今回の感想は2022年2月の集英社オレンジ文庫の新作「聖女失格」です。
※2巻まで刊行中(2022年11月)、2巻まで読了済みですが今回は基本的に1巻のみの感想です。
※画像はAmazonリンク
あらすじ(BWより引用)
百年に一度、滅びの未来を回避するために行われる皇帝選。
そこでは数多の候補が聖女と誓約し、皇帝の座を競う。
初代聖女の末裔ながら、何の能力も持たないシルヴィア・ベルニア聖爵令嬢十三歳。彼女は家族のみならず領民からも虐げられ、今日もゴミを漁って生き延びていた。ところが……聖誕の鐘が鳴り、聖女が誕生する夜、その資格がないはずのシルヴィアの眼の奥に十字架の聖痕が発現した。密かに家を飛び出したシルヴィア。そして、運命と呼ぶべき出会いを果たすけれど……。
これは聖女失格の烙印を押された少女が、最強の聖女を目指す物語。
感想
いやぁ、これはすごく良かった!!!
こういうの大好きですよ!
1 作品概要
まず改めて最初にあらすじを補足して、わたしなりに噛み砕いた作品の概要をお話しさせてください。(長いです)
本作はファンタジー作品。
かつて世界は瘴気と妖魔が蔓延っていて滅びようとしていて、しかし四人の聖女によって妖魔皇の心臓が封印されたことで、その滅びの未来は回避された。
そして100年に1度新たな大聖女と皇帝を決めるための儀式、皇帝選を行い瘴気や妖魔を払うことで世界の滅びを遅延し続けている……、そんな感じの世界観になっています。
聖女とは伝説の聖女の末裔に生まれる、聖眼と呼ばれる「何かしらの未来を見通す能力」に目覚めた少女のことを指します。
皇帝選は、聖眼に目覚めた聖女候補と、その補佐役であり次代の皇帝になる皇帝候補の二人組でエントリーして、神の啓示によって示される様々な課題をクリアして点数を競い合うという形式になっていました。
聖女は聖眼の力と、治癒や結界、浄化などの妖魔を払う基本的な魔法を用いることでこの皇帝選に挑むわけですね。
という世界観を踏まえた上で、次にあらすじ。
伝説の聖女の一人ベルニアの家系であるベルニア家には二人の娘がいまして、それが魔力を持たない出来損ないの姉シルヴィア(本作の主人公)と、伝説の再来とも言われる優秀な妹プリメラ。
プリメラが聖女として聖眼に目覚めたのは言うまでもないこと。
しかし魔力を持たず初歩的な魔法も使えない出来損ないとして誰からも見捨てられゴミを漁って生きるようなシルヴィアにも、聖女になるための資格である聖眼が目覚めてしまって……。
シルヴィアは自分が聖女になれると家族に知られようものなら、必ず妹の邪魔になるからと殺されることを察して、即座に街から逃げ出すことになります。
しかしボロボロな少女の足で逃げるには限界がある。
そんな彼女を拾ったのが謎の青年ルルカ。
ルルカは心臓を封印された妖魔皇であり、人間たちが封印しているはずの自らの心臓が紛失したことを知ったことで皇帝選に参加する必要があったのだと言います。
そこで拾ったシルヴィアを聖女候補として、自らは皇帝候補――体外的には娘とお父様として二人で皇帝選に挑むことになるのだった。
というのが本作の概要。
ここまでの説明で察する部分もあるかもしれませんが、
本作は結構世界観や設定が渋滞している部分があるので、まずはそこを咀嚼するのは少しハードルが高いのかなと思いました。
ただ一方でその世界観を楽しむことができれば、もう勝ちですよ。めっちゃ面白くなってきます。
さらにこの1巻時点で説明されたこの皇帝選や聖女に関して気になるだろう部分(1巻では説明しきれなかっただろう部分)は2巻ではさらに補足されて、どんどん続きが楽しみになっていきますしね。
2 感想
そんな概要を踏まえて感想ですね。
まず、シルヴィアとルルカの関係性がすごく良い!
ルルカは拾ったシルヴィアに過保護すぎるくらいに構って、聖女としての知識はもちろん、執事のスレヴィに命じて一般教養もしっかり教え……更には妖魔流のスパルタトレーニングまでするんですよね。
実家から逃げて普通に生きていたいだけのシルヴィアは、自分が徐々に変な方向に成長していってるのを自覚しながらも、世界で初めて自分を救ってくれたお父様には感謝しているし、生きるためには教養も力もつけなきゃいけないし、そもそもお父様が逃してくれないので、何だかんだで逃げ出せない。
そうして一緒に過ごす中で、偽りで始まった娘とお父様って関係が、少しづつ本当の家族というかパートナーのような、それとも恋b……と気のおけない関係になっていくような雰囲気、これが見ててすっごく微笑ましいんですよ!b
それにシルヴィアは、毒親から逃げて一人で生きていくんだ、って強かであろうとするけど。
お買い物を一人でするのに緊張してたり、カフェでお父様に何でも好きなもの注文していいぞと言われてすっごい悩んでたりする、13歳の年相応の幼さがまだまだいっぱいなのが可愛かったりしますし。
ルルカが父親らしいこととして、毎晩寝る前にシルヴィアに物語の朗読をするシーンとか。
お父様の初恋話を聞いて、シルヴィアが一言美化しすぎてて気持ち悪いとばっさり切り捨てるシーンとか。
こういう過保護なお父さんと、ツンケンしてる年頃の娘感がちゃんと滲み出てる感じが見てて楽しいですし。
そして最後にはね、アレですよ。
もう異種族カプ大好きなわたしの堪らんやつきましたし!!!
