ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part209】はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。

 今回の感想は2024年10月のファンタジア文庫新作「はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。」です。

※今回の感想は過去に例を見ないほどの酷評になります。ネタバレとかを気にしている余裕もないと思います。それをご了承の上、ブラウザバック等の対応をよろしくお願いします。

はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。 (富士見ファンタジア文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

 いつもであれば、あらすじから始めるところですが。

 今回は最初に総評から行います。その後、感想を書いていきます。

 

総評

 ストーリー・・・★★ (4/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・ (-10/10)

 イラスト・・・★★ (4/10)

 次巻への期待・・・ (0/10)

 

 総合評価・・・(0/10) 本当に申し訳ありません。これはわたしにとって読む苦痛でした。

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

感想(感想全て文字色を白にしています)

 まずは感想を書くためにも、本作の概要からお話します。

 

 本作はいわゆるロボット系作品です。

 宇宙怪獣によって侵略されている世界で、それに対抗できるのは「主人公らしさ」を力に変換する主人公性人型兵器スターゲイザー。その操縦者であり、誰もが憧れるヒーローのような少女・小日向茜は強大な宇宙怪獣との戦いによって、その命を落としてしまう。

 そして彼女の幼馴染であった、本作主人公の青年・高橋嗣道は彼女の死を目の当たりにした絶望で塞ぎ込んでしまう。しかしそんな彼の前にスターゲイザーの開発者であるという少女・山田麒麟が現れ、彼女の導きによって嗣道は自分が茜によってスターゲイザーの後継者に選ばれていることを知り……、という感じで始まるお話です。

 

 タイトルが示すようにヒーローだった少女が亡くなった後に残された者たちの戦いを描くお話です。

 それだけでなく塞ぎ込んでいた何の取り柄もない青年が英雄にはなれなくても勇気を奮わせて戦う、そんな主人公へと成長していくお話が期待できるでしょう。

 更には本作は残された者たち、というのがキーワードであり。茜を中心に集まっていた五人の少年少女たちがそれぞれの意志と覚悟を胸にときにはぶつかり合って、ときには協力して、再び手を取り合って宇宙怪獣と戦うお話でもありました。

 

 と、この要素だけを見ればとても面白そうな作品だと思いますね。

 はい、実際設定やおおまかなストーリーラインだけを見ればかなり王道にロボット作品やヒーロー作品を踏襲しながら、そこに少年少女たちの想いをしっかり乗せている、良い作品だったと言えると思います。

 

 

 

 じゃあ、この作品は一体何が問題なのかと。

 最初に書いた総評でお察ししてくれる方もいるかもしれませんが、キャラクターです。

 特に、本作の主人公である高橋嗣道くん。

 わたしがこいつが反吐が出るほどに嫌いです。好感を持てる要素が一切ない、どころがむしろ「くたばれ」「寝言は寝て言え」「もうお前は喋るな」そんな風に言いたくなるくらいです。

 そしてそんな男が主人公として、常に物語の中心として描かれる作品。そんなものはわたしにとってはただの精神攻撃でしかなく、読む苦痛としか表現のできないものだったのです。読んでいて未だかつてないほどの純粋な気持ち悪さと吐き気を感じてしまいました。

 

 ……、一体何がそんなにわたしは受け入れ難かったのか。

 それを努力して言語化しようと思います。

 

 まずは冒頭部分です。

 冒頭では、正直この主人公好きになれねぇなというくらいの感想でした。

 幼馴染である茜を失ってしまい、そのショックで引きこもる嗣道。他の幼馴染たちは、それぞれが自分にできる努力を重ねる中、何もせずただ自堕落に生きているだけの男……、

 これだけで第一印象はかなり悪いものではありましたが。これに関しては問題ないと思っています。目の前で幼馴染を失ったショックは計り知れないでしょうし、それで無気力になってしまうことだって理解はできます。誰も彼もが大切な人を失って、それを背負って前を向いて進めるわけではないのですから。

 それに、この主人公はここからきっと徐々に心を持ち直して成長していくんだ。と考えれば、導入部としての「この先への期待」をしっかり持たせるものでしょうし。冒頭で最底辺にいるのなら、後は這い上がっていくだけ、こういう右肩上がりの物語は面白くなると相場は決まっている。・・・そう、思うこともできたでしょう。

 

 この主人公が「茜のいない世界に価値なんかない」とか言い出さなければ。

 

 この発言だけは見過ごせないですよね。

 なにせ、この発言からは「主人公が、幼馴染の茜を誰よりも何よりも大切に想っている」そういうことが伝わるセリフだと思います。

 

 しかし、読者はそれを知らねーのですよ!

