ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part218】僕はライトノベルの主人公

 今回の感想は2024年12月のスニーカー文庫新作「僕はライトノベルの主人公」ですね。

僕はライトノベルの主人公【電子特別版】 (角川スニーカー文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(Amazon紹介文より引用)

 この文章を読んでいるということは、貴方は「読者」ということね。

 はじめまして、私はメインヒロイン・高嶺千尋。この物語は私が主人公である手塚公人くんを超文芸部にスカウトするところからスタートするの。

 活動の目的は――この世界を物語みたいに楽しいものにするため。

 超高性能な電子生命体のミカコに、庶民的お嬢様の薔薇園先輩、中二病のイケメンのシドくん。

 登場人物もすばらしい逸材を揃えたわ。

 あとはこの物語が他でもない手塚くんの視点で描写されるだけ。

 そうしてはじめてこの「ライトノベル」が完成するはず。

 そう、これはメタフィクションでなによりラブコメライトノベル

 

感想

 面白いとか、わたし個人が好きかどうかとか。

 そういう感情を抜きにして、こういう作品こそラノベにあってほしい、そう思えるような作品でした。

 結論としては、わたしは好きですし面白いと思いましたが。それ以上にこういうアイデアで突き抜けるような作品、何でもありでやってみようという作品、そういうものがきちんと在ることができるのがラノベであってほしいという気持ちですね。




 さて、そんな本作のあらすじですが。

 端的に言えば、登場人物たちが「自らを物語の登場人物である」と理解する文字通りのメタフィクションな物語世界の完結を目指す物語、でしょうか

 

 なんのこっちゃ?

 と言いたくもなるかもしれませんが、こればっかりは読んだ方が早いのではないかと若干あらすじ説明放棄気味になっていたりします。

 このメタフィクション性を担保するための小道具だったり、登場人物の望みを具現化させるような異能力設定(本作がスニーカー文庫出版であるからこそ否応なしに某大御所作品を想起してしまう要素として、これもまた作品世界を飛び越えたワンアクセントとして良かった点かもしれない)だったりがあったりするために、非常に闇鍋感が強い作品でもありますので、1つ1つ説明してたらキリがありません。

 そのため、作品概要紹介は早々に放棄して本作の感想を述べていきます。

 



 本作最大の売りはそのメタフィクション構造にあるでしょう。

 登場人物たちが物語の登場人物である、と理解をする。これがいわゆる「わたしたち読者が目にしている本作」の中に、「本作と全く同じ「僕はライトノベルの主人公」という小説(現在進行形で執筆途中のモノ)」が存在していて、登場人物たちはこの2つを包括してこの作品全体の登場人物であると理解していて、読者と同じように読み進めながら作品世界を知っていくというような多層構造じみた形をとっているので正直言語化の整理が難しくあります。

 

 しかしながら、そうであればこそ。

 本作は主人公たちが、書きかけの物語の登場人物という自覚を持つが故の言動や、視点の切り替わりを問答無用の設定ギミックとして上手く機能させることが可能になっていて、話の展開に一捻りを加えることに成功していたと思いますし。

 同時に、作者自身が作品を書いている事実と、それに伴う創作の苦悩、あるいは1作品としてのご都合主義的な側面(例えば作品として完成されている以上、ちゃんと完結はするということを読者自身が自然と認識していることなど)、なんかをまるっとそのまま作品世界において言及することが可能であり、これがより一層本作のメタフィクションとしての多層構造を深めていたのではないかと思います。こういう作品に関わっている作者と読者の心理を作品にも組み込もうとする辺りは、本作ならではの味わいを存分に感じてとても面白かったと感じますね。

 特に、わたし自身が常日頃から「作品はご都合主義があっても、ネタバレされてても、その過程を楽しめれば十分」とか「残りのページ数的には、こういう展開で進むのだろう」と作品が完成していることを前提に考えながら読むような人間だからこそ、そういう考えそのものを作品に取り込むという点で非常に親近感と共感を覚えて作品に入り込みやすかったのもあるでしょう。

 それから本作において個人的に最も気に入っているのは「オチがあらかた予想できても、結末のネタバレをされても、その過程を楽しめる物語はある」という言及でしょうか。アイデアや結末が決まっていてそこまでの道のりを如何に進むのかを描こうとする登場人物たち、というこの作品こそがそれを象徴化したと言っても過言ではないわけですよ。こういう二重パンチのようにして描いてくる作品の魅力はわたしの大好物。




 とはいえ、本作の全部が手放しで絶賛というわけにはいかないでしょう。

 本作最大の魅力がメタフィクション性。その点で、中途半端なメタフィクションに収まることなく1冊を通じて貫徹していたのは非常に良かったと思う一方で。

 本作はその作品の構成や設定にパラメーターを極振りした分だけ、純粋なキャラと物語の面白さで楽しむ青春ラブコメからはかけ離れてしまったと思います。

 こればっかりは、全く以て仕方のない部分であることは重々承知ではありますが、こういうメタフィクションを楽しむわたしもいると同時に、基本的にラノベはキャラで楽しみたいと考えるわたしも存在する以上は、その二種の評価軸では評価が二極化してしまいしてね。

 

 まぁ、端的に言えば、キャラの魅力というものは全く感じない!これじゃあ結局、物語の構造を生み出すためのキャラとして存在しているように見えるじゃないか!作中で登場人物の自主性とか語ってたのにこれかよ! ……と言いたい気持ちがあるということですね。



 ですので、あくまでわたしの感想としては。

 こういう形の物語があってほしい、そう思えるようなメタフィクションで作られた意欲作として好きでしたし面白かったと思いますよ、という結論になります。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★ (6/10)  

 設定世界観・・・★★★★★ (10/10) 

 キャラの魅力・・・★ (2/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)  

 次巻への期待・・・★★★★☆ (9/10) 

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 作中でもメタな言及で言ってましたが、2巻出る場合はどういうお話にするのでしょうか? わたし、気になります。 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp