今回の感想は2024年11月の電撃文庫新作「よって、初恋は証明された。 -デルタとガンマの理学部ノート1-」です。
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あらすじ(BWより引用)
ほろ苦くも瑞々しい、科学と、恋と、ミステリー。
思うに〈青春〉というのは、よくできた推理小説のようなものだ。
失われてしまった恋愛成就の桜の謎。部活勧誘の小さな違和感。巨木の樹齢に秘められた物語。密室で消えたハムスター。壊れかけの生物部に捧げられた、高校生たちの切実な決断。
無関係だと思われたひとつひとつの因果はどこかでつながっていて、あとから振り返って初めて俺たちはそれを〈青春〉と認識する。そこでようやく気付くのだ。見落としていた大切なことに。
「検証してみようよ……科学的に!」
これは、科学をこよなく愛する高校生たちが日常で直面する数々の謎に挑む、綱長井高校「理学部」のささやかな活動記録。
――そして、一つの初恋が解き明かされるまでの物語である。
感想
豚レバ逆井先生の新作だっ!!
ということで、発売前から非常に楽しみにしていた本作でしたが期待に違わない、期待以上に楽しませていただきました。
読み終えてからぐっと胸に色々な気持ちがこみ上げてくるような作品と言いましょうか……、わたし個人の印象としましてはあとがきで述べられていた「大きな巨人から分けてもらった小さな炎があります」というお言葉がもっとも腑に落ちてきました。
そんな前置きで、早速感想まとめていきます。
本作は学園青春ミステリ。
中学時代科学部で特に生物分野に詳しい主人公・出田は、高校入学を機に席を前後にする岩間理桜と出会う。親友の水崎からは名前の読みでデルタとガンマ、なんだか運命的だと言われながら、二人きりにされたり恋愛スポットに連れて行かれたり・・・
実際、岩間は出田と同じく科学を好み、身の周りの不思議を考えることが大好きなようで、一緒に桜の木の謎を解決したりする中で順調に仲を深めていくのだった。
というような、あらすじになります。
基本的な内容はワンエピソードで1つの謎を解くようになっていて、終盤ではそれまでの小さな謎があったエピソードの1つ1つが実は一本の大きな線で結ばれていることが分かっていき……、という構成は分かりやすく面白さがあるものですね。
そんな学園青春ミステリである本作。
メインとなるのは、青春、の方です。
主人公たち高校生の少年少女の生きる日々で考えて悩んでいく様が話の軸にあります。
しかし、本作最大の魅力はミステリ、謎解き部分だとわたしは思っています。すなわちこの謎解きがあるからこそ、彼らの青春というものが一層眩しいものに映るようになっていて、それがすごく良かったのですよ。
では、本作の謎解きのどこが良かったなのか。
それを話す前に予め言っておきますと、この作品はミステリ、ではありますけど特別なギミックな不可解な謎を明かしていくようなものではありません。したがって純粋なミステリで大きな謎を解くようなものを期待する方には肩透かし感が否めないかもしれません。
ですから、本作が真に見せたいのはそういう謎解きではないと思っています。
この作品は、日常に潜む謎や不思議、誰もがよくよく考えたら疑問に思うような物事に対して、純粋な知りたいという気持ちから生まれる好奇心を満たすような、科学的にちゃんと説明することができる真実を知っていくというお話なんですよ。
ですから、あっと驚くような真相にワクワクするような感覚とは少し違う、学ぶことで新しい世界が開けるあの高揚感。それを味わう気持ちを出田や岩間たちと一緒に読者が楽しめる作品、と言えばいいでしょうか。それこそが本作の魅力だったと思います。
わたし個人が理系の人間だからこそ、この気持ちがすごく強くて。知ることって楽しいんです。新しい発見っていつだって人の心を熱くしてくれるんですよ。
この作品の謎解きは、そんな日常に根ざした謎と不思議を明かしていくから、それは面白いって素直に感じることができました。
そして、これこそがしっかりと作者の言う小さな炎を感じさせてくれるものであるのですよね。
誰もが当たり前に知っている、見ている、聞いたことがある。けれどよくよく考えて見れば確かに不思議だな? そんな風に思うことは世の中にたくさんたくさんあって、そしてその多くは過去の多くの人々が研究してその答えや理屈を解き明かしているものなんですよ。
わたしたちはそんな先人たちが残したものが無数に積み上げられた今、大きな巨人と形容してもいいモノの上にいる。
だからこそなのか、その過去や真実をあまり知ろうとしないのかもしれないし、案外気にせずスルーしているのかもしれないし。けれど、たしかに足元にはその巨大な何かがあって、わたしたちはそんな歴史を背負っているはずなんですよ。
そういったものに目を向けてみてほしい。知ってみてほしい。少しでも楽しいと思ってほしい。わたしたちの世の中にはこんなに素敵で面白いものがいっぱいあるのだから。
そんな想いが、日常の謎解きとそこに望む出田や岩間たちの言葉の節々から溢れ出している。科学を好む少年少女たちの想いに、しっかりと作者自身の願いが込められているのが伝わってくる。
これが、すごくすごく胸に染み渡ってきて、読み終わってみると「ああ、すごく良い作品だったな」って、そう思えたというわけです。
本作は、ミステリや科学をテーマにしているものの、決して堅苦しいお話ではありません。
これは科学の面白さを、こういう小説ならではの描き方で感じさせてくれるものです。
出田と岩間の恋愛模様や二人の親友であり同じ部活仲間になった水崎や甘南備も加えたみんなの日常の中で、科学と不思議が大好きなみんなが日常にあるたくさんの素敵を見つけ出していきキラキラと輝く青春の1ページです。
青春小説として素直にラブコメ模様を味わいながら、その中にある小さな炎を感じてみてほしいです。
わたしはこの作品、大変満足しています! 面白かったです!
