者な徒たちと戦う人間、それがフレイムヘイズですね。
重要なのはこのフレイムヘイズはその契約時に人としての生を終えて、周囲の人々との関係性の全てが失われると共に、不老不死の肉体を持つようになるというところ。
そしてシャナはそんなフレイムヘイズとなるべく拾われた子どもで、幼い頃からそういう生き方しかしてこなかった少女だという事実。
もっといえば、シャナという名前すら悠二が彼女を呼ぶためにつけたものであり。それまでは真の意味で純粋な敵を倒すためだけのフレイムヘイズだったと言えるでしょう。
だからこそ彼女には基本的に、普通の人として生きていた時間がないわけです。
他のフレイムヘイズたちもたくさん描かれますが基本的には誰も彼もが元々の人生で紅世の徒に関わる何らかの事件に巻き込まれることから自分も戦うことを選ぶため、シャナはフレイムヘイズとしても異質な存在だったわけです。
そんな彼女が悠二と出会って初めて人と関わることを学んでいく。
1巻の時点で相当に不器用な人付き合いを見せていたけど、過去編を見たらもっとひどいときのシャナがいたりして。悠二と関わるようになってからどれだけその態度が丸くなったかを感じたり。
あるいは悠二へむける感情。恋愛なんて全くの無縁だった状態なのだから、当然それを伝えるどころか、自分の中での折り合いの付け方すら分からずに周囲に当たってしまったり、逆に自分を惑わす感情を恐れて涙を流したり。
そしてわたしが悠二と関わる中でいちばん影響が大きかったと思うのは、悠二の母が持つ愛情。フレイムヘイズとして育てられた頃にはなかった、普通の家庭の温かさや親の愛情ってものが悠二の母を通じていっぱい教えられるんですよ。悠二の母親、マジでめちゃくちゃ良い人でした。
さらにここで家族の形を知ったからこそ、シャナがフレイムヘイズとなるべく育ててくれた師であり育ての親であるヴィルヘルミナや、シャナの契約した紅世の徒であるアラストールがただフレイムヘイズとして戦ってほしいわけではないというその愛情を理解できるようになっていく。
恋に悩んで。人としての普通を知って。自分を大切に想ってくれる人がいるのを自覚して。そんな心の変化はそれまでただ戦うだけで良かったフレイムヘイズとしての自分を一度は見失いかけるほどにシャナの中では大きくなってしまうけど。
その全部を受け入れて、その上で新しい自分を決める。
何のために戦うのか。何のために生きるのか。
20冊を越えるほどの長いシリーズでゆっくりじっくりそれを描いていくのが本当に読んでて楽しかったところなんですよ。
2:悠二たちの青春
シャナの成長があれば、当然そんなシャナに関わった悠二にも成長や変化はありますし。
更には度重なるフレイムヘイズの戦いの中では、悠二のクラスメイトたちも関わらざるを得ない状況ができていくんですよね。
シャナの恋敵となる少女・吉田一美。フレイムヘイズの一人マージョリー・ドーの子分になって事件に関わるようになった田中と佐藤。フレイムヘイズ関連の事情を全く知らない池や緒方。
わたしはここでそれぞれの少年少女の青春と成長っていうのを強く感じたんですよ。
特にわたしが見ていて面白かったのは田中と佐藤の二人ですよね。
フレイムヘイズと関わった一般人として、自分達はどうすればいいのかという悩みと選択が実に対照的に描かれていて。自分が何を大切にしたいかというものをじっくり考えて出していった答えはどっちも絶対に間違いではなかったんだよな、ってそんな風に思える物語が描かれていました。
そして、言うまでもなく。
本作の主人公・悠二はシャナと同じくらいに大きく変わっていたと思います。
なにせそもそも1巻冒頭から、存在の力を喰われていて、もう消滅を待つのみの存在になってしまっているのですから。それまでの現実から急に非日常に突き落とされて、地に足がつかないような感覚が付きまとって、そんな中でシャナと一緒に戦うとかあまりに過酷すぎますよ。
まさしく人としてのアイデンティティが揺らいでしまっていて、自分の感情、自分の成すべきことそういったものに悩み続けていた主人公だったわけです。
そんな状況だからシャナとの関係性、吉田一美から向けられる恋愛感情っていうのはまた非常に強い刺激として刺さってきていたのも面白かったですよね。
ただここに関して素直に恋愛模様を楽しもうとすると。悠二の冷静な性格と深く考えられる思考力が徒となって、「どうしてお前はそういうことをするんだ」と言いたくなることもいっぱいありましたけどね。シャナがとにかく真っ直ぐに人として成長しているからこそ、余計に悠二がちょっと変な方向に行っているのに思わず苦笑してしまう感じですよね(笑)。
3:バトルアクション
本作はバトルアクションが売りの作品ですから、ここについて触れていきますけど。
正直細かいこと言う必要がないですよね。
面白いです!
