今回感想を書いていく作品は「宝石吐きのおんなのこ」です。
ぽにきゃんBOOKSより2015年から2022年まで刊行されていた全10巻のシリーズ。作者はなみあと。イラストは景。
※画像はAmazonリンク(1巻および10巻)
まずはいつものように本作の概要からご紹介。
””リアフィアット市は大陸東部に位置する、ルカー街道の宿場町として栄えた中程度の街である。
年間を通して温暖な気候から、多種多様な果物花卉の産地としても知られているその街は、魔女協会の支部こそないけれど警察局の治安維持活動は非常に優秀で、未解決の事件はほぼゼロに等しく、とても暮らしやすい土地だ。
そんな街の片隅に、店員二名の小さな宝石店があった。――『スプートニク宝石店』。””
そんなフレーズから始まるこの物語は「スプートニク宝石店の店主スプートニクと従業員クリューの日常とちょっと不思議な出来事を描いた作品」になっています
そんな本作についての感想はただ一言。
「読めば幸せで温かい気持ちに満たされる」
これなんですよ! 詳しくお話ししていきます。
スプートニク宝石店のスプートニクとクリュー
タイトルが表す宝石吐きのおんなのこというのは本作のヒロイン、クリューのこと。
宝石を吐き出すという非常に珍しい体質。
それ故にクリューはかつて悪党たちに拉致されて無理やりに宝石を吐き出させられていました。当時、旅商人だったスプートニクはそんな彼女を助け出し、自らが開いた宝石店で従業員として保護することに。
そんな過去から数年、二人は宝石店で穏やかな日々を送っている。
というのがだいたい1巻で明かされている二人の過去。
宝石を吐き出す体質は、前述の過去があったように、他人には知られてはいけない秘密。
だから、彼女を保護するスプートニクは、普段こそぶっちきらぼうで口も悪く、いつもクリューをからかったり意地悪をしているけど。彼女を害する者には容赦はせず、その身をどんな危険にも晒していき保護者としての責任を全うする芯の強さがある。
対照的にクリューは無邪気で純粋な女の子です。スプートニクの意地悪に素直に反応しては怒って、だらしない生活にはお小言を言ったり。だけど自分を守ってくれるスプートニクが大好きで、一生懸命に大人になろうと背伸びをして、従業員としてがんばっている。
と、スプートニクからしたら保護者と被保護者で、クリューからしたら幼い自分と大人な彼という関係性。
どちらにせよ、日常の中で育まれるのは家族のような絆。教え教えられ、育て育てられ、二人の生活だからこそ”お互いに”成長する二人の姿がシリーズを通じて描かれていくのです。
スプートニク視点で見れば微笑ましく、クリュー視点で見ればもどかしい、大人と子どもの心の中の違いを楽しみながら二人の関係性を楽しむ。
これが本作最大の強みなのは、間違いないと思います。
二人を見守る周囲の大人たち
クリューとスプートニク、二人の成長というのは決して二人だけで育まれるものではありません。
宝石店を中心にして繋がっていく街の住人や友人たち。宝石吐きの体質をめぐって知り合う魔法使い。スプートニク宝石店を支えてくれている家族のような宝石紹介の大人たち。
多くの人との関わりがあってこそ得られていくものです。
特にまだまだ子どもなクリューはこうして周囲の温かい気持ち、優しい想いによって包まれているからこそ純粋で真っ直ぐな子に成長しているのだということが読めば読むほどに伝わってきます。
先ほどはクリュー視点、スプートニク視点で良さを述べましたが、わたしはこの周囲の視点で本作を読んでもめちゃくちゃ楽しめると思っています。
これをいちばん強く感じたのは、クリューはじめてのおつかいのお話。
文字通りにクリューがはじめてのおつかいをするお話なんですが、これがマジではじめてのおつかいなんですよ。
見てて少しハラハラしながら、道を間違えたりしてると「あー、そっちじゃないそっちじゃない」みたいに思って、おつかい達成できるとホッとして「良かったね」と言いたくなるような。そんなクリューのおつかいを別に自分の子どもというわけでもないけど外から見守りたくなる気持ち、これを感じてみてほしいんですよ。
保護者なスプートニクの視点とは別で、周囲の大人たちの気持ちがよく分かると思います。
この例に挙げたはじめてのおつかいみたいに、ただの日常だからこそ読んでいるだけで本当に心が温かい気持ちで満たされていく。読んでいる時間が何よりも心の安らぐ時間になっていく。
それが本作特有の空気感で魅力だと思っています。
こんなにも読み心地が良い作品には滅多に出会うことができませんよ。
だから、是非とも色々な人に読んでみてほしいと思います。
サブキャラ紹介
ここまでは具体例に名前を挙げていなかったですが、じゃあ実際にクリューとスプートニク以外にはどんなキャラがいるの? というので、いくらかサブキャラたちを紹介したいと思います。
まずは街の警察のお姉さん、ナツさん。彼女は常識人で真面目というのもあって、ズボラで維持の悪いスプートニクとは犬猿の仲。それもあって、たびたびスプートニクとは顔を合わせれば喧嘩をしたり、クリューちゃんの保護者としてしっかりしなさいとアレコレ口出ししたり。警察という職業柄もあって、頼れるお姉さんというイメージが本当によく合ってて”あのシーン”とか”あのシーン”はもうめちゃくちゃカッコいいんですよね〜!
