ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part247】あなたの推しVです。今後ろにいます

 今回の感想は2025年4月のスニーカー文庫新作「あなたの推しVです。今後ろにいます」です。

あなたの推しVです。今後ろにいます【電子特別版】 (角川スニーカー文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 リアルの私を愛してほしい! 愛が重たい一途な女子、実は推しの中の人!?


 俺、並木平太は推しVにガチ恋中――なのに。「一緒に帰りましょ」「やめっ、ついてくるな!」同級生の加賀美さくらに溺愛されている。超絶美少女で重たいラブコールだって正直かわいい。だけど最愛の推しVがいるから絶対惚れるわけがない!

 

(その推しVって私なんですけどね)

 私、加賀美さくらは彼の推しであることを隠して今日もたっぷり愛を囁く。だってリアルの私を愛してほしいから!

「並木くんになら……キス、奪われてもいいですよ?」

 

 本命がいるのに理性がヤバい! でも実は本人すぐそこに!?

 超一途に愛されるニヤニヤラブコメ

 

感想

 うーん、正直あまり楽しめませんでした。

 

 個人的にイマイチと思った部分が多々ありまして、そういうイマイチが積もり積もって1冊の話として起伏を感じられなかった、というのが全体的な印象になります。

 

 ですので、その辺りを感想としてまとめていきます。



 まずは本作の概要をざっくりと。

 基本的にはあらすじで紹介されている通り。

 

 主人公はとあるVのガチ恋勢であり、そのVであるヒロインは現実の主人公に恋していて猛烈なアプローチをしている。

 そんな状況からスタートのラブコメ作品です。

 

 本作の最初のイマイチ要素はこれです。

 ズバリ、この作品の大枠だけを説明したら、たった今要約したあらすじ、これが全てであるということ。

 ……いやいや、あらすじなんだから、作品の大枠になっているのは当たり前じゃないかと、そう思うかもしれませんが。

 そういう意味ではありません。

 

 この作品は、あらすじおよび冒頭から分かる内容をずーっとやっているんです。

 つまり、ヒロインが自分の正体を隠したまま主人公にアプローチをするが、主人公は推しVがいるから靡くわけにはいかない、というやり取りだけを1冊通してやっているということです。

 読者としては、そのあらすじから一体どんな話が展開されるのか、という期待をするのに、大きな変化も意外性も変化球も一切全く何もない。

 

 例えば、本作であれば。

 Vtuberという、話のタネとして非常に多種多様に扱えそうな要素があるわけです。

 シンプルに、ヒロインが正体バレしないように立ち回るけど、何かの拍子でバレそうになったり……、みたいな軽い揺さぶりでコメディっぽい展開をやったりすることもできそうです。

 あるいはVの活動で何かトラブルがあって、主人公はそれを知らないし、ヒロインも隠したまま、だけど主人公のちょっとした関わりが問題の解決に導いていき、ヒロインから主人公への好感度がさらに増していくみたいなこともできそうです。

 そういう色々な方向性に舵を切れそうなのに、そうい部分を活用することは一切ありません。

 

 しかも、この点についてもっと言えば、読者目線では明らかにヒロインとVが同一人物だと分かるような言動が大量にあるのに、主人公は一切気づく素振りもなければ、ヒロインもそれを考慮する様子もないので、

 「ヒロインは正体バレしないようにアプローチする」というのが、ただそれだけの建前の設定として独立して存在しているように見えるわけです。

 

 そして、これはすなわち。

 読者が作品世界への共感や納得感を得られない、と言い換えることもできるでしょう。

 このような部分が他にもありまして。

 

 本作主人公は、ガチ恋勢です。

 それも結構本格的な、端から見たらやべー思考しかしていないレベルのガチ恋勢です。

 そしてヒロインの方は、主人公を好きなあまりストーカーを平然としてしまうような女の子です。

 これまた端から見たら、やべーとしか言えないレベルの個性的なヒロインです。

 

 ……でも、それだけです。

 そういう設定によって、何かしらの特別な話が生まれるわけでもなければ、面白いコメディだったりちょっとシリアスだったり、そういう雰囲気を描くわけでもない。

 

 ここが面白くない理由はシンプルだと思っていて。

 ボケに対するツッコミ不足、ではないかと。

 ギャグって、通常はボケとツッコミがセットになっているからこそ、見ている人は面白いと思うし笑えもするんです。

 もちろん、完全にストーカーという要素を恐ろしいものとして振り切っていったり。あるいはギャグコメディ漫画のように終始ボケ倒すような勢いで、もはや何からツッコミすればいいのか分からなかったり。そういうものになるのであればまた話は変わってきますけどね。

 本作はそういう方向性ではないと思うので、言いますが。ボケが単独でいても、それはイタい人にしか見えないのです。

 

