【新作ラノベ感想part230】プロジェクト・ニル 灰に呑まれた世界の終わり、或いは少女を救う物語
今回の感想は2025年1月のGA文庫新作「プロジェクト・ニル 灰に呑まれた世界の終わり、或いは少女を救う物語」です。
※画像はAmazonリンク
あらすじ(BWより引用)
GA文庫大賞《銀賞》受賞! 壮大なスケールで描かれるSF風ファンタジー!! ――それは、世界を存続させるための計画。 少女は、失敗作だった。
三百年前、世界は灰に呑まれた。人類に残された土地はわずか一割。徐々に滅亡へと向かう中、それでも人々は平穏に暮らしていた。その平穏が、少女たちの犠牲の上に成り立っていることから目を背けながら。
第六都市に住む技師・マガミはある日、墜落しかけていた謎の飛行艇を助ける。そこで出会った少女・ニルと共に、成り行きで飛行艇に乗って働くことになるのだが、彼女が世界を支える古代技術“アマデウス機構”を動かしている存在だと知る。
ニルと過ごすうち、戦い続けている彼女が抱く秘密に気付き――。
「マガミ。君がいてくれれば大丈夫」
これは、終わる世界に抗う少女を救う物語。
感想
うん、面白かったです。
面白かったですよ、それは間違いない。
……ないんですけど、何でしょう。この絶妙に感情がちゃんと付いてきていない感覚は。
「あ、これはこういう面白さのある作品なんだな」が理解できたところで終わってる、といいますか。
ま、ともあれ色々書きだしていきましょう。
本作はSF風ファンタジー作品。
そして王道なボーイミーツガールを強く感じさせる作品でもあります。
あらすじとしては、””滅び欠けの僅かな土地で人々が暮らし、アマデウス機構と呼ばれる古代技術を扱うための特殊な存在アニマと呼ばれる子どもたちが存在するような世界。しがない一技師であるマガミが墜落しかけていた飛行艇を助け、そこに搭乗していたアニマの少女ニルと出会うことから始まるお話””、といった感じですね。
まず個人的な率直な印象が、主人公マガミがとにかく大人だなと。
マガミはニルを助けたことをきっかけにして、半ば無理矢理連れられて彼女たちが駆る飛行艇に搭乗することになるのですけど。
そこには当然ニル側には理由があるのですけど、それが序盤は全然語られない。というのもこれに関してはニルとマガミの過去に大きく関わることで、ひいてはアニマという存在を正しく理解してからでないと呑み込めないだろう話でもあるから。
だから、マガミからしたら本当に何も分からないままニルに振り回されているという状況だっただろうにそこに不満をぶつけたりということがほとんどない。一方で、ニルが自身よりもスペックの低いニル以外のアニマをぞんざいに扱うような態度には明確な怒りを示し、ニルに説教をするような姿が見られ、更にはニル自身の境遇や秘密を知れば何も知らないままに説教みたいなことをして悪かったと言うこともできます。
こういう分かりやすく誰もが共感する「アニマと言えど同じ人間じゃないのか!」というような点で怒りを見せる主人公で、何も知らないままに物事に巻き込まれていくようなのって結構少年漫画の主人公にありがちかなと思うところですけど。
しかし本作主人公のマガミって、どうにも物わかりが良いというか、状況の呑み込みが早いし割と冷静に対応するしで、そういう少年漫画的主人公よりかはもう少し成熟している二十歳前後のイメージが強かったんですよね。
そしてそういう全体的に大人な対応をする主人公が常にいるからか、
読者的にある程度読んでいればすぐに察することもできるような事情すら全然語らないことに対して「言いづらいことなのは分かるけどもう少しちゃんと説明しようよ」という気持ちを持ちづらいんですよね。
ニルの横暴な態度に対しても同様。
読んでいてあまりに沸点の低いヒロインは決して好感を持てるキャラではないのですが、主人公であるマガミが「彼女だって色々抱えてるものがあるのだろう」と思ってしまえばもう傍から見てる読者にそれ以上の不満は言えないわけですよ。
こういう感じで、ある種本作は読んでいる側としての感情がコントロールされる側面があったように感じているのです。それは序盤の設定を開示しきる前には効果的に働いていたのかもしれないですけど、