続いて魔女協会という組織に所属する青年ソアランと彼に想いを寄せる部下のイラージャ。
彼らは魔法使いであり、すごいざっくり言えば魔法に関する事件などの調査をしている人です。とある魔法少女を追ってリアフィアット市にやってきたみたいで……、という感じで出会います。
この二人は、本作のメインカップルです。わたしの中では!(クリューとスプートニクはカップルというには少し違いますからね。)
なので見ててすごいニマニマできます。特に二人が追っている魔法少女との関係性を含めると、それはもうニマニマニマニマなんですよ。個人的にあの魔法少女、嫌いな人いない気がする(笑)
また魔法関連の事件を扱う組織の人だけあって、ほのぼの日常の裏にあるシリアスで様々な活躍を見せてくれます。
またイラージャは恋する女の子同士と言うことで、クリューとは少し年の離れたお友達のような関係として良い味を出していましたよね。
あとは宝石店関連でスプートニクのお店にアレコレ手を回して、スプートニクとクリューの生活を守ってくれているユキさんやクルーロルさん。
ユキさんはスプートニクの姉のような感じで、クルーロルさんはスプートニクの養父でクリューのおじいちゃんみたいな立ち位置になるでしょうか。
様々な温かい関係性に満ちた本作の中で”家族”を象徴する人たちと言っていいでしょう。ユキさんは、他にも色々あったりしますが、まぁそれは置いといて。
この二人が加わる物語は、もう言うまでもなく良いものなんですよ。
あとはリアフィアット市の住人で、カフェのウェイトレスをしているエルサさんだったりがいますが主なサブキャラとしてはこんなところでしょうか。
どのキャラもクリューとスプートニクの関係に良い刺激を与えながら、様々な物語を展開する重要な人たちです。
読むに当たって、少し大変だったお話……。
本作を出版していたぽにきゃんBOOKSさん、廃刊してるんですよね💦
なので、紙媒体で作品を探すのがめーちゃくちゃ大変でした。新品でも中古でも見つからないのですよ。
電子で読まない派の人間はこういうときに苦労しますよね。
最終的にはAmazonで新品のものを買っていたのですが、1巻2巻は新品がなく近くのブックオフで手に入れてました。
なので、読むなら電子の方が楽だと思います。
というちょっとしたわたし個人の苦労話でした。
おわりに
最初に述べたようにとにかく心が温かくなる作品です。
クリューとスプートニクに関係性、クリューを見守る周囲の大人たちの優しさや頼もしさ、子どもを大切に思い育てる空気感が作品全体に広がっているからこそ生まれる味わいだったと思います。
この感覚は是非、実際に読んでみて感じてほしいものです。
というわけで、今回の感想はおしまいです。
最後に1巻のAmazonリンクとBOOKWALKERリンクを貼っておくので気になった方はチェックしてみてください。
Amazonリンク
宝石吐きのおんなのこ ~ちいさな宝石店のすこし不思議な日常~ (ぽにきゃんBOOKS)
BOOKWALKERリンク
宝石吐きのおんなのこ ~ちいさな宝石店のすこし不思議な日常~ - ライトノベル(ラノベ) なみあと/景(ぽにきゃんBOOKS):電子書籍試し読み無料 - BOOK☆WALKER -
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