【新作ラノベ感想part195】星が果てても君は鳴れ
今回の感想は2024年8月の電撃文庫新作「星が果てても君は鳴れ」です。
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あらすじ(BWより引用)
もし永遠の音があるとしたら、それは君の形をしている。
「見つけてあげるわよ。正しい音色の、奏で方」
他者の影が纏うノイズに侵され、命を絶とうとした俺の前に、突然そいつは現れた。元国民的女優の、星宮未幸。素顔は勝気で、時々猫かぶりで……そして、未来が視える少女。
俺の自殺を止めるため始められた、奇妙な同棲生活。過去の傷を優しく上書きするような日々には、小気味良い音色が鳴り始めーー
だけど、俺は何も知らなかったんだ。あいつが走り続けた意味も、その足を止めてしまった理由も、未来に隠したたった一つの悪戯でさえも。
これは、過去と未来を乗り越える別れの青春譚で、そして、悠久の時を超えても響き続ける愛の物語。
感想
うん、面白かったです。
これは一言で言えば、すっごく映画映えしそうな作品ですね。
本作は、自殺しようとした主人公・月城一輝の前に、未来が見えるという少女・星宮未幸が現れるところから始まるお話です。少女に自殺を阻止され、無理矢理に始められた同居生活。彼女と、引きこもりな彼女の妹の瑠姫那、三人で過ごす中で徐々に一輝の心の傷が癒やされていき……、そして彼女が自分の自殺を止めた理由を知って――という感じのお話ですね。
この作品で鍵となるのは「歌」でしょうか。
主人公の推しのアンドロイドシンガー・はひゅー。
大人気女優だったにも関わらず、突然の引退宣言をした未幸。
引きこもりをしながら部屋の中で作詞をしている瑠姫那。
それぞれが歌あるいは歌うことに関わる強い何かを持っていて、まるで運命をたぐり寄せるかのように出会って始まった同居生活。その繋がりが徐々に明かされるにつれて各キャラの内面が深掘りされていき、そして繋がることができたからこそお互いに影響しあうこともできる。
一輝の自殺を未幸が止めるところから始まった関係。何故、彼女は見ず知らずの彼を助けたのか? 彼女は何を抱えて、何を思っているのか。それを知った一輝が彼女のためにできることは一体何だろうか? 未来を知る彼女はその目で見た運命を変えられないと悲観している。しかしながらたとえ結末が決まっていたとしても、その結末に辿り着くまでを全力で幸せなものに変えることができるはずだ。そしてその結末を越えて尚、未来永劫誰かの心に残り続けるものを残すためには――、という具合に読み進めるとどんどんと展開が加速していく。
この最初こそヒロインから主人公に影響を与えていたものが、徐々に反転して主人公からヒロインのためにという構図の移り変わりはこういう作品ならではのボーイミーツガールを存分に感じられますし。
もちろん話の要所要所で良い味を出してくるのは歌ですよね。心の内を曝け出すような想いの乗せられた歌はやはり強いですよ。映画でちゃんと音もある媒体だったら絶対にめちゃくちゃ盛り上がるだろうなと、そう感じられる演出がいっぱいでしたね。
特に中盤から終盤のプロジェクト。ああいうのは個人的にかなり好きな展開で、ヒロインの幸せのために奔走する主人公っていうのは良いなって思いました。
それに未来視で見た運命までタイムリミットがないからこそ、それまで全力で幸せになろうとする姿はすごく良かったなと。告白シーンからの展開は個人的にかなり好き。
しかしてしかして。
本作で、個人的に最後まで上手く解釈できなかった要素が一つだけありまして。
それがヒロインの未来視なんですよね。
本作の物語として重要な役割を果たすのは歌に関連する三人の関係性なんですよね。ヒロインが抱えている問題も、それを解決する手法も、最後の結末も、ちゃんと地に足ついて現実的な道程を辿っているお話なんですよ。
しかしながら、未来視ってなんです?
冒頭から存在するこの設定、明らかに現実のソレではない完全にファンタジーの産物のようなものなんですけど……、どういう理屈で存在するものなんですか?
実を言えば、主人公も自殺をしようとするキッカケとして周囲のあらゆるものからノイズが聞こえてしまって生きているのが辛くなったみたいなものがあるのですが、この主人公が耳にするノイズっていうのは主人公自身の閉ざされた心を暗喩するものとしての意味を持った特殊設定として存在しているんですよ。
じゃあ、未来視は? ヒロインの背景を知って、彼女の想いを知ったとして、何故それが未来視なんてものになったのかが全く以て分からない。ヒロインが見た未来を当事者本人に教えると未来が確定してしまう、とかいう明らかに超常的すぎる理屈の説明できない力、一体どこからそのファンタジーが生まれてきたんですか?
なんかこの……、全体的に現実的な環境の中で異彩を放ってるんですよ、未来視っていう要素が。
まずそもそもに異種族異種間大好きなわたしは異能力者とかいう設定も大好きなんです。なにせ異能力者も広義の異種族として考えられますから。
そしてその異能力というのがただ単純に特別な力というわけではなく、そこに何らかの意味があってその能力の使用者はその人でなければならないという形を持ったときがいちばん強いと思っているんです。
そしてその特殊さを受け入れ乗り越え形成されていくその人自身の在り方というもの、こういうのを魅せてくれると最高だなって感じるんです。
本作は、たぶんですけど、異能力にちゃんと意味を持たせることができる作品だったと思うんですけど。
……、未来視というものに関して、それをどうにも感じることができなくて。
なんでここだけファンタジーが堂々と存在してるんだろう? なんか主人公とヒロインの出会いを導くためとか、未来が決定していて避けられないとか、そういう物語の都合を生み出すための装置なんじゃないのか? と、そんな風に思ってしまって。
どうにも最後まで消化不良感が否めないなと、そう感じてしまいました。 (同時にわたしが何か読み違いとか読み飛ばしているのではないかと不安になっています)
そういう意味では個人的な好みや趣向の色眼鏡を通して見ると、物足りなさを感じてハマりきれなかった作品ということになりますね。
最初に述べたように完成度が高いのは間違いないですし、ある程度先の展開が察せながらもどんどんと加速する展開に読み進める手が止まらなくなるリーダビリティがしっかりありましたし、映画映えしそうな盛り上がる場面をしっかり魅せる歌を上手く活かした展開は見事だったと思いますし。
思いますけど……、全体的にこれだけ良かったからこそ、その中で明らかに浮いている要素っていうのがどうしても目に付いてしまったのかなぁと。これさえなければ素直に良かった〜だけで感想終わりにできたのですが。
総評
ストーリー・・・★★★★ (8/10)
設定世界観・・・★★☆ (5/10)
キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10)
イラスト・・・★★★★ (8/10)
総合評価・・・★★★☆(7/10) これはアニメ映画で見たかった!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。
