ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part207】城塞幼女シルヴィア ~未知のスキルと魔術を使って見捨てられた都市を繁栄させます~

 今回の感想は2024年10月のハガネ文庫新作「城塞幼女シルヴィア ~未知のスキルと魔術を使って見捨てられた都市を繁栄させます~」です。

城塞幼女シルヴィア 〜未知のスキルと魔術を使って見捨てられた都市を繁栄させます〜 (ハガネ文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 荒れ放題の城塞が、幼女の魔法でリノベーション!?

 シルヴィアは歴代魔獣討伐筆頭魔術騎士である公爵家の第一令嬢。

 だが授けられたスキル「魔物を倒すと魔力が溜まる」がハズレと見なされ、齢七歳にして領地の端にある廃墟化した城塞へ厄介払いされることに。

 しかしシルヴィアはそんな仕打ちもどこ吹く風と、マイペースに数匹の家畜と荷車で城塞に出発。

 そこに元騎士のエドワード、元服飾職人の少女ジーナが加わり城塞都市を目指すことになる。

 果たして彼らの旅路の果てに待つ城塞は、いかなる場所なのであろうか――。

 

 

感想

 面白かったですね~

 はみ出し者たちが集まって生まれる絆の温かみを感じる作品でした。




 本作はいわゆる追放系のような形で始まるお話です。

 とある貴族の娘であるシルヴィアは、7歳になり授けられたスキルが両親の望むものではなかったことから廃墟となった城塞へと放逐されてしまう。しかし、両親は知らなかったのだ、シルヴィアの持つスキルが彼女の持つ「生活魔術」と合わさることでとんでもない力を発揮することを。

 というまさしく追放系のような始まりですね。

 

 そして追放系となれば、セットになるのは「ざまぁ要素」ではないかと思います。

 しかし本作はそういう方向の作品ではありません。

 実際シルヴィアがいなくなったことで彼女が人知れず行っていた屋敷の管理が滞って両親が困っているといった描写はあったものの、基本的には追放した側のその後は描かれませんから。



 では、本作のメインは何なのか、と。

 それはズバリ追放された”者たち”になります。

 そう、者たち、です。

 

 この作品の中心となる人物は三人。

 一人はいうまでもなくシルヴィア。

 そして二人目は、騎士団から無実の罪によって追放されてやさぐれていた青年エドワード。

 三人目は事故で両親を失って、引き取られた先で肩身の狭い思いをしていて逃げ出した少女ジーナ。

 全員が全員寄る辺を失って、たまたま出会い、共に絆を育みながら城塞と麓の城下町の立て直しをしていくお話こそがこの作品のメインストーリーにあるのです。

 

 そしてこの作品で最も重要なのはやはりシルヴィアでしょう。

 彼女が得たスキルは一言で言えば「莫大な魔力を得られる」というもの。

 それに加えて彼女の持つ特別な生活魔術は「彼女が生活に必要と考えることを何でも実現する」というものになります。

 説明不要なレベルで万能といって差し支えのない力です。

 この手の万能な力というのは、それ単独では話を如何様にも広げられてしまうという点で扱いが難しいものだと思いますが、本作でこの万能の力を持っているシルヴィアは年端もいかない7歳の少女であるというのが肝になっていましたね。

 

 すなわち、何でもできる。生活だってしようと思えば一人でできてしまう。

 しかし、シルヴィアは親からの愛情を知らない。人と関わることも知らない。その万能の力が今は「自分のため」にしか使われないけれど、「他人のため」に使うとなったとき、7歳の彼女にはどういう風に力を振るったらそれが善で悪なのかを判別する力がない。

 

 最初に出会ったエドワードは、まさしくそんなシルヴィアのあまりの無垢さが分かってしまって。だからこそ最初は子どもが一人でふらふらしていることが気になっただけの出会いだったけれど、徐々に庇護欲のような感情を覚え、彼女がちゃんと幸せになれるような手助けをしたいと思うようになるわけです。

 ジーナも同じようにして、シルヴィアへの愛情を持つようになり。エドワードは戦う騎士として、ジーナは身の周りの世話をする従者として、シルヴィアを支えるという同じ志を持つ仲間としての信頼を築いていく。

 

 そんな風にしてこの作品は最初はただ人の輪からはぐれた三人だったものが、その境遇を知り、手を取り支え合っていくという方向性で物語が進んでいきます。

 そしてこの絆というのはシルヴィアと彼女が持つ万能の力が中心にあり、城塞を復興させるという過程を通じてこの万能の力をエドワードとジーナが正しく他者に使うことができるように大人としての愛情と善悪の判断を導いていくという部分で、ストーリーラインがきっちり整えられている+家族愛のような形を強く感じることもできる、そんな作品となっています。

 こういうお話はやはりシンプルに温かさを感じて、一読者として非常に心地よさを感じるものでした。




 それからキャラそれぞれを見ても、全体的に良い人しかいなかったのも良かったところです。

 シルヴィアが最初は親から愛されることを知らず、一人で生きていければ良いと無表情のままであったのに。終盤にはエドワードとジーナにすっかり懐いて、年相応の明るい元気な姿を見せたり、ちょっとしたワガママを言ったり、あるいは声を上げて泣いたりする様子はギャップも相まってとても可愛らしいものでしたし。

 エドワードはシルヴィアを守り、彼女が主となる城塞復興のために尽力するという物語的にはいちばん主人公のような立ち位置でぐんぐん引っ張っていく姿が非常に好感が持てるカッコいいものでしたし。

 ジーナが最初の追放のくだりからも分かる、仕事に対する真面目さと自分から逃げ出せるほど行動力がシルヴィアと出会ってからもしっかり感じられますし。エドワードはいちばんの大人としてシルヴィアには厳しくしなきゃいけないことも多々ある一方で、ジーナは一回り年上の姉のような立場で彼女を甘やかすという、三人の関係性のバランスを支える上でかなり重要なポジションで活躍してくれたのも良かったと思います。

 

 そしてシルヴィアの表情の変化という部分では、挿絵がかなり効果的に働いていたというのも注目してもらいたいポイントですね。絵柄も本作の温かみのある作風とマッチしていたように思いますし。総合して1冊のラノベとして見たときの満足度も高かったと思います。

 

総評

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻への期待・・・★★★☆ (7/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 出会った三人で築く家族の絆

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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