ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part228】転生程度で胸の穴は埋まらない

 今回の感想は2025年1月の電撃文庫新作「転生程度で胸の穴は埋まらない」です。

転生程度で胸の穴は埋まらない (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

 

あらすじ(BWより引用

 だから、“孤独”を埋めるのは君との『恋』の物語

 人の渇望(ねがい)が固有の魔法になる異世界。固有魔法を扱い邪神から人類を守護する超越者〈アデプト〉たちには、あらゆる権利が与えられる。

 転生したコノエは永い修行の末、遂にその資格を得たのだった。

 ――惚れ薬〈きんしやくぶつ〉を使うために。

「……惚れ薬があれば、僕でも、誰かの一番になれるんだろうか。」

 前世のトラウマから、人を信じられず生きてきたコノエ。そのせいで固有魔法が発現せず、転生しても孤独に苦しんでいた。そんな彼に助けを求めてきたのは、死病に侵された金色の少女で――。

「私、コノエ様の為なら何でもさせて頂きますので!」

 これは、渇望〈ねがい〉を持たない白い孤独が、黄金の愛と出会う物語。

 

 

感想

 とても良かったです、こういうのは大好き!

 命には命で、心には心で、お互いに救われたことで想い合える関係性って素敵だと思うのです。



 本作は異世界ファンタジー作品。

 幼い頃に両親に捨てられ、誰からも愛されず、周囲と上手く馴染むこともできない孤独を抱えたままに死んでしまった主人公が転生した世界でも独りでただ研鑽だけを続けた果てに生命魔法の超越者と呼ばれる、人類を守護する存在にまで上り詰めることから始まるお話です。

 

 主人公コノエの最初の根源にあるのは孤独。

 それが一度の死と共に深く深く刻まれているからこそ、二度目の人生であっても誰かと関わることを恐れて怯えて結局上手くできない。純粋に対人関係の経験値が足りなすぎて、相手の気持ちを察したり慮ったりすることも難しかっただろうし、それができないことに悩み続けても解決しないのは袋小路にハマってて辛いだろうなと……、なかなか主人公の境遇にも思うことがあるような感じ。

 

 そんな彼の心を解くのは難しいだろうなと、そう思っていたけれど。

 本作はこれを実に上手くやっていたなと感じたんですよね。

 

 コノエが超越者となって、最初に出会ったのは救いを求める人々の姿。

 そしてその中でも今にも死にそうになっている死病に犯されていたエルフの少女、テルネリカ。彼女の願いを聞き、彼女の生まれ育った滅びかけの街を救うために魔物と戦い、疲弊した人を癒やし、そして街の復興を手助けするようになっていくのですけど。

 

 この最初が、依頼であった、損得勘定で始まった、というものだからこそ良かったんだろうなと。

 最初から好意とか感情で始まった関係だったらおそらくコノエには受け入れるだけのキャパシティがなかった。

 でも危機的な状況を解決するという目的の中だったからこそ、テルネリカの方はコノエがそういう人物であることを理解して、そうであるからこそ自らの恩を返すための好意という感情をどうやって向けるのが良いか適切に選択することができた。そしてそうであればこそ共に過ごす時間の中で徐々にコノエ自身がテルネリカが自分に向けてくる気持ちについて考えて悩んで知ろうとする意識が生まれて、孤独な自分が欲しかったものの本質を理解していくことができた。

 もちろんテルネリカが生まれ育った街の人々が見せる姿、コノエが生まれ育った冷たい環境とは正反対の温かい環境もコノエに大きな影響を与えていたでしょうし、そういう意味で本作は1冊かけて孤独を解くためのテルネリカの静かな戦いが、彼女の視点というものをほとんど描かないままに(むしろ描かなかったからこそ)、実に丁寧に魅せることができていたのではないかと感じるところでしたね。

 

 そして、コノエの事情はこうもなかなか難解なものでありましたが。

 テルネリカ側の感情は非常に分かりやすいもの。

 命を救われた。その恩を返す。彼のために自らの芽生えた好意の全てを与える。そして救われた命の恩を返すために自らの命を捧げることも厭わない。

 分かりやすいからこそ、彼女の描写を最低限に、しかし最大限のテルネリカの献身がコノエに伝わる構図ができていたのでしょう。

 

 本作の魅力はまさしくこの双方向の救い。

 そして命には命を、心には心で返すという。

 誰の目から見ても正しく等価である重みを感じさせる恩の返し方。

 それを通じて交わす芽生え始めの愛というものは、本作の滅び欠けても大切な人を守るために戦い続け強く咲き誇ろうとするテルネリカの街の人たちが持つ心の強さを象徴するようでとても美しかったと思いますね。

 

 更にこの作品に関して言えば。

 深い渇望が固有魔法として現れる世界観ということで。

 それは人も魔物も変わらない普遍の事実であることをちゃんと描いていたのも良かったですよね。コノエだって決して例外ではないのだと、世界でたった独りと感じるほどの疎外感と孤独を抱えた少年にだって、同じ世界が広がっているのだとしっかり示してくれる作品世界というのはとても優しいし温かい。



 あと、個人的に好きだったのは。

 最後のテルネリカのキャラ紹介で。

 墓は隣がいい。

 というこのたった7文字の言葉。長寿命が特徴のエルフだけど、そこから更に一歩先を感じさせるだけの愛の誓いという感じがして個人的な好みにとても強く刺さりました。こういうシンプルな一文で味を出してくるのとても良いですよね。



 そんなわけで、まとめますと。

 心と命と。お互いに救い合って芽生えた想いで繋がる主人公ヒロインという双方向の構図を非常に丁寧に描いていたファンタジー作品です。好きな人は絶対好きやろというもので、わたしは大好物でとても満足しています。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★☆ (7/10)  

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10) 

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★★ (7/10)  

 次巻への期待・・・★★★★☆ (9/10) 

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) とても良い異世界ファンタジー恋愛でした、満足!

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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