【新作ラノベ感想part223】妹は呪われし人形姫
今回の感想は2024年12月のMF文庫J新作「妹は呪われし人形姫」です。
※画像はAmazonリンク
あらすじ(BWより引用)
「お前の体は俺が元に戻してやる。絶対に」
人形には悪魔や呪いが潜むと忌避される世界。人形と意思疎通できる少年ジンは、両親を殺されてから人間に対し壁を作っていた。「もう、兄さん、人形だけじゃなく私にも構ってよ」周囲から気味悪がられる中、共に暮らす妹アインだけはジンの味方だった。ある日、ジンは人形に封じられていた悪魔と契約し『両親の蘇生』を試みる。家族が戻れば妹に迷惑をかけずにすむ──しかし願いは叶わず、その上悪魔は代償としてアインの体を半分人形に変えて逃げ去ってしまう。「意外に悪くないかも。喋るの久々だね」「悪魔と話して無事って、兄さん凄くない?」アインの体を取り戻すため、ジンは悪魔を追うため立ちあがる。
感想
いやぁ、ここまでオチが想像できる作品も珍しいですね。
だって序盤の悪魔との契約シーンだけで、オチが分かりますもの。
もはやそれ以外に考えられないでしょというレベルで分かりやすいの。
というわけですので、今回はオチを察しながら読んでいたわたしの感想となるので、ネタバレの配慮とかそういうものは一切ありません。よろしくお願いします。
本作は悪魔が存在する世界で、そんな悪魔を封じるものとして人形が使われるために人々からは穢らわしいものとして忌避されている。そんな中、人間によって両親を殺されてしまった事件によって心を閉ざし、人形のみと会話をするようになってしまった主人公ジンは、悪魔を封じる呪いの人形を見つける。そして悪魔の甘言に惑わされ、両親の蘇生を願ってしまったことで、妹アインの体が人形にされてしまった。妹を治して貰うために、逃げた悪魔をを追うことになるのだった。
と、そういうお話なわけですね。
このあらすじだけではオチの想像も付かないでしょうけど。
実際に読みますと序盤から妹のアインは兄であるジンと何度も会話しようと試みるもののなかなか相手にしてもらえずに悩んでいる様子が描かれ、更には人形になってから兄と普通に会話できるようになったことに対してむしろそれが良かったことのように言うという、公式のあらすじにあるようなセリフを口にするわけですよ。
人形としか話をしない兄。そんな兄にしきりに話しかけてはスルーされる妹。そんな妹はブラコンです。……これだけで、分かるじゃないですか。
これ絶対、妹がお兄ちゃんと会話したいから自分の体を人形に変えてもらっただろ、って。
その疑念を持って契約シーンを読めば。
兄は契約中突然頭を殴られたような痛みが襲って意識を失ってしまい、その間に契約は済んでいる。
人形に封じられた悪魔は必ず契約を履行しないと、自分の封印が解けないため契約内容に関して偽ることはない。
結果として残っているのが、主人公の願った両親の蘇生が果たされてなく、目に見える変化は妹の体だけ。
……完全に状況証拠が揃っちゃってるじゃないですかと。
こんな確信に近いような状態で読み進めると、
契約の真実というオチを引っ張ることが、それはもう茶番にしか見えないわけでして。
そしてそれ以上に驚くべきは、悪魔との契約をしてしまったために、悪魔が解放されて周囲で次々とその悪魔による事件が頻発してしまうという大事になってしまったことに対して、兄であるジンの口からは自分が起こしてしまった事件と思っているだけに「これは自分自身で解決しなきゃいけないんだ」という言葉が出るのに、
真にこの事態を引き起こした妹のアインからはそんな発言が一切出ないんですよね。
危機感を覚えている様子や、負い目を感じているような素振りもありません。
そして最終的にオチの部分で、自分が契約したことを明かすときにも「人形になったのに、お兄ちゃんは全然自分のことを見てくれない!」という言葉が真っ先に出てきて、何故それを明かせなかったのかという理由が「お兄ちゃんとお話ししたくて人形になったなんて知られたら恥ずかしい」ですからね。
……、なるほどね。
つまりこのアインという女の子の中では、
街とか周囲の人間がどうなろうとも、お兄ちゃんが自分を見てくれればそれでいい。
という価値観が根付いているということですね。
自ら体を人形にしてしまうというファンキーな行動を取るような女の子かと思ったら、その内面はもっとクレイジーなブラコンだったわけだ。
悪魔より本当に恐ろしいのは人間である。人間が起こしてしまう事件の方がよっぽど凶悪で、それこそジンが塞ぎ込んでしまうような凶行に至るものだっている。
作中の序盤で言っていたことが、その事件の被害者たる主人公ジンのいちばん側にいる存在に宿って体現しているとか誰が想像できたでしょうか。
悪魔なんておどろおどろしいテーマを扱ってるだけあって、半分ホラーが入ってますよこれ。完全に妹が最初から人の心なくなってるというか、両親を失って兄に依存した結果かもしれないけれど、悪魔よりよっぽど怖いって。
この子、今後もお兄ちゃんに関しての自分の欲望を叶えるためならいくらでも自分の身を捧げるだろうし、その上で周囲に被害があっても全く気にしないだろうことが容易に想像できてしまう。更に言えば、契約時に自分の契約をするために兄の後頭部を殴りつけて意識を失わせるなんて所業をしておきながら、力加減は調整したで済ませる以上はもう手のつけようがない。たぶん1個選択肢を間違えたらその大好きなお兄ちゃんにすら手を出し始めますよ。そしてそんなすぐ側にある狂気に全く気づかないままに、妹の言葉を額面通りに受け取って妹の好意だけを理解してしまう兄だから、ストッパーはどこにもありませんってか。恐ろしすぎる。
そりゃあ契約する悪魔サイドからも愉快な兄妹って評するわけですよ。
そんな内面完全にドス黒いレベルで周囲に厄災をまき散らしながらも、ずっとお兄ちゃんが自分を見てほしいとだけ想い続ける妹が、主人公視点で見れば大切な妹で健気な可愛らしい女の子という描写になっているこれは兄妹愛の皮をかぶった新感覚ホラーっぽい雰囲気を味わいたい方は読んでみてはいかがでしょうか。
わたしはこういうクレイジーな妹キャラ大好きなので、続きが出るならブラコン拗らせて更にぶっ飛んだ行動するようなところが見たいなぁと思ってます。
MF文庫Jはたまにこの手の、イラストは可愛くて萌えだけを感じさせるのに、内容的にヤバいのを出してきますよね。伝説の結末を迎えた某スーパーヤンデレ大戦作品ばりにここから更に転がり落ちるような狂気を見せてくれたら傑作になりますよ。
……まぁ、ここまでお話した本作の狂気が全部意識的に書いているものとは正直思っていないのですけども。意図せずそう見えるものができてしまった感が強いですよ、ええ……。
総評
ストーリー・・・★★☆ (5/10)
設定世界観・・・★★★ (6/10)
キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)
イラスト・・・★★★☆ (7/10)
次巻への期待・・・★★★★ (6/10)
総合評価・・・★★☆(5/10) もしもこの妹の純粋悪のような言動が意図して描かれており、2巻以降どんどん加速するのであればそのときは絶賛します。
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。