 てめぇが幼馴染とどういう関係を築いてきて、どんな日々を過ごしてきて、そして宇宙怪獣との戦いが始まってからてめーが一人で戦う幼馴染のために一体何をしてきたのか。そういうのが一切語られてないのに、幼馴染がいない世界には意味がないとか言われても読者は誰も共感なんかできませんし、てめーの発言の重さだって理解しないんだよ!!

 おめーは幼馴染と一緒に戦ってきたのか?

 強敵を前にする幼馴染とどんな会話をしたんだ?

 幼馴染が死ぬくらいの激闘の中でおめーは一体何をしていたんだ?

 まずはそこを語れよ。そんなに幼馴染を失ったら世界に絶望するくらいの強い感情があるなら、それを見せてみろよ!それからじゃねーと話のしようがないでしょうが!てめーの発言に重みなんか感じねーし馬鹿なこと言ってる暇があれば引きこもりをやめろ!

 その後も、自分が後継者に選ばれたことを知って「無理」「自分のような凡人にはできない」とか舐めた発言をしやがって!甘ったれるのもいい加減にしろよ!てめーがそんなふうにアホな依存をした大切な女からの指名だぞ?それを受け入れないっててめーは大切な人を偶像化するだけして、その彼女の言葉には耳を一切貸さない自己中心的すぎるクソオナニー野郎ってコトでいいんですか?そういうことですよね!そうじゃなきゃそんな発言できませんものね!

 はいはい、理解しました。

 とりあえずてめーはいっぺんくたばれ!!!

 

 

 ……と、まぁ冒頭ではこんな風に思っていました。

 わたしの中でのこのクソ野郎に対する好感度は地の果てを突き抜けてマイナスの極限に達していたかと思います。

 

 しかし、これだけで終わるわけがありません。

 いざスターゲイザーに乗ってから宇宙怪獣と戦うときもわーわーとわめきながら、自分にはやっぱり無理なんだとかほざきながら、緊張感の欠片もなく。てめーの幼馴染はその恐怖とずっと戦ってきたんだよ、っていう誰でも容易に考えつきそうなことを一切考えることもなく。配慮の欠片もない発言ばかりを重ね続けて好感度をグングンと下げていくという行為を続けていきますし? そんな調子だから、当然こいつが何のために戦うとかいう意志も覚悟も序盤は全然見えてきませんし? 序盤で亡くなった茜の意志とかを一切考えることもなくただ偶像化して盲信しているだけの男ですので、わたしからいしたら「てめーは茜のことを好きだったんだ」とか絶対に言うんじゃねーぞという気持ちでいるにもかかわらず、当然のように物語的にはこいつが茜を好きであることは明らかなため中盤や終盤で複数回に渡って言えなかった気持ちを吐き出すシーンがあり、それと同時にわたしの心の中に押しとどめていた罵詈雑言が吐き出されて阿鼻叫喚の地獄絵図が鍛造しますし? 幼馴染たちとぶつかり合って徐々に覚悟とかを見せるようになったかと思えば、脱引きこもりしたばかりで散々他人に迷惑をかけておきながら、みんなの大切なヒーローだった茜の想いをくみ続けてそれぞれが努力を続けてきた他の幼馴染たちに対して「一緒に戦おう」だの「俺を助けてくれ」だのどの口でそんなこと言ってやがるんだという、人の心を引きこもってる間に捨てたんじゃねーのこいつという言動ばかりしやがって人を苛つかますし? それまでずっと他人のことなんか一切顧みることのなかった男が急にイキリだしているようにしか見えないムーブに嘔吐感がこみ上げていたところに、終盤では一人で命をかけて戦うとかいうムーブで更に追い打ちをかけてくる始末ですよ。好感度マイナス限界突破しておいて、そのマイナス分を帳消しするどころか、マイナス方面にどんどん突っ走っていってそういう一人で全部背負うみたいな覚悟を見せられて何を感じればいいんですか? 不良が雨の日に猫に傘を差していた、みたいなギャップすら感じられないただの自己中オナニーにしか見えないので本当に気持ち悪くて耐えられないのですよ。もう本当にやめてくださいって読みながら何度もお願いしました。しかしやめてくれませんでした。

 

 そして、この作品の主人公が人の心を忘れたのはもはや確定的明らかであるのですが。この作品世界そのものも人の心を失っているのが二重パンチでえぐみを与えてくるのが容赦ないと思いまして。

 それは、ここまで好感度というものの”こ”の字を忘れたような主人公に対して、周囲や世界は絶賛するんですよ!!!

 幼馴染たちは、揃って「あいつは本当は……」とか「茜が認めた男だろ」とか「お前はそんなタマじゃないはずだ」とかそんなことを口を揃えて言いますし。回想で茜自身も彼だけは自分の特別であるような発言を度々見せるのです。

 だ・か・ら!!!

