ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part252】妖精の物理学

 今回の感想は2025年5月の電撃文庫新作「妖精の物理学」です。

妖精の物理学 ―PHysics PHenomenon PHantom― (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 逆さまの街で、雪の結晶を宿す妖精に出会った。

 

 ――第31回電撃小説大賞《大賞》受賞作――

「たった今、世界の法則を再定義しよう」

 2032年に提唱された前代未聞の物理学理論により、世界の在り方は大きく変わった。特定の物理現象が少女の姿で具現化した存在――『現象妖精』は、人類に多大なる恩恵と、未曽有の大災害をもたらした。

 七年前、『現象妖精災害』により一度崩壊し――復興した街・神戸。そこに暮らす少年・カナエは平穏な日々を過ごしていた――はずだった。あの日、助けを求める彼女の声を聴くまでは。

「1500万もの人間を、この手で一度に、――殺しました」

 世界の秘密と、犯した罪。少年と妖精の逃避行が今、始まる。

 大賞受賞作家が遺した感動の大作が堂々刊行!

 

 

感想

 うん、面白かったですね。

 そして、まず第一に本作は発売前に作者様がご逝去されてしまったそうで……、大変お悔やみ申し上げます。

 

 ですが、それはそれ。

 感想は感想です。

 正直に思ったことを書きます。

 基本的には面白かったので褒める内容ですが、1点だけ一読者としての苦言を呈したい部分があるので、どうぞよろしくお願いします。




 では、まずは本作のあらすじから。

 

 あらゆる物理現象が少女の姿として顕現する『現象妖精』と呼ばれる存在がいる世界。

 現象妖精による災害によって日本の都市部の多くが崩壊してしまった世界で、重力が逆まさになった復興都市・神戸に暮らす主人公のカナエは、ポンコツ妖精のレヴィと平和に過ごしていたが、1つだけおかしなことがある。

 それはカナエだけが、妖精の声を聞くことができるというもの。

 ある日、カナエに助けを求める声がして、そこで出会ったのはかつて日本を崩壊させる七大災害の1つを引き起こした氷の現象妖精だった。

 ゆき、そう名乗った彼女に手を差し出したカナエの運命が動き出す――、とそんな感じですかね。



 めちゃざっくり言えば。

 何かしらの物理現象を司る妖精たちがいる世界で。

 その妖精の中でも特別な力を持つ女の子と出会って。

 同じく特別な力を持つ女の子に命を狙われて異能バトルして。

 世界を滅ぼすほどの特別な力を持つ少女たちと世界の命運に向き合っていく。

 

 そういうお話といっていいでしょう。

 少なくともわたしはそう思ってます。

 ですので個人的な気持ちとしては正当なファンタジー作品、ボーイミーツガール作品、そういう形で非常に満足できる作品だったかと。

 

 本作の良かったな、こういうところ好きだ、っていう点を挙げていきますと。

 

 まず第一に主人公たちが暮らす世界が、重力の反転した地域であることから、いきなりワクワクするような世界観を持ってくるじゃないかと思いますよね。なにせ、本作には七大災害と呼ばれるような、各都市で甚大な被害を起こした現象妖精がそれぞれいて、それすなわちその災害を起きた土地ではそれに応じた影響が残り続けているというわけですから。

 実際、本作のメインヒロインであるゆきが過去に災害を起こしてしまった東京は氷漬けになっているようですし。そうなると、最低でも7カ所は、そういう変わり果てた世界観の場所があり、そういう場所で果たしてどんな物語が起こるのだろうという純粋な期待感があふれます。

 

 そして、それと同じく。

 少なくとも七人はそのレベルの災害を起こせるだけの特別な力を持った妖精たちが存在しているというのは、非っ常にラノベらしい。こういうのは問答無用で好きですわ。

 きっと各地を巡る中で、それぞれの妖精と出会って、ときに争いあって、ときに協力し合って、だんだんと世界の謎とかに迫っていくお話があるんだろうなと。

 そして最強の能力はいったい誰かみたいな異能バトル的視点で見ても楽しめるでしょうし、全員が女の子であればいちばん可愛いヒロインは誰かという視点で見てもきっと楽しめる。さらに本作の妖精たちは、それぞれがその力をふるうためには人と契約しなければならないという点で推しカプを見出すように読み進めることもできたでしょう。

 

 この作品に対して、こういうことを言うのはいかがなものかもしれませんが。

 わたしは基本的に、ラノベは長く続いてなんぼと思っています。長編シリーズが大好きです。ですので、最初の1巻で、いかにして今後の話に期待できるか、楽しみと思える要素が持てるかというのを重視しています。

 そしてその点でこの作品は大変魅力的な設定と、そこから読者が楽しみを想像しうる要素を大量に有している、わたし好みの作品だったというわけです。



 そして、それはあくまで設定世界観の評価。

 そこが良いなと思ったなら、本作そのものの内容を見てどう思ったか。

 

 運命となる最初の出会い、そして特別な力を持つ少女の常として追われることになって、しかしその逃げる過程で育まれる感情や関係性、そういう点でとても良かったと思います。