人外の存在フレイムヘイズだからこその街規模で行うド派手な戦い。
度重なる強敵との連戦、相手の能力を見極めて逆転する展開。
誰も彼もが抱えている譲れないもののために戦う意志。
フレイムヘイズたちが、何百年もの時間をかけて守ろうとしてきたもの。紅世の徒たちが何百年もの時間をかけて叶えようとした願い。その2つが正面衝突して起こる全面戦争。
どの戦いもそういう面白さやワクワク感で満たされていたものだったと思います。
特にわたしがこういうバトルアクションモノで思うこととして、やっぱり主人公サイドの能力はシンプルな方が良いってことですね。
シャナの場合は刀で斬る、というのが基本的なスタイルで飛び道具のようなものはほとんど使わない。頭脳担当は基本的に悠二で、異能力を駆使して戦うのはマージョリー・ドーの専売特許というので、それぞれのサポートはあれどシャナはとにかく物理で殴る系の戦闘スタイル。バトルアクションはやはりこういうシンプルな戦い方で、如何にして強敵を打ち破るかが面白いところだと思っているので、シャナは良かったなと思っています。
また個人的に好きだった戦いを挙げるなら。
終盤のクライマックスはもう全部面白かったのですが、その中では特にサブラク戦は特に激闘って感じがしましたし、シャナが覚醒して自分の殻を破る18巻めっちゃ良かったですよね。序盤だとシャナの最初の大きな変化を見せてくれたVS愛染自&愛染他のところが良かったですね。
4:過去から続くフレイムヘイズたちの戦い
本作は全22巻構成。
そして基本的に5巻で1つの区切りをつけるような構成になっています。
1~5巻、6~10巻、11~15巻、そして最後は16~22巻で最終章という感じですね。
その中でも各区切りの終わりとなる5巻、10巻、15巻はそれぞれ過去のフレイムヘイズたちを描くものになっていまして。
これがフレイムヘイズという不老不死の肉体で戦い続ける戦士たちとその歴史を描く上でちゃんと重要なエピソードをいっぱい含んでいて、今のシャナたちがいる現在になっているのが分かるという意味で面白かったんですよ。
ただ、ぶっちゃけ過去編のアレコレ全部描くには冊数足りないだろうなぁと感じるくらいキャラもエピソードも多いので、その点は消化不良な感じはありましたけどね💦
5:細かい部分をまとめて
そろそろ感想が長くなってきましたが、言いたいことはまだまだあるので残りを簡単にまとめて放出します。
・マージョリー・ドー、すっごい好きです。
復讐のためにフレイムヘイズになった人で、基本的に飲んだくれな残念美人感もある人なんですけど、めちゃくちゃ良いお姉さんなんですよ。シャナや悠二、そのクラスメイトといった若者たちをそっと見守る近所のお姉さん的ポジションで何だかんだ色々世話焼いてくれるところがマジで良かったんですよ。
・アラストールお父さん!
