ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part275】好きだった子をメイドにしたら、俺の部屋でこっそりナニかしている

 今回の感想は2025年7月の電撃文庫新作「好きだった子をメイドにしたら、俺の部屋でこっそりナニかしている」です。

好きだった子をメイドにしたら、俺の部屋でこっそりナニかしている (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 貧乏なクラスメイトを雇ってみた。このメイド、ちょっぴり怪しい!?


 清宮継司は由緒正しい名家の一人息子。だが事情があって家は継げず、別邸で一人暮らしを楽しんでいた。ある日、上流階級の同級生たちすら一目置く優等生・氷坂清耶香がメイド服を着て転がり込んでくる。

「いくら俺でも、同級生を金で雇うほどクズじゃないぞ」
「雇ってくれないなら、メイド服を着た宿なし少女が爆誕するわ」
「断ってもクズになるのかよ!」
「今ならあなたが期待する『ご奉仕』もついてくるわよ?」
「…………」
「あ、ちょっと揺れたわね」

 密かに好きだった女子と一つ屋根の下なんて精神がもたない!

 けど清耶香は、たまに俺の部屋を漁って何をしてるんだ?

 

感想

 果たしてこれは面白かったのだろうか?

 読み終わって真っ先にそんな気持ちでいっぱいになる作品でした。



 と言いますのも、

 本作は一見すればシンプルにメイドなヒロインとのラブコメ作品かと思えるものですが、実際読んでみれば分かる一言で主人とメイドというだけでは言い表せない二人のお話となっており、この主題となるだろう主人公とヒロインの真実にはある程度の驚きはあり、これからどうなってしまうんだと気になってしまうものではあったかと思います。



 しかし、そのメインの部分が良ければ全てヨシとなるかと聞かれればそうではなく。

 個人的にそれ以外の部分はどうも楽しむことができませんでした。





 まず第一に気になったのは、話の展開の遅さ、でしょうか。

 本作の鍵になるのはやはり主人公とヒロインの関係性。

 タイトルからも何かを匂わせているように、実はとんでもない秘密が隠されていたんだよ……という真実を知ることから話にグッと引き込むようなものとなっております。

 そのため、この真実を知るところが1巻の山場となるのは当然の流れだと思います。

 

 しかし、そこまでの話をわたしは集中して読むことができませんでした。

 これに関してはウェブ作品の特徴なのか、どうにも1つ1つの話がある程度独立しているように見えてしまって、1本の連続した話として見たときにすわりが悪いような気持ちが終始まとわりついていたのです。

 

 具体的な例を挙げるなら、主題となる二人の関係性の秘密が明かされるまでの流れ、ですよね。本作は主人公がヒロインを雇ったら、ヒロインが自分の部屋で怪しげな行動をしているぞ、というのがタイトルから示唆される面白いところになっています。

 しかし、実際作中で主人公がヒロインを正式に雇うことになるのも、ヒロインが主人公の部屋に入るようになるのも、1巻の後半になってからなんですよね。

 そして、そこから山場となる真実を明かす展開になるので、シンプルに溜めが弱いですし、読者としてこのヒロイン怪しいぞどんな秘密を抱えているんだと興味を抱く要素がないままに、急に衝撃の事実が~みたいな話になるので、正直リアクションに困ってしまいました。

 

 このような、話の唐突さというものが本作では非常に多くあったように思います。

 1話1シチュエーションの小刻みな話で楽しませることができるのは、もちろんウェブ作品ならではの強みなのだろうとは分かっています。けれど、だからといってそれぞれの話がまとまった作品となったときの読み心地を捨てていい理由にはならないのではないでしょうか。

 

 また、これに関連してタイトルから期待したものが味わえたかどうか、というのも本作はイマイチだったと言えるでしょう。

 ラノベのテンプレの1つに、エロっぽいことをしているような描写で実際全然エロいことをしていない章の切り替わり直後の導入、というものがあると勝手に思っています。

 本作のタイトルはナニをしている、なんて単語でえっちなメイドさんなのかと思わせておいて、実際はえっちな話なんかではなく真面目に驚きの真実があるんだよというものなので、まさしくこのラノベのお約束に当てはまっていると思っています。

 ですので、このタイトルそのものは良くできた釣り針だと思うのですが、実際の釣られた先のお話しというのが先述の通りでして……タイトルで釣るなら釣るでその部分はしっかり1冊かけて面白みを出してほしいのに、後半になって急にヒロインが怪しいだの言い出して、急に二人の関係性がーとか言い出すのですから、釣られておいた側のセリフとしてむちゃくちゃなこと言いますが「もっと上等なものに釣られたかった」と思ってしまいますよ。




 さて、ここまでの話では主にメインの話になるところに触れまして。

 タイトルの要素は1巻終盤に集中しているという話をしました。

 じゃあ、そこまでの前半とかは一体何の話をしていたかと言いますと。

 主人公不遇からの成り上がり、です。

 ……なんか、ごめんなさいですけど、シンプルに面白くなかったです。

 

 お金持ちの学園で、主人公の複雑な出自があって、それによって周囲からの態度が腫れ物に扱うようなものになっている。しかしそこからヒロインとの関係性が始まったことで、主人公が本気出すわみたいな態度になり、学園を牛耳ることのできる派閥を形成していくぜ、みたいな話のどこが面白いのかが普通に分かりません。

 

 まずそもそもに、主人公とヒロインの思いも寄らぬ関係性というものが主題にある以上、不遇からの成り上がりのような爽快感やスカッとする気持ちはあまり必要性のあるものとは思いませんでした。

 とはいえ、メインになる部分はお金持ちの複雑な家庭環境のようなものに通じる部分があるので、それが二人以外の外の世界(すなわち学園でのアレコレ)にも大きく関わってくるんだよというのであれば、そこを掘り下げること自体は良いと思います。

 ただ必要以上に主人公を不遇な立場であるように描き、そこから逆転するような様子を入れる意味はなかったのではないでしょうか。特に本作では、お金持ちの学園でありながら、普通に暴力沙汰が横行する治安の悪い学校というのが違和感を感じさせますし、それに対してやはり暴力で解決する主人公というのにも何と言えばいいのか分かりませんからね。お金持ちの中には、その立場故に平然と悪事を働く奴もいるというのはよくある展開といえばよくある展開ですが、それが暴力って……。

 先ほどの話にも繋がりますが、結局この学園周りの主人公の立場とそこから何を目指すのかという行動目標というのが、主人公とヒロインの関係性という主題にどういう繋がりがあるのか見えづらい独立した要素を持ちすぎているのが、読み心地の悪さになっているんですよね。



 というわけで、まとめますと。

 主人公ヒロインの関係は気になる。

 しかし、タイトルの扱いや展開の連続性が微妙。

 学園の雰囲気や主人公の立場のような序盤の展開には辟易。

 話の要素要素にもっと繋がりを持たせて、1冊の話として楽しませて欲しい。

 独立した1話1話で楽しむだけでOKなのはウェブだけにしてください。

 というような感じでしょうか。

 

 表紙を含めて、ヒロインのビジュアルとかは良いメイドさんでしたし、ファッションメイドではなくメイドであることにしっかり意味を持たせるような内容がある点も大変良かったと思っています。しかし、面白いかどうかで言うと……

 

総評

 ストーリー・・・★★ (4/10)  

 設定世界観・・・★ (2/10) 

 キャラの魅力・・・★★ (4/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10) 

 次巻への期待・・・★★★ (6/10) 

 

 総合評価・・・★★(4/10) これは果たして面白かったのだろうか?(反語

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。

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