今回の感想は2024年10月の電撃文庫新作「がらんどうイミテーションラヴァーズ」です。
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あらすじ(BWより引用)
みんな分厚い仮面を被って生きている。だけどそれって真っ黒なウソじゃん。
人間は何枚もの仮面を被って生きている。薄っぺらい笑顔の仮面を何枚も、何枚も被って。そして次第に本当の気持ちをなくしていく。そう気づいたときオレは決心したんだ。
他のやつらみたいに自分を偽るようなことはしないぞ、と。
高校生になり、オレは由衣に運命の恋をする。告白をするが玉砕。彼女は学校の人気者・幸太郎と付き合ってた。
ありのままの自分を否定され傷心のオレは同じく幸太郎に振られた彩音と出会う。
身なりはボサボサ、自己中心的な彩音を見て、オレたちは自らを変革する必要性を悟る。
運命の相手がオレたちじゃないなら、オレたちが運命の相手になればいい。
お互いの想い人になり、運命の相手を略奪する計画を開始する――。
感想
気持ちが悪い!!
……、いや、違いますよ。感想第一声からめちゃくちゃ暴言吐くじゃねぇかやべーなこいつとか思わないでください💦
褒め言葉です、本当です!
本作は青春ラブコメ作品。
あらすじとしては、好きな人に振られた主人公とヒロインが、それぞれ相手の想い人のような理想的な人間のように振る舞い合うことで心の傷を埋めようとすることから始まるお話でして。
個人的な印象を素直に言えば、子どもの持つ理想とそれに付随する愚かや滑稽さをこれ以上ないほどに見せてくれた作品。馬鹿げてて迷走してて汚い人の心を描き出すものだから、それは間違いなく「気持ちが悪い」ものなんですよ。不快感や嫌悪感を抱かずにはいられない。
しかしこれはおそらく作者が意図してそういう人物を描いているのではないかなと感じるもので、そうであればそういうキャラとして見るとそのキモさが本作の面白さなのだと思える、そういう作品です。
ですので、ここから先の感想でも「気持ちが悪い」とか「キモい」とかいう言葉が出たとして、決して本作を貶しているのではないのは念頭に置いていただけると幸いです。よろしくお願いします。
では、改めて本作の感想を1つづつ述べていきましょう。
まずは軽くお話しした冒頭部分をもう少し詳しく。
主人公の相馬くん、ヒロインの彩音は、それぞれが好きな人だった由衣と幸太郎に振られてしまう。その理由は、由衣と幸太郎が付き合っているから、というシンプルで納得するしかないもの。
けれど相馬も彩音も、彼女(彼)こそが自分の運命の相手だと信じて疑わない。だってありのままの自分を見てくれて、受け入れてくれたから。出会ってさほど時間も経ってなく、二人の口から出てくる思い出は薄っぺらいものばかり。それでも運命というものを盲目的に信じている。主人公に至っては好きな人が清廉潔白であると信じている理由として自らがストーカーをして常に見ていたから、なんて言うほどです。
この導入部分だけでも、相馬と彩音の理想に耽溺する様子がありありと描かれています。これがものすごくある種の現実味を持ったキャラという部分で、個人的には第一印象からこれは”おもしれーやつだ”と感じました。それと同時にこの手の相手に理想を押し付けて、自分の運命だとか言い出す人の現実でもいそうな解像度がすっごく気持ち悪いなと思いました。
さらに二人が好きな理由として挙げる「ありのままの自分を見てくれる」という部分からは、二人が自分を取り繕うことを忌避していることが分かり、その上で「お互いがお互いの理想的な人間のように振る舞えばいいんじゃないか?」という話に進んでいくとなれば、「どうしてそうなった?」と思わずにはいられないのも思春期の拗らせを強く感じてさせてきますよね。
そこからは、相馬と彩音がそれぞれ、お互いの思い人である幸太郎と由衣のように振る舞おうとするわけですが……、他人の空真似を必死に続ける人間を見て、どう思いますかと。
おそらく好感を抱く人はいないでしょう。