 本作の場合、ガチ恋勢もストーカーも、どっちもやべー奴と言っていいタイプで、それはどちらかと言えばボケ寄りの属性なんですよね。

 であればこそ、その主人公とヒロインそれぞれのやべー言動に対する適切なツッコミというものが存在しなければならない、とわたしは思っています。

 別にツッコミと言っても、会話劇として必ずツッコミしろというわけではないです。ただ度が過ぎた場合には叱ることだったり、素直に常識を外れの行動にドン引きする周囲の反応を描くだけでも良いんです。そういう作品全体としてのツッコミっていうのが非常に大事で、読者も共感する世界観構築というものではないかとわたしは思っています。

 そしてそういうもの全部含めて、本作にはツッコミが足りないと言っているのです。

 主人公とヒロインのやべー言動に対するスルーや許容があまりに横行しすぎている。

 それはボケツッコミで言えば、ボケだけしてスベっている状態。会話のキャッチボールで言えば、投げたボールに対するキャッチが全くないような状態。

 

 そんな様子で、面白くなるわけがない。

 一読者として共感も納得感も得られない要素には何も評価することはできない。

 そしておかしな言動に対する、適切なツッコミがないということは、そんな物語の中にいる主人公もヒロインもそのやべー部分が変化するわけもなく。

 物語としての起伏の薄さ、1冊を通したキャラの心情の変遷、そういう部分の魅力すら損なってしまっているように感じます。

 

 そうです、そこもまた大きな欠陥ですね。

 キャラの魅力不足。

 ヒロインはストーカーという属性を持っているけれど、その性格としては非常に品行方正な正統派美少女なんですよね。

 相反するかのような2つの性質があるならば、それに納得できるだけのバックボーンが必要でしょう。

 ……でも、やはり、本作には十分なそれがない。

 ヒロインが主人公を好きになったきっかけは語られても、そこからなぜストーカーするまでに至るかという部分への納得できるだけのアンサーはなし。

 そうなると、ヒロインの持つストーカーという属性と、品行方正の正統派美少女という属性に、繋がりや連続性を感じられず、

 最初に話の構成でも言ったような、設定がそれぞれただそういう設定であるという、独立して存在してしまっているような感覚を覚えてしまいます。

 そういう下手な二面性は、ストーカーとしてのキャラも薄っぺらく、普通のヒロインとしても薄っぺらくする諸刃の剣としての自傷効果しか生み出しません。

 ストーカーとしてもっとやべーヒロイン、正統に可愛い美少女ヒロイン、それぞれ他作品でいくらでももっと良いヒロインは探せばいます。

 わざわざハイブリッドにしたのなら、この作品でしか見せられない特別な魅力を見せてほしい。

 そう思っても、わたしには本作から何かしらの魅力を捉えることはできませんでした。イラストだけは可愛いくらいです。ヒロインに魅力を感じないのは、ラブコメとしてあまりに致命的です。

 

 一方の主人公に関して。

 簡単に触れますと。

 主人公自身が持っている友人関係とそれに対する向き合い方、そういう部分に関してはヒロインと彼女の友人と交流する中で、大きく変わっているように見えました。

 そこは、素直に良かったと思ってます。

 話に変化や動きを感じない本作唯一の動きなので、見所と言って差し支えないでしょう。

 しかし、先にも言ったように、主人公自身のいちばんの個性であるガチ恋勢というやべー要素に関して、物語の中でツッコミすることも深掘りすることも一切ないので話としては”無”ですよね。

 

 冒頭やあらすじから面白そうな要素として君臨する「ガチ恋勢」「ストーカー」「Vtuber」とかいう要素をほぼ全てガワだけの設定にして、主人公の友人関係だけ動かしますよー

 ……って、そんなの一体誰が読んで楽しめるんですかって話です。

 

 

 

 まぁ、そんな感じでまとめますと。

 良い設定を無駄遣い。

 起伏のないラブコメっぽいものがここにある。

 というのが本作の印象で、わたしが楽しめなかった理由です。

 

 一応、最後の補足で。

 Vtuber要素が話に全く活かされることのない本作ですが、最後の引き方に関しては、この点で物語が動き出しそうな予感をしています。

 なので今後に期待すれば、面白くなってくるのかもしれません。

 が、少なくとも1巻読んだ時点でここまで設定を無駄遣いする作品をわたしは続き読みたいと思わないので……、ごめんなさい。次巻への期待もありません。

 

総評

 ストーリー・・・★ (2/10)  

 設定世界観・・・★ (2/10) 

 キャラの魅力・・・★ (2/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻への期待・・・☆ (1/10)

 

 総合評価・・・★(2/10) ごめんなさい。わたしには楽しめませんでした。

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。

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