ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part212】壊れそうな君と、あの約束をもう一度

 今回の感想は2024年10月のMF文庫J新作「壊れそうな君と、あの約束をもう一度」です。

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あらすじ(BWより引用

 2人の関係は幼なじみから他人、同居人と変化を遂げ、これから――。

 

 月城廉司は、高1の夏頃から疎遠になっていた幼なじみの少女・望月祈織と一つ屋根の下で暮らしている。

 ただ、2人の間にできた時間的、精神的溝は浅くなく、関係を改善したいと思いながら何もできないまま高2の始業式を迎える。

 祈織と同じクラスになり、これから彼女に歩み寄ろう、あの日にした「約束」を果たそうと、決意を新たにする廉司。

 少しずつ関係は動きだす――と思われた矢先、廉司の秘密を知る愛華が告白をしてきて……。

 他人にも特別な関係にもなれる。

 近そうで遠い「幼なじみ」の2人が、すれ違い、成長して変化しながら歩んでいく。

 大切なものをもう一度見つけるための青春の1ページ。

 

感想

 この主人公、好きになれねぇ……。




 と、第一声が愚痴で始まってしまって申し訳ないですが、まずは本作のあらすじから。

 

 主人公・月城廉司とその幼馴染のヒロイン・望月祈織。二人は昔こそ両親ぐるみで付き合いのある仲の良い幼馴染だったが、中学高校と成長する中で徐々に疎遠になってしまっていた。

 しかしある日、祈織の両親に訪れた不幸をきっかけに、祈織は月城家で一緒に暮らすことになる。果たして、二人の関係は改善できるのだろうか……、とそんな感じで始まるお話です。



 実に等身大の思春期の男女を描いた恋愛作品。

 作者のあとがきで述べられているように、本作のキャラは誰もが弱みを抱えていて、それ故の自分からなかなか他者に踏み込めなかったり、自分に自信が持てなかったりしていて。

 そんな自分自身に悩みながら、少しづつ成長していく。それが売りとなっていた作品だったかと思います。

 

 ……しかしながら、個人的にはそういう作品の押し出したい部分を理解して、そういうキャラを描いていると分かっていながら。

 それでもこの作品の主人公が受け入れがたい。

 

 というのも、本作の主人公、作中を通して常に自分のことしか考えてないんですよ。

 自分は幼馴染のことが好きだ。共に暮らす仲で関係が改善できたら良いな。幼い頃の約束、彼女を守ってあげたい、彼女が笑顔でいてほしい。彼女を悲しませてしまう自分が情けない。何もできない自分がもどかしい。彼女から自分は恋愛対象じゃないと言われて気が滅入ってしまう。それなら変な期待とかさせないでほしかった。クラスメイトのギャルの女の子はそんな自分のことをちゃんと見てくれる。だったらそれに流されてもいいかもしれない。そんなこと考える自分がやっぱり嫌いだ。

 ……、という具合で、とにかくこの主人公の内面で描かれる内容って「自分が」「自分は」「自分を」というものしかないように、わたしには見えてしまう。

 幼馴染について考えているようで、その実、幼馴染について考えている自分のことしか考えてないんですよ。幼馴染のことをどうにかしたいと本気で思うならまずはそれ相応の行動や言葉があるはずなのに、それはなくて。ただ過去の思い出ばかり振り返っては自分はこんなに好きなのにって思ってるだけ。それで、幼馴染が何を考えているか分からないだの、自分は幼馴染の気持ちに気づいてやれなかっただの言われても、そりゃ「自分のことしか考えてないからだろ」としか言えないわけで……。

 

 分かってるんです。

 そういう悩みに向き合って、少しづつ成長するお話だって。

 

 分かっていても、見るに堪えないんですよ……!

 自分が自分がって自分アピールしかしない男を見て、それも自意識過剰とか自信家というわけでもない、うじうじぐだぐだした悩みとか愚痴ばっかりの自分語りとかそんなのを見て一体わたしはどうすればいいのですか。

 楽しくないのは当然として、別にそれを応援したくなることもないですし、かと言ってそういう作品だと分かっているからそれを批難するわけにもいかない。

 

 置き場のない感情がずーっとまとわりつく読書時間……、これ割ときついんですよ。

 もしも折れ線グラフがあったら、読んでいる間の感情が常にマイナス10くらいで低空飛行を続ける感じです。終盤では主人公もようやく、言動の伴わない無駄な思考だけ状態から、何もしないよりは何かをして後悔したほうがいいと幼馴染のために初めて動き始めたことで状況がある程度改善はされましたが。

 それでもマイナスがゼロか、ちょっぴりプラスになったくらいなので1冊全体のトータルとしてはやはりマイナスなのでは? と思ってしまう絶妙なさじ加減。

 

 更に言えば、作品全体のどんより感に加えて。

 主人公へ好意を向けてくるクラスメイトのギャルの女の子。

 この子もまた、物語の不安要素として配置されていて、終始主人公の心を揺さぶっていくものだから。読者として安心とか気が緩まるような状態が1冊のどこにも存在しなくなっている点で、もはや隙がないと言えるのではないでしょうか。

 読み手に鬱屈とした気持ちを貯めるのに余念がなさすぎてもうわたしの読む気力がゴリゴリ削られますよ。

 

 そして、こんな主人公を生み出してしまったのは正直幼馴染のヒロイン側にも原因があるんだろうなぁと思えてしまうのも辛いところ。

 言葉が足りなかったり。主人公への態度が曖昧だったりするのは。正直、お前もお前で自分の保身しか考えてないのかと言いたくなる気持ちがありますが。それよりも、彼女の境遇を思えばそういう性格になっても仕方ないと思えるので全然納得ができます。

 しかし、そんな幼い頃から泣き虫な幼馴染というのが、この主人公には良くなかった。これによって、俺が守ってやらなきゃという傲慢な思いが芽生えていたのだろうし、そしてその気持ちを恋愛にまで拗らせさせていたのでしょうから。

 更に、現在も。両親を失い。頼れる人もいないからこそ、主人公を寄る辺に依存してしまうしかないような状況が用意されていて。それがまた一層主人公の自尊心というか自己肯定感というか、そういうものを高めてしまうから。

 そういう意味では、割れ鍋に綴じ蓋とも言える関係は良いものかもしれませんけどね。依存関係として正しい在り方なのかもしれませんが。

 そうであったとしてもわたしには、自分のことしか考えない主人公とそんな主人公を支えにしてくれるヒロインという関係というのは、あまりに作品全体として主人公への忖度がありすぎてヒロインの魅力を堪能することもできず、素直な恋愛的な甘酸っぱさやもどかしさも味わうことができなかったので、残念だったなと思います。



 ともあれ、

「弱さを抱えた思春期とはこういうものなのか?

 正直、見てて普通にしんどい……、特に自分のことしか考えない主人公くん。」

 というのが、わたしの感想になりますね。

 もう少し幼馴染のために何かを考えて行動して、それでも躓いてしまって、悩んで悩んでまた幼馴染のために……、と素直に努力できるようなものであったら良かったのにと思います。ヒロインを救われる立場、自主的には行動できない境遇にするなら、なおのこと。これじゃあ全然ヒロインが報われないし、読み終わって晴れやかな気持ちにはなれないです。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★☆ (5/10)

 設定世界観・・・★★☆ (5/10)

 キャラの魅力・・・★★ (4/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻への期待・・・★★ (4/10)

 

 総合評価・・・★★☆(5/10) 自分のことしか考えられない主人公はわたしには見てて辛いです

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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