【新作ラノベ感想part235】俺は学園頭脳バトルの演出家!
今回の感想は2025年1月のオーバーラップ文庫新作「俺は学園頭脳バトルの演出家!」です。
※画像はAmazonリンク
あらすじ(BWより引用)
俺がアイツを『最強の主人公』に『演出』してみせる──!
ゲームによる決闘ですべてが決まる帝王学園。裏社会からやってきた最強の転校生・霧谷透。その銀髪ロシア人メイド・ソフィー、彼の幼馴染である学年最強のお嬢様・西園寺桃華。
――エリート育成のため人知れず運営されていた学園は、それはもう見事なほどに、学園頭脳バトルの舞台として整っていた。ならば、モブの化身たる俺・田中叶太のやるべきことは一つ。霧谷が最強主人公として学園を無双する、そんな俺TUEEE物語を陰から演出することだ。
それが演出家である俺の生き様……なのにお前ら、俺を目立たせるんじゃねえ!
実力隠し最強主人公×学園頭脳バトル×メタコメディ、ここに爆誕!
感想
うん、とても面白かったです!
個人的には大満足でした!
本作の主人公・田中叶太。
彼は幼少期からの友達付き合いの中で「何事の周囲の人たちが楽しめるように上手く調整する」ことに強い魅力を感じ、周囲に気づかれないよう現実に物語を演出する演出家になるため努力を続けていた。
そんな彼が、ゲームの勝敗すべてが決まる学園に転入することになり、当然のようにそこでもこっそりとドラマティックな物語を演出しようとしたのだけど……、どういうわけか上手くいかなくて?
というのが本作のあらすじですね。
ジャンルとしてはゲームモノ。
そして、あらすじを見て分かる、実力を隠す最強主人公の言動によって、思わぬ展開とどんどん転がっていく一種の勘違い系コメディのような、毛色があるような感じですね。
そんな本作の良かった点をズバリ挙げるなら。
設定から展開を組み立てるのが上手い!!
これに尽きます。
これは導入から存分に発揮されていたんですけど、
本作の導入としては、
転入した主人公が、ひょんなことから学園内でトップの実力者であるお嬢様ヒロイン・西園寺桃華に勝負を挑まれて、それに勝ってしまう。
という要約すればそれだけの話になります。
しかし、ここで重要だったのは。
「主人公の叶太は、影でゲームの勝敗を動かす演出家として、そのゲームは噛ませ役のように負けようとしていた」
プラス
「ヒロインの桃華は、実力者と呼ばれるに相応しい実力をちゃんと兼ね備えている」
という、主人公ヒロインそれぞれの初期設定を明確にこれ以上なく示しつつ、
その上で、むしろそうであったからこそ、
主人公が負けようとしていて、それが上手く行きそうになったことで、わずかに生じた”作戦が上手くいってる”という反応を、
ヒロインは、自分が相手の策略に乗ってしまって負けそうになっていると思い、逆の手を取った結果負けてしまったという。
それぞれのキャラの初期設定があったからこその、「主人公もヒロインも、お互いにとって思いもよらぬ結果」を生み出していることですよ。
これが導入部としての60ページ弱で見せる展開としては完璧ですよね。
主人公の性格とゲームへのスタンス、ヒロインがちゃんと実力者であることを証明しながら、思いもよらぬ展開に……、要点を確実に抑えた上での意外性をしっかり担保している。
さらには、この導入部は端的にまとめると、これ以上ないくらいにラノベ的な王道テンプレになっているわけですけど、これが主人公自身の演出家として望む流れではないって言うのが重要ですよね。
その後も、本作は一貫してそうなのですが。
主人公自身はどうにか自分が望む未来を手繰り寄せようとゲームの結果を調整したり、相手と駆け引きを行ったりするわけですけど。
そんな主人公に待ったをかけるように、ヒロインたちに予想外の言動があって、更にその奥には真に物語を作る作者の手によって生み出される王道のラノベテンプレという、神の見えざる手のような抑止力があるという。
この、塩梅が実に見事なんですよ、、、
話の流れとしては、ラノベとしてのあるあるな王道に面白いを踏んでいたとしても、それは主人公の望みからは外れてしまっているから、どうやって巻き返そうかという試行錯誤があることで、さらに一歩進んだ面白さがあるのですから。
そして、その拮抗する2つの物語性があった上で、
終盤ではしっかりと”ラノベの王道なクライマックス”として、あるいは”主人公自身の周囲の人を楽しませるために”という望みのために、両方の理由をしっかり噛み合わせて、主人公が本気を出すっていう展開に収まるのですから。
