今回の感想は2021年11月のMF文庫J新作「海鳥東月の『でたらめ』な事情」です。
※現在3巻まで刊行中(2022年9月)。これまた新作と言うには1年も前の作品になりますが、紹介したい作品なのでやる。
※画像はAmazonリンク
あらすじ
「財布? 携帯? ぜんぜん違うよ。私が盗まれたのは――鉛筆さ」仲良しのクラスの女子・奈良芳乃から突如、謎の相談を受けた海鳥東月。だがそれは奇妙奇天烈な事象の始まりに過ぎなかった。海鳥の自宅に現れた謎のネコミミパーカー『でたらめちゃん』。彼女によって引き起こされるトイレの貸し借り、裏切り、脅迫、掴み合いからの一転攻勢、そして全力の命乞い……全てを終えた後、でたらめちゃんは海鳥に告げてくる。「海鳥さん。私と一緒に、嘘を殺してくれませんか?」海鳥は訳も分からぬまま『嘘殺し』に協力することになり!?
第17回MF文庫Jライトノベル新人賞〈最優秀賞〉作は奇妙奇天烈! だけど青春ストーリー?
感想
3巻まで刊行されているので、1巻読んだ当時の感想と2巻以降での感想をそれぞれ書いていきます。
まず1巻を読んだ率直な感想は、説明が長い。
この作品の他の人の感想でしばしば見かけていたことが序盤と終盤でチグハグ感があるとか、終盤の盛り上がりが足りないとかいったものだったのですが。個人的にはそうではなく、これは終盤までがずっと作品の説明だったのではないかと感じました。
なので、終盤になってやっとこの作品の方向性が明確になり、舵を取り始めてるんです。
つまりですよ、普通なら序盤で説明があって「あ、この作品はこういう作品なんだな」と読者が理解して読み進めるところが。この作品では終盤まで来てようやく「あ、この作品はこういう作品なんだな」が分かるのであって、そこに到達する前に早合点してしまうと序盤と終盤がチグハグに感じてしまうのではないかと。
なので、作品としては1本の筋が通っていたと思います。
ただ、ページ数にして250ページほどの説明を読むのが面白いかどうかというと難しいところ……。先程の例で言えば普通1冊の序盤で済ませる展開を1冊丸々かけてやっているってことですからね。
ようやく作品の方向性が見えてきた段階で、特別盛り上がりはあるわけもなく、これを面白いも何も評価できなくないですか?
というのが1巻時点の感想。
2巻以降を読むとコレが少し変わります。
具体的には「ああ、この作品はスパイスの味が効いてるんだ」という感じ。
この作品は話の内容自体はかなり王道を進んでいるんですよ。友人との関係性だったり、モノに意思が宿った者との交流だったり。
しかし、そこに加える要素やアクセントがとにかく奇抜すぎる。どこからそんな発想が出てくるの? と言いたくなるような設定がとにかく出てくるものだから、普通の展開のはずなのにどういうわけか「でたらめ」な作品に見えてくる。
面白いかどうかと言われると1巻から変わらず、なんとも言えないまま。
しかし、こういうのは嫌いではない。むしろわたしは好きです。
総評
ストーリー・・・★★★ (6/10)
設定世界観・・・★★★★★ (10/10)
キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10)
イラスト・・・★★☆ (5/10)
次巻以降への期待・・・★★★★☆ (9/10)
総合評価・・・★★★★(8/10) じわじわくるスルメみたいな作品。この「でたらめ」具合は一度見てみて欲しい。
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。