一蓮托生、皇帝選に挑むパートナー、父娘、それとも……、と一概にコレとは言えない二人の関係性は本当に見てて飽きない。
とにもかくにも、シルヴィアとルルカの関係が良いのです!
そしてこのメインの二人以外のキャラも個性的で好きなんですよ!
まずシルヴィアとルルカが皇帝選で最初に出会った他の聖女候補のロゼと、彼女のパートナーである少年アーク。
ロゼはシルヴィアをおねえさまと慕っていて、アークはロゼを守る小さな騎士って感じのキャラ。この二人のカプがなかなかどうしてわたしのセンサーにビビッと来るんですよ。
今後の活躍が楽しみだよね。
次に出会った聖女マリアンヌ。
彼女は「数週間先までの天気が視える」という聖眼の能力を持っているせいで、天気予報女とか揶揄されてる子なんだけど(まずこの時点で面白い笑、この能力を今後どうやって活かしていくのか分からないし)。
何より、この子めっちゃがめついんだよね。
一言で言えば、点数お化け。
自分の点数が増えればめっちゃ喜んで、減るとうぎゃあって発狂して、他の人に点数奪われると邪魔するなと言い出すタイプの子なのよ。(2巻になると、自分が助けようとした人に余計なお世話だみたいなことを言われると「黙れ私の点数!」とか言って強引に助けますし(笑))
普通にしてれば自分の信念を曲げない気高く美しいお嬢様っていうキャラだからこそ、このギャップが見ててすっごい笑えるんですよ。
そしてそんな彼女のパートナーになったのが。
ルルカお父様の執事であるスレヴィで。
彼は基本的に毒舌で、主人のルルカにも口が悪いんですが。
マリアンヌと一緒になるともうどっちもどっちで悪口が止まらないのよ。スレヴィがマリアンヌの聖眼を洗濯くらいにしか役に立たないみたいなこと言ったこよから「天気予報女」「洗濯男」ってお互い言い始めてさ……。けど、なんだかんだでお互いの良さは認め合ってるみたいな、喧嘩ップルみたいな感じ。見てて本当にニマニマしちゃう。てぇてぇですよ。
この二人の関係がどう変わっていくのか、すごい気になるよね。
またスレヴィはシルヴィアの教育係としてもいい味わいを出してくれてましたね。
最後に、触れなきゃいけないのはシルヴィアの妹プリメラ。
嘘偽りなく天才で、聖女としてできないことはない。聖眼の能力も「自分が何をすべきか」が見通せるらしく、半分未来予知みたいな能力なんですよね。
そんな彼女は天才天才と持て囃される中で、姉だけは自分を他の人とは違う目で見てくれるから、という理由でシルヴィアに執着しているなかなかヤバい子なんですよ。
あと普通にシルヴィアいじめて楽しんでたり、一人称ボクだったり、毒親に育てられてナチュラルに自分の目的さえ達成できればその他の人はどうなってもいいよね思想を持っていて、かなり癖が強いです。
そんな圧倒的に強者であるプリメラに対して、妖魔流トレーニングを積んで基礎的な身体能力は上がっているとはいえ「未来を数秒〜数分だけ見ることができる」シルヴィアがどうやって立ち向かっていくのか。
これが物語の肝になって、皇帝選を勝ち抜くための緊張感やハラハラを生み出してて良いですよね。一筋縄ではいかない姉妹の衝突がどうなっていくのか、これもやっぱり気になるところです。
と、まぁ、色々言ったんですけど。
まとめると。
・シルヴィアとルルカの関係がすごい好き!
・他のサブキャラも個性的だから、今後彼女たちも交えたシルヴィア組がどう動くのか気になる!
・姉妹の確執がどんな波乱を生み出すのか、ドキドキハラハラ!
って感じですね。
総評
ストーリー・・・★★★☆ (7/10)
設定世界観・・・★★★★ (8/10)
キャラの魅力・・・★★★★☆ (9/10)
イラスト・・・★★★★ (8/10)
次巻以降への期待・・・★★★★☆ (9/10)
総合評価・・・★★★★☆(9/10) シルヴィアとルルカお父様を見てるだけで最高だよ!!!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。