嫌悪感とまでは言いませんが、まぁ二人がとっている行動が本質的にズレすぎているのを感じて、それでもありのままの自分というものにこだわればこそ、こうして徐々に本末転倒な行動に走って行く少年少女というのは気味の悪さを感じずにはいられない。しかしその馬鹿馬鹿しさも迷走具合もこれはこれで青春なんだと思えばどこか温かい目で見守りたい空気でもあるのです。
更に言えば、こうして奇妙な関係とはいえ二人の協力という時間があれば、空真似ではない相馬と彩音としてのそれぞれの人間性というものが見えてくるものだからそこに自然と好意が生まれてきてしまう。……のだけど、変な空真似をしているせいで「自分は彼女(彼)のことが好きなのか?自分が好きな人を演じているのを見て好意を抱いているだけなのでは?」という疑問が付きまとってきて、めんどくせぇなこいつらと思ってきて。見る人が見ればこいつらは何がしたいんだと言いたくなるような問答を繰り返し続けるわけですよ。
そんなことばっかりして進んでいくものだから、この主人公とヒロイン、絶対に読者が好きになれるようなキャラではないんだと確信が持ててくる。その上で理想にこだわり大切にしたいものに迷う様子っていうのを丁寧に丁寧に描くのは、第三者の読者視点として見れば、これが果たしてどこまでいってくれるのかと面白いと感じてくるんですよね。
読者がキャラを好きになれる、ならば、読者はその物語を面白いと感じる。
というのは割と真実ではないかと思いますが。
読者がキャラを好きになれない、ならば、読者はその物語を面白いとは思えない。
というのは、真実ではないのだろうなと。
意図して描かれる愚かさや滑稽さというのは、それこそが作品の本質として魅力になるのだとしっかり感じさせてくれるのです。
ですので、この作品は序盤から恋愛というもので運命の人とか言い出すくらいに現実が見えていないちょっと頭のあれな感じの主人公とヒロインが持つ絶妙なキモさを終始感じさせながらも、それこそが少年少女の生の感情として清濁併せ呑むように描いたキャラクターなのだと認めて見守ることに面白さを見出す作品。
そう言えるのではないでしょうか、というのがわたしの感想になります。
そしてそれを一言で表そうとするとやっぱり「気持ちが悪い!(けどそれでいい!)」なんですよね。
また、個人的にちょっと着目したいのが。
運命の人。理想の相手。自分の本質。
そういったものに囚われ迷走する主人公とヒロインにある種のリアリティを感じさせる気持ち悪さを感じさせるのがこの作品の本質である一方で、この作品はそういう形を持ったキャラクターというフィクションを作っているという感覚も覚えてしまう。
なにせ主人公もヒロインもありのままにこだわるにもかかわらず、何故それにこだわるのかみたいな背景があまり描かれないですし、そうなってくるとそういうキャラとして読者は受け入れなければならず、彼らの発言に真に重さや深みを感じることがないという。
これもまた得体の知れない気持ち悪さを感じてしまい、それがある種のクセになってしまう面白さを持っていたのではないかなと思います。
特に、それを強く感じたのは彩音が理想的な人間として見ている幸太郎でしょうか。その本質は当然彼女の持つ理想からはかけ離れた人間で、彩音の盲目的な恋心を証明してくれる男なわけなんですけど。理想的な人間ではない(=彼もまた裏表や欲のある人間である)にも関わらず、幸太郎そのものはそういう設定で描かれるキャラクターでしかないというを感じてしまうのが、読者目線で見ると頭がバグるんですよ。
そういう部分で、物語として相馬や彩音が実感していく理想と現実の乖離以上の、リアリティとフィクションの隔たりを感じられたのが個人的には面白いと感じていました。
総評
ストーリー・・・★★☆ (5/10)
設定世界観・・・★★★ (6/10)
キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)
イラスト・・・★★★ (6/10)
次巻への期待・・・★★★ (6/10)
総合評価・・・★★★☆(7/10) ちゃんと描かれる気持ち悪さは面白いってはっきり分かるんだね
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。