逆に、それこそが終盤でちょっと足を引っ張っていたのではないかと。
マガミにも大きく関わるニルの秘密が明かされて、それはマガミにとっても衝撃的な事実で混乱してもおかしくないはずなんですけど、やっぱりマガミは適応するのが早いんですよ。そして知ってしまったらニルがずっと1人でこの事実を抱えていたんだなという苦しみの共感が真っ先に来るようなお人好しで。
これは当然読者としても同じように思って共感をしてクライマックスとして徐々にボーイミーツガール味が増していくような展開として楽しむべきなのでしょうけど、どういうわけか「この主人公のマガミがそう思うならそう思うんだろう」という理解が先に来てしまってそこで終わってしまうんですよ。淡々としすぎていると言えばいいのでしょうか。
あとは序盤のニルの横暴な態度が、色々抱えていて吐き出せない鬱憤があったことも理解するし。逆に全部明かされたら憑き物が落ちたように真っ直ぐな子になるのも理解できるけど。そのどっちも理解はできるけど、1冊読んでいる間のメインヒロインの180度反転と思うとなんかちょっと段階が飛んだなと感じる部分が多々あったりもしたんですよね。
その結果として。
わたし個人の気持ちとして、面白かったはずなんだけど、素直に感情として面白いと思ったのかと自問すると首を傾げてしまうという奇妙な状況になってしまっているというわけです。
主人公とメインヒロインであるマガミとニルも、それ自身を魅力的なキャラと思う以前にそう言うキャラなんだろうなと呑み込むところで精一杯な感じになってしまいます。個人的にはこの手の特殊な技術を扱うために人工的に改造されてたり生み出されたりする存在みたいなものは好きなはずなんですけどね……、イマイチ乗り切れませんでした。
またそういう主人公ヒロインへのフォーカスを外して。
世界観とか飛行艇による空での戦いとかに着目すると。
まず、世界観に関してはこういう滅び欠けた世界を扱う作品らしく結構謎な部分は多いですし。本作の鍵の1つになるだろう古代技術アマデウス機構やそれを扱うアニマという存在も人類側が深く理解できているわけではないようで、だからこそ特殊な飛行艇を使って灰に覆われた世界を調べているような状況っぽいので、今後色々謎が明かされていくとまた新しい面白さが出てくるのかなと。
飛行艇による空での戦いは、主にクジラと呼ばれる灰の中に存在して同様のアマデウス機構で動くような相手と戦うような、飛行艇VS飛行艇のような形になるのですが、これは中々迫力があって面白かったと思います。わたしの中で空戦ファンタジーは一人乗りの戦闘機VS戦闘機みたいなイメージが強かったので、ときには船体同士をぶつけあうような大型の戦いというのは新鮮な気持ちで読むことができました。
そしてそんな大型の飛行艇を扱うには、主人公ヒロイン以外の多くの人員が必要となるわけで。本作は結構登場人物が多いのですが、ニル含めたアニマの少女たちを家族のように思えるような温かな仲間の輪を形成している雰囲気は良かったなと。それ故の戦闘シーンでそれぞれ持ち場で果たせることを全力で果たすような気概にはかなりグッときますね。
あと挿絵に関しても白黒イラストでも情報量がしっかりあるような濃淡のあるもので作品の世界観にもよくマッチしていたかと。
という感じで全体的な要素要素は好評価としたいものが多かったように思います。
ただやっぱり、物語全体として楽しめたかどうか、個人的に好きになれたかどうかは主人公メインヒロインに依存する部分が多いので総評としては先述の通りかなってところで収まってしまいますね。
総評
ストーリー・・・★★★ (6/10)
設定世界観・・・★★★★ (8/10)
キャラの魅力・・・★★☆ (5/10)
イラスト・・・★★★★ (8/10)
次巻への期待・・・★★★☆ (7/10)
総合評価・・・★★★☆(7/10) 面白かったのは間違いない、と思う……
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。
