【新作ラノベ感想part306】世界の終わりに君は花咲く
今回の感想は2025年10月の電撃文庫新作「世界の終わりに君は花咲く」です。
※画像はAmazonリンク
あらすじ(BWより引用)
死の雨、滅びゆく街。僕は世界と彼女を天秤にかける。
とある地にて突然降り始めた『黒曜雨』は、瞬く間に世界中を恐怖で覆い尽くした。
触れた人間を死に至らしめる黒い雨は、僕らの街も例外なく襲う。人々の怨嗟の声は、激しい雨音にかき消された。
『黒曜雨』の危機から五年が経った現在、僕・晴原想河はまだこの街で生きていた。透明な雨が降りしきるなか、隣の彼女・午堂夕妃と一緒に空を見上げる。そこには天を突き破らんばかりに大樹がそびえ立つ。
「お姉ちゃん……」
夕妃の姉・朝妃は自らの命を代償に、『黒曜雨』を浄化する大樹となった。この街は救われ、人々は笑顔を取り戻しつつある。
けれど、僕らの犯した罪は――まだ決して許されてなどいなかった。
感想
うーん、個人的にはなんか微妙な気持ちですね。
セカイ系というものへの理解度の問題なような気がしますけども……。
でも、単純にこれは本作が何に気持ちを動かせばいいのかイマイチ分からなくなってる気がする。
本作は人々を死に至らせる黒い雨「黒曜雨」が降る世界で、その雨を浄化する樹木に変質する病「白露病」なるものが存在していて、主人公の兄の恋人で、ヒロインの姉だった女性が白露病になり町一帯の雨が浄化された中で、距離を取っていた主人公とヒロインが再会して――というように始まるお話です。
まぁ、言うまでもなく、話の大枠としてはヒロインが今度はその白露病になって樹木に変質していき、世界を救うか彼女を救うかみたいな話になる感じなんですけど。
……さて、感想として何を言えばいいのでしょう。
まず第一に話の構造そのものに不満があるわけじゃないんですよね。最終的な結末がこれじゃ気持ちよくないとか、そういう気持ちではなく。また、黒曜雨とか白露病とかそういう固有の世界観設定の真相とか理屈が分からないことも、別に良いんですよ。
ただ、なんというか。
本作はおそらくキャラの内面とか葛藤とかそういう部分を重視していると、思われるのですが、それがどうにもわたしに響かなかった、掴み所がないように感じてしまったというところになるでしょうか。
そのため感想の出力が絶賛難航中でございます。
……がんばって出します。
たぶん、おそらくですが、あとがきでも触れられているように「共感」というのは本作のキーワードだと思うんですよ。相手の感じる痛みや苦しみを、たとえ正しく理解できないとしても、それを知ろうとする姿勢や寄り添わんとする気持ち、そういうところを重視している。
主人公のヒロインの姉に行った行動はその形こそ寄り添うものであったけれど、本質がやはりエゴだったというものや。主人公の兄が、苦しむ恋人から目を逸らしてしまったことだったり。主人公の過去の懺悔を聞いて、それに対するヒロインの投げかけた言葉とか。ヒロインが白露病になってから初めて知る姉の感じていた気持ち。
そういう序盤から一貫して本作の様々な所で共感すること、共感できないことが積み重なっていて、それは本作の大きな強みとして感じられた。
共感することはある種の優しさになるだろうし、たとえそれが欺瞞やハリボテだったとしても誰かの救いになる。死が間近にある世界で、その中でもより身近にそんな世界の理不尽さを感じる境遇にいる人たちだからこそ、本質的な救いだとか真相解明なんかではない、人と人の繋がりだけが生み出せる何かに強い希望を見出すというのは大変理解できるところ。
そういう意味で、本作が主人公ヒロイン、その兄や姉を含めたそれぞれのキャラの苦しみや葛藤を描いた上で、その根本的な解決ではなく、その痛みの繋がりや広がりにフォーカスしていって最終的な結末に至ったというのならそれでヨシとしますけど。
本作に関しては、この強みを踏まえてこそ、わたしが言いたいのは。
なんか弱い、なんですよね。
特に物語としては終盤の展開となる、白露病になったヒロインがどういう選択をするのか、それに対して主人公がどう向き合うのかという辺りの流れで。
まずヒロインの覚悟みたいな部分が状況で流され気味かなと気になって、主人公の行動も自分が罪を背負うとかなにか言ってるようで選択を放棄してるだけではないかと言いたくなるようなもので、二人とも何がいちばん大切なの?何が絶対に譲れないの?みたいな芯がイマイチ分からなかったんですよ。その何かのために、何をするのか、何を残すのか、そういう行動を見せてほしかったんです。
まぁ、でもヒロイン側はまだ許容ですよ。こんな状況になったらもうほぼほぼできることなんて限られているわけですから、その中であれしろこれしろというのは無茶振りな気がします。人としての死を前にしたら、覚悟を決めたつもりでも揺らいでしまうなんてことはいくらでもあるでしょうし。むしろ最後まで悩み続けているくらいが自然で、それでも最後のきっかけ1つで決断してあの結末になったならそれは1つの最善だったのではないかと思います。
でも主人公の方はどうなんですかね。過去の後悔があったんでしょう、家族との関係に色々問題があったんでしょう。その上で彼女が自分に向けてくれた姿勢や気持ちに救われるものがあったんじゃないんですかって。じゃあ、その救いに釣り合うだけの何かを返したのかと。この先の未来に選択肢があるようで、バッドエンドかバッドエンド一歩手前みたいなほぼほぼ選択肢変わらないじゃんみたいな状況のヒロインにこの主人公だからこそできることを見せてほしかった。そうじゃないと、わざわざ兄弟姉妹や家族にフォーカスしてまで共感することとできないことの対比を強く描いてきた理由がイマイチ分からないなって思いました。
つまり、なんというか、そういうところでもっと言葉を重ねてほしいというか、色々吐き出してほしいというか、最悪言い争うくらいでもいいというか。
結局何も出来ない、結末が変わらないとしても、この二人だけの何かを見せてほしかった。共感の物語というならなおさら、この2人だけに通じている何かを。ありきたりな世界か彼女かという2択になるだけなんて勿体なさすぎる。
そういう意味で、本作の強く心に響く何かを感じ取れなかったというのがわたしの気持ちですかね……。
それこそ理解はするけど「共感」にまで至れない、というところです。ワンチャン、わたしが読み取れてないだけで、わたしの作品理解度や感受性の問題かもしれないですが。
まぁ、よく分からん話でしたね。中盤までと終盤の結末の繋がりをあまり感じなかった。
最後に、これまでの話とは完全に別物で。
ヒロインが樹木化する変化の過程がイラストとして見れないのは、素直に残念でした。せっかく挿絵というものがあるのだから、わたしとしてはそういいイラストがほしかったです。ヒロインの姉の過去回想のところで、姉がそうなってるのを描くでも良いですけど。
少なくとも、主人公やその兄が目の前にしている、愛する彼女が変質していくというもうどうしようもない状況というのを一目で読者にも印象づけるにはこれ以上ない最善手だと思ったのですが。
あと、黒い雨が降るという世界ならではの色彩もほしかった。
総評
ストーリー・・・★★ (4/10)
設定世界観・・・★★★ (6/10)
キャラの魅力・・・★☆ (3/10)
イラスト・・・★★☆ (5/10)
総合評価・・・★★☆(5/10) この作品だからこその強みがあると思うけれど、それが十全に発揮されていないもどかしさを感じました。それが微妙な読後感になります。
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
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