今回の感想は2023年9月の講談社ラノベ文庫新作「デスループ令嬢は生き残る為に両手を血に染めるようです」です。
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あらすじ(BWより引用)
「参加者に紛れている悪魔を殺すまで、このゲームは終わらない」
アインホルン伯爵家の令嬢ヘルミーナは、幼馴染の侍女のシャルロッテと共に、北方の古城の中で『邪神召喚の儀式』という殺し合いのゲームに巻き込まれてしまう。
城にいる八名の人間の内、二人が“悪魔”となって一晩に一人誰かを殺害する。悪魔でない人間は疑わしい人間を一日一回投票で処刑し、悪魔を全滅させるまで城からは出られない。死が迫るゲームの中で、ヘルミーナはシャルロッテを守るために一心不乱に生き延びようとするが……!?
推理と死の輪廻が紡ぐ衝撃必至の人狼系デスゲームファンタジー、ここに開幕!
感想
人狼ゲームを題材にした死に戻り×デスゲームファンタジー作品でした。
伯爵令嬢のヘルミーナが次女のシャルロッテと共に、実家が所有する曰く付きの古城のお祓いのために向かったところ、そこで始まった『邪神召喚の儀式』に巻き込まれてしまうことから始まるお話。
この儀式というのが、まさしく人狼ゲーム。
城に集まった八人が悪魔や予言者などの役割をあてがわれて、人間側の全滅or悪魔を吊るまで悪魔による恐ろしい夜が続くというもの。そこに城から逃げ出すこともできず、役割を放棄しようとすればその時点で強制ゲームオーバー(死)になるという状況が加わるとデスゲームとしての緊迫感も一気に生まれてきます。
さらに、本作は主人公であるヘルミーナは死ぬたびにゲームが始まる直前に死に戻りしてしまうという要素も加わって、ただ人狼ゲームをクリアするだけでは終わらない、全ての元凶を突き止めなければならない二重の攻略が求められるのも面白い部分でした。
個人的に、この作品を読んで感じたのは、デスゲームや死に戻りという要素はあるものの、その本質として人狼ゲームの面白さを感じさせようとする描き方がされているというもの。
邪神召喚の儀式に巻き込まれた人たち。いきなり訳の分からない儀式をやれと言われてもどうすればいいのか全く分からない。この状況は初心者が集まって初めて人狼ゲームをやったときの、どうゲームを進行していけばいいのか右往左往してしまう感覚に通ずる部分がありますし。ヘルミーナが何度も繰り返す中で、生き残るためには自分が上手くゲームを主導しなきゃいけないと考えたり、あるいは自分が殺されないようにするための立ち回ろうとする姿も、何度も行うことで見えてくる人狼ゲームの駆け引きの奥深さを分かりやすく演出しています。
また、プレイヤーそれぞれの関係性や性格のせいでお前が黒なんじゃないかと疑われたり、その場でイニシアチブを取っている人は自然と白に見えてしまっていたりする、というのも実際に友達同士で人狼をやってみるとあるあると感じる部分ですよね。
人狼ゲームをする作品を書こう。
そう思っても、当然ただゲームをするだけじゃ物語にはできなくて。
初心者視点の味わい、何度も繰り返して見えてくる攻略法、プレイヤー同士の先入観による投票や襲撃。そういった要素をしっかり見せながら、ちゃんと最終的な目的も見えるお話にするにはどうすればいいのか。
そんな風に考えた時に「邪神召喚の儀式に巻き込まれてしまって儀式を始めた真犯人を見つけなきゃいけない」「主人公は死に戻りする(それぞれの役職がループごとに変わる)」という設定は実に上手な設定だなと思ったわけです。
あとはキャラ同士の関係性に着目すると。
ヘルミーナとシャルロッテの主従。女同士だけどヘルミーナはシャルロッテに秘めたる想いを寄せているという百合味が最初から感じられ、デスゲームに際しても二人で生き残るためにという気持ちをお互いにしっかり持って望んでいる姿が素直に良かったです。
ヘルミーナの婚約者になったレオンハルトと、その執事であるクリストフの主従も、最初にヘルミーナとクリストフが悪魔役になったときの会話で見えてきた関係性がなかなか良いものでした。
その他にも四人の参加者がいるわけですが、それぞれがループごとに変わる状況、変わる立場があったからこそ見えてくるそれぞれの関係性があって。そういう部分に目を向けてみると、こんな悲劇に巻き込まれてしまったことは決して幸運とは言えないけど、こんな事件があったからこそ生まれた繋がりのようなものを読後に感じられて心地良いものでした。
総評
ストーリー・・・★★★ (6/10)
設定世界観・・・★★★★☆ (9/10)
キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10)
イラスト・・・★★★ (6/10)
次巻以降への期待・・・★★☆ (5/10)
総合評価・・・★★★☆(7/10) 人狼ゲームの魅力を存分に魅せる死に戻りデスゲームファンタジーが見事でした
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。