ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【シリーズまとめ感想part16】ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?

 今回感想を書いていく作品は「ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?

 電撃文庫より2019年の間に刊行されていた全2巻のシリーズ。作者は新八角。イラストはちょこ庵

ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか? (電撃文庫)ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?(2) (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク(1巻および2巻)

 

 

 まずは本作の概要からご紹介。

 ””舞台は24世紀の荒廃してしまった東京。合成食糧や電子ドラッグが溢れかえり、自然界に流出したバイオテクノロジーによってドラゴンみたいなファンタジー生物が誕生してしまっている世界では生きるために人々が鎬を削り合うしかないような状態。

 そんな中、天使のようなメイドの料理人ウカと食材を狩って荒くれ者たちには睨みを聞かせる給仕係リコ、二人の少女が経営する食堂があった。《伽藍堂》――摩耗してしまった人々の心に食の喜びを届ける、そんな願いで糸生れている安らぎの場所。ファンタジー生物から機械兵器まで、未知なる食の美味を届ける二人の日常をご賞味あれ””

 といった感じ。ジャンルとしては終末ファンタジー×グルメ×ちょっぴり百合といった感じですね。

 そんな本作最大の魅力はまさしくこの濃厚な世界観とそんな世界観だからこそ生み出せるちょっぴり異質な飯テロ要素でしょう。なので今回はこの点についてをお話しようかと思います。

1:バイオテクノロジーで彩る終末世界

 本作の世界観。

 既にご紹介したように近未来で、しかし荒廃してしまった世界が本作の舞台になっております。すごくざっくり言うなら、技術力が発達しすぎて戦争やら何やらで文明が崩壊してしまった世界、そんな感じですね。

 そしてこの作品の世界観で特に力を入れているのはバイオテクノロジーや生物化学といった分野。この部分では、実際に現代の化学で明らかになっているデータを基にした描写が数多く見られます。横文字や科学っぽい単語が出てきたら、それをググれば大体ちゃんと出てきますよ。

 この現実の知識を作品に組み込んでいて、荒廃した世界観だったりファンタジー要素の理屈を説明していること。これが個人的には非常に見事だと感じさせられました。読む人によっては小難しいお話に見えてしまうかもしれませんが、その場合はそういうファンタジー設定として読んで十分に楽しめるはずです。このラノベっぽい読みやすさも意識している点も良い塩梅でしたね。

 

2:壊れた世界だからこその飯テロ

 この科学による説明というのは世界観だけでなく料理描写にも遺憾なく発揮されていまして。

 本作の売りである異質な飯テロでは、機械だったり不定形のスライムだったりを普通に料理して食べます。これだけなら普通にファンタジーで済むお話なのですが、本作のこれらはバイオテクノロジー的な説明が成されているところが肝となっているんですね。それは端的に言えばどんな異形の食材であっても、それが現代で言う〇〇に相当するという認識が読者に説明されているということ。これって本当に重要なところで。

 

 設定がちゃんとあるから、狩ることから調理するまで、という食事をするためのステップが1から描くことができるようになっているんですよ。

 

 本作は終末世界が舞台。ここにおいて食材というのは当たり前にあるものではなく、自分たちで手に入れなきゃいけない。これを曖昧にしてはいけない。ここが厳しい世界であるということが、食材を狩るという過程があることで、しっかり魅せることができるのです。

 それと同時に、どんな異形なものであっても生物として正しく調理すれば美味しく食べられる、という説明があるから。その料理描写には「これは飯テロなんだ!」「美味そう……ッ!」「食ってみたい!」と思わせるたしかな旨味と香りを感じさせてくれるようになっています。

 そして厳しい世界で手に入れた食材で、一度きりの料理かもしれない、束の間の幸せかもしれない。生きるためではなく、楽しむための料理なんていう贅沢品を味わう喜びが伝わってくるんですよ。

 

 終末世界をきちんと作り上げていて、終末世界にあるような食材を使った料理をする。

 一言で言えばこれだけの内容。

 しかしこれを1から描くためにどれだけの技があるかを感じると脱帽するしかありません。

 

3:ウカとリコの絆

 そして、これだけの世界観と飯テロを描写できる作品となれば、キャラクターの魅力に味がないなんてことはなく。

 本作の主人公となる二人の少女ウカとリコ。2巻においてフォーカスされて描かれてるこの二人の絆と関係性、終末世界だからこそ食の喜びを届けたいという純粋なウカの願いと、それを支えるリコの戦いと愛情。

 これがもう尊いとしか言いようがなく!

 説明するより読んでくれ!

 って感じで、この部分にも是非注目してほしいと思います。


おわりに

 さて、今回の感想はこんなところで。

 荒廃してしまった世界で飯テロする、ちょっぴり変わった風味の作品。

 是非とも気になった方には読んでみてほしいです。わたしとしては、ものすっっっごく面白かったです! 巻数も少ないので読みやすいですしね。

 とはいえ、わたしはもう少しウカとリコ、二人の日常と食事を見ていたかったなぁって思っていて、巻数少ないのはそれはそれでちょっぴり残念かも笑。

 

 というわけで、1巻の購入リンクを貼っておくので気になった方はチェックしてみてください。BOOKWALKERの方では2巻とも読み放題の対象になっているので、そちらで読んでみるのもいいかもしれませんね。

 

Amazonリンク

ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか? (電撃文庫)

 

BOOKWALKERリンク

ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか? - ライトノベル(ラノベ) 新 八角/ちょこ庵(電撃文庫):電子書籍試し読み無料 - BOOK☆WALKER -

 

 

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