実力隠し系主人公作品としても、その面白さがしっかりと伝わるようになっていて完璧じゃないでしょうか。
と、導入部(以外の部分も結構褒めたけど)が面白いというのは、あくまで第一印象の話ですね。
大事なのは、その良い第一印象で掴んだ読者の心を如何に離さないかという点だと思います。
そこでも本作はしっかりやってくれた。
まず第一に、あらすじからも冒頭からも簡単に察することができる、主人公が最強であるという事実があります。
周囲を上手く勝たせるために、上手く勝敗を調整するなんて芸当はそもそも、主人公が周囲の誰よりも圧倒的なまでに強くなければできないことですから、当然の話ですよね。
ならば、その主人公の実力という部分はしっかり描かなきゃいけないわけで。
各種ゲームを通じて、主人公の卓越した技術を見せるのは容易に察せる部分ではありましたが。
個人的に良かったなと感じるのは、
自分の望む演出が失敗して、予想外の展開に陥っても、すぐに次の演出へと切り替えて立て直そうとする行動力ですね。
これによって、主人公の演出家という目的に対する熱意が、それに対する具体的行動と実力をもってちゃんと示されていますから。
ただゲームが強いとかではなく、主人公の強さの根本は、この演出をするために培った技術と執念なんだという本質をしっかり魅せようとしていた。
これは言ってしまえば、主人公の心情を描くというだけの話ですが、初期設定から読者が察するだろう部分を補強する形でしっかり提示してくれるように描くから。
読んでいる身としてはすごくスッと飲み込めて読み進められるし、設定をベースに1つ1つそれに関連する要素や展開を丁寧に広げていけるんだなと、導入部で感じた第一印象が確固たるものになってるんですよ。
さらに、この演出の失敗からの新しい作戦決行という流れは、物語としても二転三転しながらぐんぐん進んでいくという勢いを感じられますよね。
スッと話が入ってくることに上乗せする相乗効果になってリーダビリティがどんどん増していく。本当に素晴らしいです。
それから話の中にある要素が、読者が理解しやすい、共感しやすい、そういうこともあるよねと納得しやすいというものが比較的多かったのも良かったと思います。
例えば、主人公が演出家を生き様としたきっかけは、子どもの頃にゲームで勝ちすぎて周囲から逆に非難されてしまったとか。
例えば、本作で行うゲームの内容は、現実でも行えそうな範囲の分かりやすいルールで構成するとか。
そういうところですね。
本作が重視するのは、あくまで展開や演出という部分であり、それを生み出す基礎となる設定の部分で下手に小難しいものは使わないのは分かりやすくて良いです。
そしてやっぱりこれも読みやすさに繋がるのだろうと。
それから、最初の方にも一度言ったことですが。
本作はある程度、ラノベにおけるよくあるテンプレのような展開、というのが意識的に使われているのが面白かったですね。
主人公が目指すのは「事実は小説よりも奇なり」を体現するような物語性のある演出。
しかし、本作はラノベという媒体で、さらに主人公の演出をはばむのは主人公自身も語るラノベのお約束展開のようなものばかり。
結果だけ見れば、
本作の全体の流れは、ラノベとしては特筆することの少ない”よくできた展開”となっていたように思いますが、
しかし、それこそが特筆するべきアクセントとして活かされているというのはメタ的な要素を上手く扱っているなと感じるところです。
ですので、まとめますと。
本作は、周囲の勝敗を上手く調整する演出をしたい主人公、という設定をベースにして。
そこから1つ1つ、その設定に上手く合う要素を付け足したり、その設定から出せる面白さを魅せられる展開だったりというものを、非常に丁寧に作り上げたなと感じる作品でした。
わたしはこういう設定からしっかり組み上げるような作品が大好きですので、本作もその例に漏れず大満足できました。
という感じですね。
総評
ストーリー・・・★★★☆ (7/10)
設定世界観・・・★★★★ (8/10)
キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10)
イラスト・・・★★★☆ (7/10)
次巻への期待・・・★★★★ (8/10)
総合評価・・・★★★★(8/10) 最初から最後まで余すところなく、1つ1つを丁寧に積み上げて作っているのを感じる作品。わたしはこういうのが大好きです。
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。