シャナの契約したアラストール。
これ完全にお父さんでしたよね。悠二に向ける態度が、娘を貴様なんぞにやるか! みたいな感じで。もちろんフレイムヘイズとしてのアレコレや事情を含んで、悠二に厳しい言葉をかけていたのはあるでしょうけど。
にしたって完全にお父さんだった。
・ヴィルヘルミナお母さん
アラストールは悠二を認めつつも、お父さんとしては頑固にならざるを得ない……、みたいな感じでしたが。
シャナの育ての親たるヴィルヘルミナはもっと頑固に絶対悠二を認めないお母さんになってたんですよね。そして自分の恋路を応援してくれないヴィルヘルミナなんか嫌い! って思春期真っ盛りなシャナの反抗期を前にしたときの落胆っぷりはめちゃくちゃ笑いました。
とはいえ、この人もなかなか大変な立場なんですよねぇ。言ってしまえば、フレイムヘイズの長い長い歴史でずっと生き残っている人、なわけですから。それだけにもう簡単には曲げられない抱えているものがいっぱいあるんだろなって。もう少し柔軟に生きても良いだろうけど、それは難しそう。娘は恋人作ったんですから、そろそろお母さんも良い人見つけてほしいなとか思います。
・ヘカテー、もう少し可愛いところ見たかった……!
敵側の重要ポジションにある少女ヘカテー。
ぶっちゃけヴィジュアルが本作トップレベルに好きなので、普通に日常的な可愛い部分をもっと見たかったんですよねぇ。
短編集で本編リタイアした敵キャラたちが好き勝手暴れ回る空間とまではいかないけど、本編には一切関係ありません的なお話でもいいからなんかもう少しほしかったなぁって。
・短編集も面白いぞ
特に面白いのがフリアグネとマリアンヌの質問コーナーなんですよね。まさかの本編退場した敵キャラがパーソナリティをしながら進行する本編の設定開設Q&Aとかいくら短編とはいえど自由空間がすぎますって。
また番外編およびシャナの過去話を収録する0巻には、本編完全に関係なくなっているメタ発言飛び交うお話もあったりして、こういうのわたしは大好きでした。
・アフターストーリー、なんかニヤってしちゃう。
本編のアフターストーリーとなるSSⅢ、およびSSⅣ、これがまぁ面白くてですね。
悠二とシャナのその後として描かれるお話で、それまで敵だった人も味方だった人も新しい立場で上手いこと折り合いつけて関わってるんだなって分かる雰囲気が良いんですよ。
ちなみに個人的にはここまで来ても悠二に厳しいヴィルヘルミナお母さんにはやっぱり笑った。
・ストーリーに関して
ここまで感想で全く触れてませんが、基本的にシャナたちの成長譚という部分を除けば襲撃してくる敵に順次対応するような形なのであまり話すことがないのです。その裏でヘカテーたちのいる大きな組織の陰謀も動いてるよ~、って感じですがこれも結局事件が起こってから対応しますし。
これのあたりに関しては、そもそもフレイムヘイズが事件が起こってからじゃないと動けない設定も関係してるとは思いますが。個人的にはできるだけ1冊1バトル1区切りという構図でバトルアクションのシリーズとして毎回安定した面白さがあるようにするのを意識しているのがあるのかなぁと思ってたりします。
巻別満足度と総合評価
最後に本作の巻別満足度と総合評価です。
まずは巻別満足度。

基本的にはコンスタントに面白さのある作品でして。
その中でも特に激闘だったり、大きな変化があった巻は一段増して面白かった印象がありました。
総合評価としては
★8.5/10
とします。面白かったです!
おわりに
読んだのは1月とか2月なんですが、ようやく感想書きましたよ。
このシリーズまとめ感想は書きたくて長々だらだら書いているものではありますけど、時間かかるのも事実なのでやっぱり大変なんですよ。
そういうわけでようやく書く時間を取って書きましたと。
本作はバトルアクションがメインの作品ではありましたけど。
やっぱり個人的にはシャナや悠二が物語を通じて成長する部分が特に良かったと思うんですよね。なので今回は感想もそこを最初にもってきましたが。やっぱりわたしはキャラで作品を見てるなぁと思いますね。
前回のシリーズまとめ感想「Babel」
【シリーズまとめ感想part67】Babel - ぎんちゅうのラノベ記録
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