【新作ラノベ感想part291】TS転生美少女音虎玲子は寝取られたい
今回の感想は2025年8月のHJ文庫新作「TS転生美少女音虎玲子は寝取られたい」です。
※画像はAmazonリンク
あらすじ(BWより引用)
「何はともあれ、私は寝取られ女になりたい!」
前世で数々のカップルを破局に追い込んだ極悪人は、天使の如き美少女・音虎玲子にTS転生を果たした。そんな玲子の望みはただ一つ、“最高の寝取られを味わう”こと!? 絶世の美少女でありながら男心も解する玲子は、理想の寝取られシチュを作り上げるために、計算し尽くされたアプローチで幼馴染やその親友を次々と虜にしていく! 寝取られ大好きTS美少女が、全てを欺き幼馴染の脳破壊を目指す、最低で最高なラブ(?)コメディ!!!
感想
うーん、アイデアそのものは面白いのですが。
本作を読んで面白かったかといわれると微妙と言いますか。
わたしの感覚としては、見たいのはそこじゃないんだよなぁ、という気持ちが強すぎた作品でした。
本作は、NTRされて絶望する人を見ることに何よりも悦びを感じる主人公がTS転生したことを良いことに、幼稚園の頃からNTRされたときに良い絶望を見せてくれそうな優しい男の子と幼馴染として仲良くなったり、その幼馴染に友人を作ってあげたりして間男の準備をしたりしていくお話です。
な、なんて業の深すぎる主人公なんだ!
そう言うしかないほどに性格がねじ曲がっている主人公。
これは間違いなく本作の大きな魅力で武器だったと思います。
周囲の人間関係を全て自分の玩具としか思ってなく、自分の行動が悪であると自覚しながらも、自分の欲望の前には些細なことと思えるメンタル。ほぼほぼ無敵の人となっている正真正銘の邪悪の化身。
ここまで純然たる悪をやってくれると、読んでいる身としても逆にどこまでやってくれるか楽しみになりますし、作品の唯一無二の個性にもなっているので非常に良かったかと。
そんな主人公が目指すのは理想のNTRシチュエーション。
人生をかけて幼馴染役に立てた男の子の脳を破壊してやろうとかいう鬼畜の所業。
そのための好感度調整というまるでゲームのような行いは見事と言わざるを得ません。
思春期に突入した青少年の性癖を歪ませるような、無自覚を装った言動の数々はあまりに毒過ぎるなと思って楽しめますし。
特に、本作の面白さを引き立てているのは、主人公が各種役割に当てているキャラそれぞれの視点でも描写があり、それぞれがある種のテンプレめいたラブコメの雰囲気を持っているところですね。読者という俯瞰の視点では、このテンプレが作為的であると分かっているからこそ、そのテンプレに奥行きを感じて面白さとして感じられるのです。
作品数が飽和した時代になると、こうした王道を個性でアレンジしていく作品の台頭というのはやはり良いなと思える、そんな作品でもありますね。こういうアイデアは本当にどんどん出して欲しいと思います。
ここまで絶賛じゃないか、何が問題なんだ? と思われるかも知れませんが。
わたしが本作をこれでも面白いかは微妙と言うのは、ズバリその構成の問題ですね。
わたしの感覚を言語化すると
「昔ポケモンやってたからある程度ルールは分かっているので、対戦動画を見れば今でも楽しめるけど、延々とポケモン育成するような配信を見たところで自分が今ポケモンやってるわけじゃないから何も参考にできないし、対戦動画見るより楽しくないよね」
みたいな感じなんですよ。
まぁ、この例は手品でも科学実験でも何でもいいんですけど。
つまり、NTRというジャンルはよく分かってるから、それを発展させるようなアイデアやネタが面白そうだと分かるんだけど、その準備段階だけを見て楽しめますかって話です。本当に面白いところ、見たいところはそこじゃないのでは?っていう感覚なんです。
本作は1巻全部を通して、とにかく主人公が周囲の人物を誘導していきます。そして、それだけで終わります。それ以上はありません。例えば、何かしらの検証動画を見ているとき、それを準備している途中で思わぬ大失敗みたいなものがあれば、それはそれで笑いになってオチになるので楽しめますが、本作はそれすらないのです。主人公の行動にイレギュラーが生じたりするようなこともなく、本当にただ淡々とキャラ育成を見せられているような感覚。
それは果たして面白いのか? と。
この主人公は言いました。
最高のNTRのためには、そこまでの溜めが重要であると。
それについては完全に同意します。大して主人公とヒロインの関係性が深くもなってないのに、NTRだBSSだと言ってる作品を見ると何言ってんだと思いますからね。そもそもBSSに関してはわたしは意味が分からないとすら思っていますから。
ただ、溜めるのにも適量があるだろうと。
1巻かけてようやく中学1年生が終わりって、一体何巻になったら爆弾を爆発させるんですか? という感じじゃないですか。
長い、長すぎますって……。ただでさえラノベとして刊行されるペースを考えたら、読者としては溜めたものがそのうちどこかに自然消滅してしまいます。NTRのときの爆発力を感じることができません。少なくとも1巻の時点で、読めば読むほど淡々としてるなと思う作品なんですから、ほぼ確実に無理だと思います。
作品には主人公などキャラに感情移入した方が楽しめるものと、俯瞰した方が楽しめるものにはそれぞれ違いがあると思っていて。実際にわたしの場合は、基本的に読み方が俯瞰で固定されているので、前者のような作品だと楽しめなかったりすることがあるのですが。
その点で言えば、本作は主人公が確実にクズで感情移入しづらく、面白みとしてあるのは他のキャラ視点ではテンプレラブコメなのに、実際それは1人の悪魔によって踊らされてるんだよっていうのが、第三者視点だから分かるという完全に俯瞰向きの作品なんですよ。
だとしたら、主人公の持論である溜めれば溜めるほど良いNTRになるというものを、作品で実践するようにじっくりゆっくり過程を描くのは、方向性のミスマッチが生じてると言わざるを得ません。
(あと、これに比べたら些細な問題ですが。ただでさえ登場人物は当たり前に物語のキャラである、その上で本作は主人公の作る物語で踊らされるキャラでしかない、ということで物語2つ分挟まっているキャラしかいないので、主人公以外のキャラはマジで感情移入とか好感を持つとかできないという問題もありましたね。……いや、これも結構致命的か?)
(あとあと、シンプルにパロネタがキツイです。これはわたし個人の問題もあると思いますが、ただでさえ読んでて退屈と感じる展開ばかりでパロネタを何度も入れられると、そういう小手先の技じゃないと笑いを取れないのかなと思ってしまってしらけてしまいました。)
だからこそ、良いアイデアだけど、作品として読んでいると面白いかどうか微妙と感じてしまうのではないかと。わたしはそう思いました。
総評
ストーリー・・・★ (2/10)
設定世界観・・・★★★☆ (7/10)
キャラの魅力・・・★ (2/10)
イラスト・・・★★★★ (8/10)
次巻への期待・・・☆ (1/10)
総合評価・・・★★(4/10) 致命的に読んでて退屈な育成シーンだけ流される
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。
