ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part172】後宮食医の薬膳帖 廃姫は毒を喰らいて薬となす

 今回の感想は2023年7月のメディアワークス文庫新作「後宮食医の薬膳帖 廃姫は毒を喰らいて薬となす」です。

 ※2024年7月ではなく、2023年7月です……、ギリギリ1年経ってないですし新作記事でいいですよね? あとメディアワークス文庫ラノベというよりライト文芸じゃないか? とかいう話も胸の中にしまっていただいて……。

 ※本作は2024年7月現在4巻まで発売中です。今回は1巻のみの感想となります。本作はXのFFさんからいただきまして、感想をしっかり書こうと思ったのでこうして1つ記事にしている次第ですね。

後宮食医の薬膳帖 廃姫は毒を喰らいて薬となす (メディアワークス文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 この食医に、解けない毒はない――。毒香る中華後宮ファンタジー、開幕!

 暴虐な先帝の死後、帝国・剋の後宮は毒疫に覆われた。毒疫を唯一治療できるのは、特別な食医・慧玲。あらゆる毒を解す白澤一族最後の末裔であり、先帝の廃姫だった。

 処刑を免れる代わりに、慧玲は後宮食医として、貴妃達の治療を命じられる。鱗が生える側妃、脚に梅の花が咲く妃嬪……先帝の呪いと恐れられ、典医さえも匙を投げる奇病を次々と治していき――。

 だが、謎めいた美貌の風水師・鴆との出会いから、慧玲は不審な最期を遂げた父の死の真相に迫ることに。

 

◆◆◆登場人物◆◆◆

【慧玲(フェイリン)】
暴虐を尽くした先帝の廃姫であり、毒を熟知する白澤一族の叡智を受け継ぐ最後の末裔。助命と引き換えに、皇帝から毒疫の治療を命じられる。

【鴆(ヂェン)】
怪しげな翳をもつ美貌の青年。宮廷で活躍する風水師だが、その正体は毒を操る暗殺者。毒の効かない慧玲を気に入り、なにかと揺さぶりをかけてくる。

 

感想

 うん、良かったです。

 率直な感想としては「続きは気になる」という感じでしょうか。

 

 本作の内容はあらすじに示される通り。

 先帝の廃姫である少女・慧玲。あらゆる毒を解く一族の末裔である彼女は、毒疫の治療のために生かされることになる。後宮内で生じる様々な毒役を治療し、謎の風水師・鴆と出会い、そして徐々に後宮内に根付く闇に近づいていき……、みたいなお話ですね。

 

 ジャンルは中華風ファンタジー

 その中でもファンタジー色がかなり濃いものとなっていました。

 本作が扱う毒疫というものは、五行の要素に則って、様々な超常的な病症を引き起こすと言ったものになっています。具体的には体に鱗が生えたり、梅の木が生えたり、といったような感じですね。そしてそれを治療するためには適切な五行要素に根付いた食材を用いた薬膳料理を作る必要があり、医食同源という言葉が文字通りの形になったものと言えるでしょう。

 まず、この設定自体はなかなか面白いと思いました。ただ設定を活かした展開としてはやや短調な印象を受けてしまったかもしれません。

 端的に言えば、本作の毒役は慧玲が料理を作れば全部解決しちゃうわけです。

 料理をテーマに扱う作品ではしばしば「ただ料理を作るだけではダメだ」という状況が用意されます。それは料理を提供する相手が何らかの悩みや問題を抱えていて、それを解決するために料理を調整する必要があったり。あるいは料理勝負がテーマの作品なら、どうすればより客に満足してもらえるのか、売れるのかという点で一捻りが必要となったり。そういう状況で主人公がどんなアイデアや技術を見せるのか、それが一つの見所になるわけです。

 その点で、本作は症状に合わせた適切な五行の要素を持つ食材が必要であり、そこでどんな料理を作るべきだろうか、というところが見所になりそうなのですが、……ならないんですよね。それはひとえに、ファンタジー設定であるから、という点に尽きます。すなわち慧玲が「この症状にはこの食材が必要だ」と言ったらそれが答えで全てなんですよ。現代日本人の読者の常識ではない要素なんですから、予想のしようもなければ、それ以上の想像もしようがありません。

 そういう意味で、本作は慧玲が料理をすれば基本的に毒疫はなんでも解決してしまう、という状況が繰り返されてしまうのには単調な印象を受けてしまったというわけですね。



 しかしながら、ここまではあくまで料理の部分を見たときの印象です。

 

 本作を「陰謀渦巻く後宮モノ」として見れば、しっかり面白かったと思います。

 本作の1つの重要な要素である、毒疫はその名前の通り「毒」です。ただの病ではありません。したがってその毒を扱う人がいたり、あるいはそんな毒へと化してしまう呪いのような感情があったりと、毒疫のまつわる問題には必ず人間の思惑というものが関わってくるわけです。

 これが陰謀の渦巻く後宮という怪しい空気感と見事にマッチしてましたし。それを解決する中で毒と薬というモノに対する主人公・慧玲の信念を強く感じることもできるようになっていたのも上手かったと思います。更に謎の風水師である鴆や、皇帝皇后、後宮の姫君たちといったそこに関わる人物たちの動きや思惑が見え隠れすることで、目の前にある毒疫という問題上の先帝の不可解な死や国にまつわる大きな謎へと近づいていく展開は面白かったです。まるで果てしない闇を見るようで、まだまだ物語が始まったばかりで、今後どうなってしまうのかという期待感がぐんぐん湧き上がってきました。

 この1巻では、慧玲が解毒に関する知識や技量は卓越していることは十分に伝わった一方で、その領分を越える問題に関しては普通の少女と変わらないということも分かったので、果たして彼女が今後どのようにして大きな問題に関わっていくのか。またヒーロー役ではあるとおもうのだけど、現状ただ怪しい人でしかない鴆との関係がどうなっていくのか。この辺りは個人的に特に気になるところでしょうか。

 

 そういうわけで本作は1巻時点での満足感という観点ではやや物足りなさを覚えたけれど、それよりも「続きは気になる」という感想の方が大部分を占めるような印象を覚えました。

 

総評

 

 ストーリー・・・★★★ (6/10)

 設定世界観・・・★★★ (6/10)

 キャラの魅力・・・★★★ (6/10) 

 次巻以降への期待・・・★★★★☆ (9/10)

 

 総合評価・・・★★★☆(7/10) これからどんどん深入りしていく後宮の闇が気になります

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。 

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