 読者はこの主人公のそんな姿を見たことがねーっつってんですよ!!!

 こいつが引きこもるまで何をしていたんだ! 茜のために何をしたんだ!! 他の人が見ても認めるくらいの何があったんだ!!! それを一切語らないのに、こんなクズを具現化したような男を褒める周囲ってどうなってんだよ!!!! 人の心をどこに投げ捨ててきたんですか!!!!! お前らの方こそわたしから見たら宇宙怪獣だよ!!!!!!

 そんなクソみたいな主人公を憎く思っている幼馴染の青年がライバルキャラの用に立ち塞がる展開、ロボットモノの王道である敵ロボットとの和解という展開があるわけですけど。ここでその幼馴染の青年が、この主人公への罵詈雑言として言ってること全部正しいの! 間違ったこと何一つ言ってないの! わたしがここまで吐き連ねたようなことを大体言ってるの! 更に言えば過去回想を見れば、こいつの方がよっぽど茜を思った行動をしているの! それなのに、この作品のロボットは「主人公らしさ」というものを力に変える設定なもんだから、この幼馴染の持っている憎悪は主人公に相応しくないとかいってロボットが暴走し始めるという展開になって……、この作品世界における「主人公」という言葉がもう完全に主人公のオナニー擁護のために使われ出して、正しいことを言っている人を悪のように、あるいは主人公に救われる奴のように描き出すのが本当に反吐が出た! 更には畳みかけるように、この幼馴染の罵詈雑言を受けてこの主人公は「俺は確かに間違っていた。だから、その間違いを正しいと言い張れるように戦うんだ」とか言い出しやがる始末だよ! 後悔を背負うのは良いとしよう、過去は変えられないから受け入れるしかないのを理解したのも褒めてやろう、……でも反省はしろ! まずてめーは地獄で百回くらい人生をやり直せ!!! そのくらい反省してから、本気で人生に絶望してから同じセリフをもう1回言ってみろ!!!

 この作品読んでると過酷な世界であるはずなのに、主人公というのはご都合主義で生きているので人生イージーモードですみたいな空気をぷんぷん感じてしまいますし。甘ったれた主人公を魅せられますし。「主人公らしさ」を力に変えるという、これ以上ないほどにカッコいい主人公を魅せるための設定まであるにも関わらず、それによって主人公の好感度を下げてくるとか逆に感心すらしてしまいますよ!

 

 あとは、ヒロイン関係も軽く言っておきますか?

 主人公がクズなので、それに好意を寄せるヒロインに魅力が生まれないというのは言うまでもないことと思いますし、そんなヒロインと一緒に戦うと強くなれるんだみたいな展開をやられても冷めることは言うまでもありませんが。

 そんなヒロインに魅力が生まれない構図ですので、主人公が再び立ち上がる勇気をくれたんだってメインヒロインの子に言うシーンも一体これまでのどこにそんな要素があたんだと本気で首を傾げる上に、こいつ世界に絶望までするくらいの大切な幼馴染のことは一体どうしたんだよという、序盤の発言の軽さをさらに引き上げてもはや埃レベルのものに変えた挙げ句、本当のクライマックスではやっぱり茜への想いに戻るとかいう……、ヒロインへの誠実さという観点からも、やっぱり最初から幼馴染の気持ち1つ考えない男はクズでしかないんだなぁと思わせてくれましたと。

 

 

 ……もう、このくらいで良いでしょうか?

 ヒロインの死から始まるお話でその意志を継ぐみたいな部分が見せ場になるはずですが、この主人公序盤からずっと自分に都合の良い解釈しかしなくて、そんな主人公が立ち直って新しいヒーローになるとかいう構図は、それそのものがいちばん死んだものを愚弄してるんじゃないか? とか。

 それを如実に表すかのような最後の心ないような挿絵があることで、読者にああ結局この作品は最初に死んでしまった茜は、その事実だけあって他のキャラの糧になっていればそれでいいんだなって思い知らせてくれることとか。

 ロボットモノなのに、挿絵でそのロボットや宇宙怪獣の全貌が一度も描かれないんですけど、読者は一体どういうものを想像して戦闘描写を読めばいいんですか? とか。

 幼馴染が死んで、絶対ヒーローだった幼馴染がいなくなって、でもまだ宇宙怪獣との戦いは終わらないという相当緊迫した状況でありながら、主人公性獲得という目的があるとはいえ、あまりに緊張感のない言動ばっかりするなこいつら。とか。

 まだ色々言いたいことはあるのですけど、正直この感想を書いているのもわたしのメンタルがゴリゴリ削られるので、このくらいで終わりにします。本当に申し訳ありませんでした。