 主人公のカナエと、メインヒロインであるゆき、さらにカナエと最初から共にいたレヴィ、それぞれがお互いに想い合って今を守りたいと願って戦うのが良いですよね。

 特に本作は、追っ手側の思惑も踏まえた上で、それでも三人は三人だけの絆を育んでいるのだ、という形である種の疑似家族とかそういう方向性の温かみを感じるので、異種ヒロインを扱う作品としてはこういうのがすごく良いです。

 中でも、レヴィは日常の明るさを担保していて、メインキャラでどうしても物語のシリアスに寄りがちな二人の空気を和らげるキャラとして実に良い立場と活躍をしていたと感じて好きなキャラだった。

 

 また、過去の災害に対して、それぞれの妖精がそれに対してどう思って今を生きているのか、という点にも焦点が当たるのがいいですよね。

 主人公とのやり取りとかよりも、断然彼女たちが意志を持った存在なのだというのが分かって好きになれる。

 特に、ゆきを追ってその命を狙ってくる斥力を司る少女かさねは、その点の魅力が強くて好きになれるキャラでしたね。カナエに対する感情と、戦いに向ける覚悟も、そしてそれに伴う行動と弱みも、しっかり1冊の中で魅せるべきポイントを魅せてくれるキャラだった。

 惜しむらくは、そんな彼女のことをすぐ隣で支えているだろう男タツミの活躍が1巻では比較的薄く感じてしまった点でしょうか。この二人の関係性ももっとしっかり見たかったですね。

 

 そして、そんな中心にあるメインキャラたちがしっかり魅力的で、

 その中でそれぞれぶつかりあう異能バトルや、世界の危険、主人公だけが何故妖精の声を聞くことができるのか、そして現象妖精の起源で発見者である研究者について迫っていくような、どんどん謎が謎を呼び広がる物語、

 そういうものは、しっかりと前へ前へ進む疾走感のある読み心地で最後まで読み切ることができました。

 

 と、いうのでどちらかというと、本作は映画的な1冊の満足感が大きな構成だったと思うので、その点でしっかり狙い通りの満足感を得られたなら、わたしとしては良い作品だったなとそういう感想になります。

 もちろんそういう映画的な方向性の満足感がある作品だけに、細かい部分で気になる点、ここはもう少ししっかり描いて欲しかったなと思う点は多々ありますが、わたしはこういう方向性の作品であるならそういう点をあまり言いたくはないなと思うので、今回は良い作品だったという気持ちで感想を終わりにします。



 

 

 ですが、それでも。

 1つだけ本作に対して言いたいことがありまして。

 それがイラスト面での話ですね。

 

 ズバリ言いますと、本作口絵のカラーイラストはありますが、途中の白黒挿絵はありません。

 

 今から述べるのは一読者の不満と持論です。

 イラスト、めちゃくちゃ欲しかったです。

 それは単にわたしはイラスト大好き人間だからということではなく、わたしはラノベを文章+イラストで魅せるものであると感じているからこその不満です。漫画と文芸の中間として、2つあればこそ描ける魅力がたくさんあると思っているんです。

 本作を読んでいて、目に情景が浮かぶようなシーン、ここにイラストあったらと思えるシーン、かさねちゃんのビジュアル見たい見たい見たいと思うシーン、いっぱいあったんですよ。

 なんで、ないのですか。

 

 もちろん、本作が作者様の遺作となるものであり。

 出版サイドが検討しつくした上で、純粋な文章として遺すべきと判断したのか、作者様の意向や監修も何も聞けない状態でイラストが作れないのか(メイン三人まではある程度作者様とも話ができていたから、その分の口絵だけはあるのか? そこの中途半端さも気になるといえば気になりますよね)、それは全く分かりませんがこのような形にしたのには何かしらの明確な理由があるとは思います。

 でも、わからないので好き勝手言いますが。

 あくまでイラストあってこそラノベだと思う一読者としては、これが遺作となるのであればこそ、ラノベとして最大限の装飾で文章を120%魅力を引き出すモノとして読者に送り出す方が良かったのではないか? そう思ってしまいました。

 文章中にイラストを入れないにしても、各章始めにその章のイメージイラストの1枚絵入れるとか、本文中にイラストない分だけカラーの口絵を増やすとかでも良かったのではないでしょうか。それはそれで出版に当たるコスト面とか構成に色々問題があるかもしれませんが、でもその採算度外視するくらいの想いで遺作に華を添えてあげて良かったのではないですか。

 もしも、作者様がご存命だったとして、それでも挿絵を入れることはなかったとそう言うのであれば納得しましょう。しかし、そうでないのなら、それはラノベとして夢願って出版されるものとして完璧なものと言えるのでしょうか。

 

 正直、わたしはこのような不満をこぼしてしまったことが悲しいのですよ。内容は既に言ったように好きなもの楽しめるものがあっただけに、こういうもう作者の手から離れたのだと感じてしまうのが本当に悲しいんですよ……。

 

 本当に、これは身勝手なことを言っているのだろうと思います。

 わたしがただイラストを見たいというだけの邪な気持ちが多分に含まれているとも思います。

 それでも、ですね。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★☆ (7/10)  

 設定世界観・・・★★★★☆ (9/10) 

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・ (ー/10) (あった分の口絵が悪かったと言うつもりはありません。ですが、今回は評価なしにさせてください。できることなら完全な状態を見たかったです)

 次巻への期待・・・★★★★☆ (9/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 叶わぬことだと知っても言います。続きがあれば、是非とも読みたかったです。

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp