ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part232】主人公の幼馴染が、脇役の俺にグイグイくる

 今回の感想は2025年1月の電撃文庫新作「主人公の幼馴染が、脇役の俺にグイグイくる」です。

 

※今回は結構ネタバレアリの感想になります。

 

主人公の幼馴染が、脇役の俺にグイグイくる (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

 

あらすじ(BWより引用

 お前が好きなのは俺じゃないだろ!? 駱駝新作、脇役ラブコメ復讐譚が開幕


 うちの高校にはラブコメ主人公のような奴がいる。パッとしないのに、なぜだか美少女からモテまくるとんでもない男だ。

 そんな男のラブコメに、俺は殺された。やってもいない罪を裁かれ、全てを失い、自ら命を断ったんだ。――だけど、奇跡が起きた。気がつけば俺は二年前の、高校一年の入学式の朝に戻っていた。

 奇跡的に得られた二度目の人生、今度こそラブコメには――。

「石井和希君、愛しています。結婚しましょう」

 なんで!? 主人公の幼馴染かつド本命の女、氷高命が俺に告白を!!?? クラスでは『氷の女帝』なのに、なぜか俺にだけはグイグイきて……!

 ちょっと待て、お前が好きなのは俺じゃないだろ!?

 

 

感想

 序盤がめちゃくちゃとっつきにくいことを除けば面白かった……、というのが素直な感想ですね。

 

 本作のあらすじとしては、

 女の子たちからモテるラブコメ主人公のようなクラスメイト・天田照人のラブコメに巻き込まれて死んでしまったモブの石井和希が、高校入学時にタイムリープして、二度目の人生は天田に関わらずに生きようとしたら、

 何故かそいつの幼馴染である女の子・氷高命が自分と積極的に関わってくる!?

 

 みたいな感じでして、

 これはとりあえず忘れていいものです。

 

 実際の内容としては、

 過去のとある出来事から、主人公の石井和希に好意を寄せる氷高命だけれど、幼馴染の天田照人に粘着されていて、さらに天田はそんな氷高に好意を向けられる石井を憎み、周囲の友人や女の子を言葉巧みに動かして追い詰めようとしていた、というお話でした。

 そして二度目の人生ではその真実に気づいた主人公が、逆にやり返してる復讐モノのテイストが強いものでした。




 ……、とりあえず言いますと。

 

 序盤の導入から、物語の全貌が見えてくるまでが冗長すぎます。

 

 いや、別に最初から全部設定を説明しろって言いたいわけではないんですよ。

 最初から謎(何故か自分に好意を持ってくれるヒロインがいることや、その影響によって一度目の人生とは違う出来事がたくさん起こる)を伏線として、実はこういう風に繋がっていたんだ!と明かすことでグッと物語に引き込まれる。

 

 そういうタイプの作品であるだろうことは分かります。ですので、それそのものを否定するつもりはないんですよ。




 わたしが言いたいのは、その謎を提示するパートで語られる内容があまりに要領を得ないということ。さらに、そのせいでそもそも序盤にとっつきにくさを感じてしまうこと。

 

 本作のいちばん気になるポイントは、

 やはり「ラブコメによって殺された。」というところでしょう。

 

 それをざっくり説明すると、

 主人公が周囲の恋愛の問題に巻き込まれて、その中の女のひとりがが好きな男の気を引くために可哀想な女アピールをするための冤罪をかけられ、社会的に殺され、最後には自殺した。

 という話らしいのですが。

 

 えーっと、うん? ……ラブコメに殺された?

 結論だけ見たら、普通に性格の悪い女に騙されただけの話なのでは?

 少なくとも、わたしの知るラブコメというものには、ヒロインが好きな男の気を引くためだけに周囲の人を自殺まで追い込む、みたいなものは存在しないんですよね。それは愛憎劇とかそういう部類ではないでしょうか。

 だから、ラブコメに殺されたという言葉がまずピンとこないんですよ。

 

 ちょっと言葉の揚げ足取りみたいになって申し訳ないのですけど。

 これに関してわたしが問題だと思っていることは、いらぬ齟齬が生じることなんです。

 

 本作を初見で見ている人は、

 あらすじから復讐モノっぽい? というのが分かった上で、

 タイトルとかメタ的な文章によって、

「あ、この作品はよくあるラブコメ展開に対するアンチテーゼ的な要素を持つんだな」

 と思ってしまうだろう構成になっているのに。

 

 実際の話の流れとしては、序盤は主人公が復讐とか考えてなくて、将来的に自分にふりかかる火の粉を払うための行動を取るだけですし。

 さらに、過去の事件の詳細が語られていくと、

「そんなラブコメは知らないんだけど?」

「単純に悪役(悪い女)が悪役やってるだけじゃないの?」

「てか、復讐いつ始まるの? 主人公逃げてるだけじゃん」

 としか思えない内容がどんどん出てくる。

 

 この絶妙な認識の齟齬が大問題。

 序盤から謎を提示して、徐々にそれに迫る作品において重要なのは、

 読者がその謎に対して「この真相は一体どうなってるんだろう?」という期待を持たせることじゃないでしょうか。

 間違っても「これは一体何を言っているんだ?」「そもそも何をする作品なんだ?」という謎そのものに対する疑問を持つことじゃないと、わたしは思うのですが。




 そして、実際に真相が明かされてみれば。

 

 ただ恋愛事の嫉妬に狂った男と、それを好きになった女が、自分の欲望を叶えるために悪事を行っているという話だったわけで、

 

「断片的に語られる内容がどうもラブコメっぽくないよなぁ。ただの悪事の匂いがする話じゃね?」

 という認識が何も間違ってなかったんですよ。

 

 ただでさえ、序盤で内容がどうなるのか分からない上に、ラブコメに殺されたとかいう初期設定の意味が分からない状態で、

 本来は読者にとって「予想外の真実が!」ってなる部分が、予想外にならない展開とはこれ如何に……。

 

 これなら、最初から1周目の人生で「実は天田は見た目は良いやつっぽいのに、実は自分を追い詰めた黒幕である」ことに気づいていて、それに対する復讐を決意するという話で何も問題なかったのでは?

 と思ってしまうのですよ。

 そしてその上で、実は天田の幼馴染だった氷高は自分のことが好きだったとか、1周目では気づいていなかった細部の人間関係が見えてきて、思ってた以上に話は複雑だったんだって、そういう見せ方もできるじゃないですか。

 あるいは、天田が黒幕であることには気づかずとも、自分を直接的に追い詰めたきっかけの女子に対しては復讐してやるぞ、と決意したところから始めても同じようにできますよね。

 

 わざわざ序盤で、元凶たちから逃げるという遠回りをしながら、読者を混乱させるような情報を小出しにして、一風変わった復讐モノ?なのか?と思わせぶりして、結局一風変わってもいない復讐モノに着地をする。

 そんな長ったらしい話をする意味がわたしにはよく分かりませんでした。

 

 

 そして個人的にこういう作品で言いたいのですが。

 実は悪いと思われていた奴は何も悪くなかった、っていう話は良いけど。

 実は良い奴だと思われていたのは悪い奴だった、みたいな話はやめませんか?

 

 魔王と勇者とかも、しかりで。

 魔王が実は良いやつだったって話は、意外性を生み出すものになりますが。

 それをやるために勇者を悪にする必要ってありますか?

 勇者には勇者の正義があって、でも魔王には魔王の正義があった。それだけでいい話なのに、何故か勇者は悪いことをしている、みたいなサゲをする作品が多々ありますけど。

 これ、本当に嫌いなんですよ。

 だって勇者を悪役にしたら、それはもう勇者でも何でもなく、ただ悪役を倒すだけの話になるわけで、勇者(正義)が魔王(悪)を倒すという元の話と構図的には一切変化がないわけですよ。




 本作でも同じような気持ちがあって。

 ラブコメに殺されたって、言ってるのに。

 そもそもそう思っていたのはラブコメでもなんでもないし、ただ幼馴染が好きだからという理由で平然と悪事をする下衆な男がいたから、その女の子を救うために戦うぜ、みたいな話にしかなってないんですよ。