というので、感想の本題は終わりです。
あとは個人的なアレコレ言いたいこと書き連ねていきますけどね。
まず、岩間理桜ちゃん。可愛すぎかな?
この真っ直ぐで明るい性格が堪らないんよ!
作中では「見たかよあのスマイル」なんて言われてますけど。
こういう女の子に、男子はいちばん弱いの! 男はみんな女の子に弱い、っていうときの女の子を具現化したようなやつ! こんな子と仲良くしてたら一瞬で惚れてしまうからって言いたくなるやつ!
前作の豚レバのジェスたそとは若干方向性違うはずなのに、こうして2作連続で好きになるしかない系ヒロインになるのはどういうことなんですかね? 読者を骨抜きにして惚れさせるのがそんなに楽しいのですか?
そして、主人公の出田くん。
遠坂あさぎ先生のイラストパワーによる影響が大きいですが。
超イケメン!! ビジュだけで、同じ男でもこれはカッコいいって思いますよ。
そして読めば分かる。こいつは内面もちゃんとイケメンだった! 岩間との関わりの中で、自分の在り方、岩間の在り方を知って、どう関わるべきなのかと考えて、それで出す結論がアレですからね。
こんなのイケメン以外の形容ができないじゃないですか! そういう人柄が分かればそりゃあ理桜ちゃんだって好きになっているでしょうし、初恋が生まれても納得感しかないんだわ。
前作の豚もそうでしたけどこんなちゃんとカッコいい男を書いたら、読者もとりあえず惚れるっていうのが分かってないんですかね? 読者を骨抜きにして惚れさせるのがそんなに楽しいか!
出田くんのセリフで特にわたしが好きだったのは。
「普通に通じるんだから」ですよね。
この一言だけで、どれだけ救われるような気持ちになるか、って思うとそれだけでもうさ。
そしてこの手の言葉関連で言えば。
ワードチョイスや花言葉、ミステリ的な言葉の伏線みたいな部分も本作見てて飽きない部分がいっぱいあったのがすごく良かったんですよね。
個人的に読んでいて、これはもしかしてあの言葉とかかってるんじゃないか? って気づけたりした部分もあって、やっぱりーってなったときとかはすごい楽しかったですし。
純粋に科学と謎解きでかけあわせている作品にプラスしてこれらの言葉の要素を旨味としてかけあわせているってのが、作品の完成度の高さを感じさせてくれるのも良かったですし。
あとはサブキャラも個性豊かというか、ブラコン数学大好き娘な御影さんとそのお兄さんの話とかは普通に見てみたいと思いますし、水崎と甘南備の二人はしばしば出田と岩間をくっつけようとしているみたいだけどその間二人は何をしてるの?とかいう部分が気になったりもするしで今後のそういう部分への期待が溢れてきますよね。
こんな感じでしょうか。
ひとまず言いたいことも結構言ったので感想は締めます!
総評
ストーリー・・・★★★★ (8/10)
設定世界観・・・★★★★ (8/10)
キャラの魅力・・・★★★★★ (10/10)
イラスト・・・★★★★ (9/10)
次巻への期待・・・★★★★★ (10/10)
総合評価・・・★★★★☆(9/10) わたしの中では豚レバが巻数を重ねることに右肩上がりで面白くなっていき最後には満点を余裕で越える神作認定をしているので、まだ★10にはしません。これからも超楽しみに追わせていただきます。
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。