ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part193】引きこもりVTuberは伝えたい

 今回の感想は2023年12月の電撃の新文芸新作「引きこもりVTuberは伝えたい」です。

※現在2巻まで刊行中(2024年7月)。2巻まで読んでいますが、今回の感想は主に1巻に関する内容でまとめています。

引きこもりVTuberは伝えたい (電撃の新文芸)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 引きこもり少女――VTuberになります!

 

 これは……引きこもり少女の再起の物語である。

「お前ら笑うな。笑うなよ」
「これはシリアス……シリアスな話だったよな?」
「ネットの闇に触れる事件だ。笑うなんて酷いことをしてはいけない」
「なんでトラウマ抱えているのに、無駄に高い演技力で笑いを取りに来れるんだよ!」

 少女の配信は後に「絶対に笑ってはいけないVTuberライブ」として伝説となる。

 

 ―The Show Must Go On―

 さあ、アリス劇場の始まり始まり――。

 

感想

 うん、面白かったですね。

 引きこもり少女の再起の物語、それに違わぬ強い意志とメッセージ性を感じさせてくる熱のあるお話でした。

 

 本作の主人公は、新人Vtuber真宵アリスとしてデビューした少女。

 引きこもりで対人恐怖症。画面越しのリスナーにすら緊張して堪らない。

 それでも彼女がVtuberになろうと思ったきっかけは……、彼女が伝えたいこととは……。

 

 1巻はまさしく、そんな真宵アリス誕生と彼女の中の人である詠、彼女の内面を1冊かけてじっくりと描き出す物語でした。

 そしてこの作品の見所としては、劇場型配信としてアリスがリスナーを惹きつけるがごとく読者をしっかりと惹きつけるそのエンターテイメント性を譲らない、ということだったと思います。

 引きこもりになるに至った経緯。それを語ろうとすれば、自然と重く苦しいものになるでしょう。実際、本作も彼女が抱えていた過去は決してそんなことといって軽んじることのできるものではありませんでした。

 

 しかしながら、それでもこの作品はそんなシリアスを背負いながらも。

 それをVtuberの配信というエンターテイメントに乗せる以上は、リスナーを楽しませる、この作品の読者を楽しませる、そういうスタンスを決して崩すことなく。

 そしてそのスタンスをアリスの信念として共鳴するように描いていた。

 これによって作品全体の雰囲気としても、主人公アリスの言葉としても、この作品の持つ熱量もメッセージもしっかりと響くものになっていた。

 自分自身の都合だけで始めたVtuber活動かもしれない。自分の過去は決して軽いものではなく、聞いた人が楽しくなるような笑い話ではない。それでももうVtuberとなって、多くのリスナーに見守ってもらい支えてもらっているのだから、彼ら彼女らを楽しませる義務と責任があるのだと。

 自分の都合で始めた活動なんだ。自分の届けたい言葉は全部伝えきる。その上で絶対に見てくれる人を楽しませてみせる。一歩を踏み出したらもう逃げない。引きこもりの少女にとっての大きな一歩。大切な一歩。そこから始まる暴走上等リスナー全員を巻き込んでいく全力疾走の劇場型配信。

 そんな真宵アリス劇場の始まりを語る物語として、アリスという一人の少女を語る物語として、非常に面白かったと思います。

 

 

 そしてそんなエンターテイメント性を軸とする作品であるので。

 当然ながら、真宵アリスの配信そのものがしっかりコメディとして楽しめるものだったのが良かったですよね。

 アリスの謎に多芸すぎるパフォーマンス。イラストレーターであり真宵アリスのママでもあり本当の身内である、ねこ姉との身内ネタ話。過去のトラウマ話をしているはずなのに、あまりに密度と情報量の濃い話で巻き込まれ体質過ぎる不憫さを兼ね備えてしまっているアリス自身の実体験。

 Vtuberモノらしい、リスナーたちの軽快なツッコミを交えながら盛り上がっていくような風景は素直に笑える面白さで満ち満ちていました。ゴリラの挿絵は特に大爆笑でしたよ。

 2巻の内容にも少し触れると、2巻からは同期のVtuber仲間たちや、先輩Vtuberたちを交えた話が広がっていくため一層コメディ色が強くなり、その中ではアリスの多芸さが際立つのが面白かったですね。アリスってフィクションにおけるオタクは謎にスペックが高い、みたいなタイプの子ですよね。

 

総評

 ストーリー・・・★★★ (6/10)

 設定世界観・・・★★★ (6/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻への期待・・・★★★☆ (7/10)

 

 総合評価・・・★★★☆(7/10) コメディ作品としてVtuberモノとして、見事なエンターテイメントを魅せる作品でした

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。 

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