ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part310】未遂同盟

 今回の感想は2025年9月のMF文庫J新作「未遂同盟」です。

未遂同盟【電子特典付き】 (MF文庫J)

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あらすじ(BWより引用

 すべてを〈未遂〉で終わらせろ。新たな青春小説、目覚める!


「完全犯罪のやり方、教えて。バレない方法!」
白鳥の湖を再生します』
「バレエじゃない! こぉ~のポンコツAI!」

 『人の殺意を視ることができる』高校生・和十村写楽の周囲には、いずれ事件を起こす――かもしれない危険な『ぼっち』の少女たちがいた! 

 誰に対しても塩対応で〈図書室の公爵令嬢〉と呼ばれる同級生・月出里笑猫。

 〈住所:公園〉の自称ソロキャンパー・伊那亀美波。

 お嬢様学校で孤立する〈氷の女王〉姫宮心愛。

 とある理由で平穏な日常を死守したい写楽は、不本意ながら事件阻止に奔走するが――。

 少年少女の現在{いま}を切り取る、新たな青春小説{ブルーエイジ}。

 

感想

 果たしてこれは誰のための物語で、誰のための救いがあった物語なんだろう。

 読み終わって最初に考えたのはそんなことでした。




 本作は、他人の殺意が黒い炎のように見えるという特異な体質の主人公・和戸村が、3人の女の子たちが抱える殺意と殺人計画を未然に防いでいくというお話です。




 3人それぞれのパートは、ミステリとして見るには内容こそアレだけど、読み口はかなり軽め。会話劇の中に見える言葉の掛け合いや、たびたび登場する教訓が、個人的にはかなり楽しく読んでいられたなと思います。

 

 恋愛的な雰囲気もあるような感じではありましたが、読めばわかる主人公が主人公なのであまりラブコメ味というものは強くないようでしたね。

 ただエマと和戸村の会話の、エマ「今回得た教訓は『会えない時間が愛を育む』ということよ」、和戸村「そうか。俺が得た教訓は『沈黙は馬鹿をつけあがらせる』だ」みたいなやつを見ると、恋愛っぽい雰囲気を出してそれをぶっ叩くような会話劇がまた面白いので、恋愛的な雰囲気や言及が全くのゼロじゃないのは良かったと思ってます。



 でもって3人の殺人計画を止めるという話は、短く起承転結の締まったものではあったけれど、正直1つ1つは内容として軽かったこともあってそこまでグッとくる部分はなかったのですが……。

 3人の各パートが終わって、主人公和戸村の掘り下げと3人のヒロインの繋がりが見えてくることから、一気に話全体をまとめ上げる作品中盤からの勢いは、とても良かったと思ってます。

 こいつら全員まだ何か明かしてない情報があるな、と思いつつその内容もある程度察せる部分がありながらも、グッと話に引き込まれるパワーがあった。

 

 特に本作では、殺意がテーマであり。

 それ故に殺意を抱えるだけの原因、出来事が必ずあるわけで。それはすなわちキャラのバックボーンに直結するところで、そこから関係性の輪を広げながら、話を盛り上げていくので面白いわけですし。

 殺意を抱えるだけの内容としていじめといった闇に切り込むこと、そして加害者被害者という直接の当事者でない、傍観者という立場。友人を守れなかった者だからこそ心に燻る後悔や怒りという感情は非常に重みを持って届いてくるものでした。




 そして、それがコアにある作品だからこそ最初の感想、これは誰のための物語なのか、誰のための救いなのかというところですよね。

 

 なんというか、本作は奇跡がちゃんと奇跡として存在しているように思ったんですよ。

 最後の最後に大きな驚きを運んできたあの展開とあのキャラ、和戸村の特異体質の謎だったりも明かされて、復讐に燃える少年少女たちの心が救われたけれど。

 あれは形だけを見たらファンタジーありきの、大きなどんでん返しで、純粋なミステリとしては禁じ手のようなもの。結局のところ、過去の事実は消えないだろうし、彼ら彼女らが犯した、あるいは犯しかけた罪だって決して消えない。もっと言えば、あのキャラだって、こんなふうにエゴを残すくらいなら、そもそももっと周囲に頼るなり救いを求めるなり何かできることがあったんじゃないかと、そう思う気持ちすらあったりもした。

 それでも、じゃあそれがご都合だったり歪みであったかと言われたら決してそうではないと思ってて。現実じゃあり得ない奇跡のようなあの一瞬があったからこそ、たしかに救われたものがあったし、それが美しく物語としてもいい締めになっていたと思うのですよ。そして、そんな1巻の物語を乗り越えたからこそ未遂同盟というタイトル回収になって、これが染みてくるものがある。

 そういう意味で奇跡がちゃんと奇跡として存在している。その良し悪しとか理屈を説き始めたら何かが違うんだろうと思う、こういう奇跡がなければここには着地できなかっただろうという、そういう感じ。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)  

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10) 

 キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)  

 次巻への期待・・・★★★☆ (7/10)

 

 総合評価・・・★★★☆(7/10) こういう救いを見せるお話はやはり良いですね

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

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