【新作ラノベ感想part201】嫉妬探偵の蛇谷さん
今回の感想は2024年9月のガガガ文庫新作「嫉妬探偵の蛇谷さん」です。
※画像はAmazonリンク
あらすじ(BWより引用)
嫉妬が嘘をあぶりだす、学園青春探偵物語!
蛇谷さんは、おかしい。
「ああ、本当に――妬ましい」
蛇谷カンナ。園芸部所属。美しい花を憎み、雑草の惨めさを愛する女。黙っていれば怖ろしいほどの美人なのに、口を開けば怒涛の毒舌。好きなものより嫌いなもので自分を語りたい。
その行動原理は全て――「嫉妬」。
こんな残念すぎる先輩と、どうして一緒に行動する羽目になっちゃったんだろう?
答えはひとつ。嫉妬深くて攻撃的すぎるがために、他人の嘘や悪意を見抜いてしまう蛇谷さんのそばにいられるのが、どうしても「嘘」がつけなくて、本音がなんでも顔に出てしまう僕だけだから。
蛇谷さんが好きなのは、惨めな人、馬鹿な人、自分より下な人、嫌われ者、そして。犯人――悪者のいる謎。学校で起こる様々な「謎解き」に立ち向かう蛇谷さんの動機はもちろん嫉妬で、その目的は悪者を追い詰め、知的に拷問すること……なのだけれど。ぜんぜん尊敬もできないけれど。
それでも僕は、このおかしな先輩のことを――カッコいいと思ってしまうのだ。
青春は、綺麗ごとでは終われない。
嫉妬で嘘をあぶりだす、学園青春“探偵”物語。
感想
うーん、ちょっと個人的には・・・ごめんなさいですね。
この作品のどこを楽しめばいいのかイマイチ理解できなかった気持ちがあります。
本作は非常に端的に言えば、主人公とヒロインが身の周りで起こる事件を解決していくような学園ミステリ系の作品となります。
では、本作はその事件の謎を解き明かすのを楽しむ作品。
……そう思って読み進めるのですが、これがイマイチ楽しむことができませんでした。
本作の事件は主に校内の人間関係の問題をきっかけに生じてしまうものとなります。
それ自体は別におかしなことではないですし、思春期の少年少女たちであればそういうこともあるだろうという納得感があります。
しかしながら、そこから起こす事件の内容がどう見てもやりすぎというか、一線越えてない? みたいな者ばかりなんですよ。この学校の治安どうなってるの? と真剣に疑問に感じてしまうくらいです。
ですので、本作は学校内で起こる些細な謎を解決するような日常系のような面白さを期待していると、どうにも違うなと思わされます。
では、そんな凶悪事件を解決する推理パートを楽しめばいいのでは?
そう思い直しますが、それも上手くできませんでした。
何故なら本作の事件には、特別なトリックなんてものがありませんし、現実的に高校生が思いつく程度のものでしかないからです。すなわち読者が読んでいれば普通に事件の真相を察することができてしまうのですよ。
そのため、推理パートにおける驚きや爽快感というものをあまり感じることができませんでした。
ではでは、事件のきっかけが人間関係の問題というからには、その人間関係の部分で被害者や加害者の物語における変化を楽しむことができるのでは? ――ありません。そんなものはありませんでした。
本作は全部で4つの事件が描かれますが、いずれも事件前と事件後における人間関係の変化だったりを感じて楽しめるほどの描写はありません。基本的に1つ1つの事件において、当事者たちはその話の中だけの登場人物となります。あの事件の後、あの人は今こんな感じらしいよ、くらいの話はありますが。
ですので、本作は人間関係のいざこざを見せられるだけ見せられて、そのいざこざが解決してどうなることもなく、ただ問題の真相を明かすだけで終わってるんですよね。それがどうにも後味が悪く……、事件の内容の重さも相まって、楽しい気分になれるポイントがないのですよ。
これに関しては、主人公ヒロインサイドの問題もあったかと思います。
というのも、本作の事件で全部受動的に関わっているものになるんですよ。
いやいや、事件なんて突発的に起こるものなんだから、そりゃそうじゃないか? と思われるかもしれませんが、そういう意味ではありません。
普通の探偵モノであれば、探偵は事件を解決するための人であり、事件が起こればその解決のために自分がどうにかしなければならないという使命感や責任を持って臨むものでしょう。そういう意味で事件解決のために能動的に行動を起こしているのです。
しかしながら、本作はヒロインは園芸部所属の普通の女子高生であり、自分の周囲で起こった事件に対して自らに降りかかる火の粉を払うために事件の解決をしようとしているだけなのです。
そこには探偵モノが持つ使命感や責任のような強い意志を感じることがなく、物語が非常に受動的であるように感じてしまいます。すると、起こる事件からは物語を動かすための装置としての役割を強く感じてしまい、先ほども述べた事件そのものに関わる人たちの物語という印象が更に薄れてしまい、更にはそんな装置のためだけの事件を何故ここまでクソ治安の悪い学校でしか起こらないような内容にしてしまったのかという疑問も深まってきます。
と、ここまで事件やら推理やらそういう部分のどこを楽しめばいいのかが分からない話を延々としてきました。すると、そもそもそこを楽しもうとするのが間違いだったのではないかという思い始めます。
本作はタイトルにもあるように「蛇谷さん」のお話なんだ。そうだヒロインと主人公の関係性に着目すればいいじゃないか、とそう思いますね。
すると見えてきます、周囲の何事に対しても妬みを持ってしまう敵愾心の全方位に見せるヒロインと、そんな彼女が唯一安心できる裏表が一切無い男の子という構図が。更に、思ったことがすぐに顔に出てしまうから隠しごとができないということをコンプレックスに思っている主人公が、そんな自分だからこそ良いと言ってくれる女の子に出会うという構図を。
良いじゃないですか、こういうお互いの欠点を支え合える関係性はオタクの大好物ですよね。この部分をもっと押し出していけば、キャラ萌えの人が好きになれますよ。
この作品「あ、この作品は事件のアレコレが主な内容なのでそんな部分に割ける分量はありません。ごめんね」
……もうどうしろっていうんだ!
話がまた戻りますが、事件や推理が完全に足を引っ張ってるんですよ。
事件を通じて二人の関係がどんどんあっちいったりこっちいったり変わっていくような描写をするわけでもない、二人の関係性は二人の内面的な部分で完結してしまっている、事件とか関係なくそれが単純に一緒の時間を過ごす中で深まっているだけなのでは?。
そう思うと、じゃあなんでこの作品に推理モノみたいな要素があるんですか、としか言えなくなってくるんですって。
無駄に事件の内容が一線越えるレベルのやばいやつやっててシリアスな空気感があるだけで、主人公とヒロインの恋愛みたいな空気を出すノイズにしかなっていないのに、その事件そのものがアクセントとして機能するわけではないって……、もう前述の感想も含めてこの作品の大半が何のための内容だったのか、わたしにはもう分かりませんよ。
ですので、結論として。
この作品は一体何を楽しめば良かったんですか?
になるわけです。ごめんなさい。わたしには分かりませんでした。
総評
ストーリー・・・★ (2/10)
設定世界観・・・★ (2/10)
キャラの魅力・・・★★☆ (5/10)
イラスト・・・★★★ (6/10)
次巻への期待・・・☆ (1/10)
総合評価・・・★☆(3/10) わたしには楽しめませんでした。ごめんなさい。
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。