 しかも、モブとか主人公とか言っておきながら。そもそもモブを自称している石井は、過去にヒロインを救って惚れさせて、その事実を覚えてないとかいう典型的なラブコメ主人公っぽい設定があって。一方の、主人公と言われてるやつはただの悪役とかいう設定で……、なんでしょうね、設定からしてタイトルを放棄しにかかるのやめません? (わたしの苦手な展開Tier上位に来る、無用なタイトル詐欺、が達成されました)

 

 なのでこれは、

 ラブコメに立ち向かう話に見せかけて、

 普通にラブコメをするお話。

 なんですよ。

 

 だったら、もう本格的に序盤の話がまるまるいらなくなるじゃんって。

 さっきも言いましたが最初から素直に復讐モノだとして書いての何も問題ないし、そこに氷高は実は自分を好きだったって話からラブコメを生み出しても十分じゃないですか。

 本当に序盤にラブコメに殺された云々のくだりが意味わからなくて、もはやこれは主人公自身も現実とフィクションの区別ができてないのでは? とある種のメタ的表現である部分にまで、あらぬ疑念を抱くことになってしまいましたよ。

 

 さらには、結論として氷高の幼馴染である天田は、粘着気質で自己中心的な野郎だったわけですよね。

 そうなると、カッコいいラブコメ主人公的存在でもなんでもない、ただの頭のおかしい悪役を倒すとなったら、それは勧善懲悪的なスカッとはあれど、

 本題である復讐モノで重要な爽快感やカタルシスとしては弱くなってしまいませんか? 

 序盤が意味ないだけならまだしも、後半にまで悪影響及ぼすのは、本当にどうすりゃいいのって……、

 

 1巻の半分くらいの尺を使った長い上に意味が分からない導入、本当に読んでてキツかったです。



 

 

 ……そう、思ったので。

 もうわたしは序盤の展開を八割方忘れて、

 中盤以降だけに集中することにしました。

 

 そうすれば、普通に面白かったと思います。

 

 主人公が、変な男に粘着されているヒロインを助けるために、タイムリープしたアドバンテージを使って上手く人間関係を立ち回っていくお話は勢いがあって面白いですし。

 

 過去の思い出からずっと一途に主人公を想い続けているヒロインの可愛さと、そこから順調にストーカー……もといアグレッシブな努力家として成長したギャップ萌え、どっちも大変良いものでした。

 またこのヒロインの表紙や序盤からは想像できないくらいの、好き好き大好きが溢れ出す軽快な喋りは、ラブコメとしてのテンポの良さを生み出すいいアクセントになっているのも良かった。

 

 そして悪役を打ち倒して、

 過去の思い出と再会、新しいプレゼントという流れの実に綺麗なことよ。

 ヒロインの嬉し涙が、一読者としても本当に良かったなと共感して涙を流せるシーンになっているのは、見事でした。

 

 さらに元々そうではあっただろうけど、二度目の人生ということもあってか過剰なまでにシスコンやっている主人公と、そんなお兄ちゃんをうっとおしく思いながらもまんざらでもない妹ちゃんという、なかなかどうして良い兄妹がいたりもしますし。

 

 全体的に良い作品だったんじゃないかと。

 本当にそう思います。

 

 ただ、序盤の半分以上を忘却して読んだ評価なので、150ページを超えるくらいの中編作品を読んでいる感覚しかないので、総合的な満足感はそれ相応なのですが。

 

 そして、そういう短編や中編で綺麗にまとまっている作品を読むと、大抵そう思ってしまうように、これは続きがあっても何をするんだろう?という期待が持てなくなってしまっているのも、シリーズモノのラノベとしては欠点ですね。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)  ※序盤を考慮すると★4  

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10)  ※序盤を考慮すると★3

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)  

 イラスト・・・★★★★ (8/10)  

 次巻への期待・・・★★☆ (5/10) 

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) ※序盤を考慮すると★5

 一言コメントとしては「完全に序盤が足を引っ張っている」ですね。

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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