ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part69】世界救い終わったけど、記憶喪失の女の子ひろった

 今回の感想は2022年11月のTOブックス新作「世界救い終わったけど、記憶喪失の女の子ひろった」です。

 ※2巻まで刊行中(2023年2月現在)、今回は1巻のみの感想になります。

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あらすじ(BWより引用

私に世界【はじめて】を教えてください!」

 魔王を倒して燃え尽きていた勇者は、謎の敵に追われていた赤髪の少女に一目惚れした。

 助けようにも、追手の目的は一切不明、さらに当人は記憶喪失!?

 食いしん坊で天然そうなこの子に一体何が? 

 少女の秘密を探るために、勇者はかつての仲間を訪ねる旅に出る。

 腹黒な賢者、脳筋の姫騎士、千歳の幼女、成金の死霊術師。

 愛が重いパーティーメンバー達に

「「「「あの女は誰ですか?」」」」と問い詰められながらも、

 皆の固有魔法で次々に刺客を圧倒!

 だが、遂に黒幕を追い詰めたその時、

「赤髪に恋すると、世界が滅ぶ」と意味深に告げられて──。

 君が誰であっても、必ず救う。

 隠居勇者が最強パーティと一人の少女の過去を辿る、リライフ・ファンタジー開幕!

 

感想

 これは良かったですね〜!!!

 ファンタジー作品ならではの愛を魅せる作品、こういうの大好きです!

 

 というわけで今回は褒めます。

 本作の概要をわたしなりに補足しつつ、この作品の良かったポイントを2つにまとめます。

 

1:ゆるふわ雰囲気の安心感

 この作品はとにかく雰囲気が良いんですよね。

 

 その要因の1つにあると思っているのが、キャラに固有名詞を使わないところ。

 どういうことかと言いますと、本作は魔王を倒して世界を救い終わった勇者のアフターストーリーなわけですが、その勇者は死に際の魔王の呪いによって「他人の名前を認識することができなく」なっているんですね。

 そのため、勇者の仲間たちそれぞれのキャラが賢者ちゃんや騎士ちゃんという役職で現されています。

 これが文字として見たときに非常に柔らかい印象を与えてくれるんですよ。

 

 また、アフターストーリーというだけあって最初から仲間たちの信頼関係がしっかり固まっている、というのもこの雰囲気を和らげるのに効果的に働いていましたね。

 

 勇者の呪いを知っていて、それに配慮する仲間たちの気持ち。

 お互いがお互いの事情や状況を察しながら、言葉を交わさずとも適切な支援をすることができる信頼。

 そして終盤にやってくるシリアスに対しても、どんな強敵が現れたとしても大丈夫だよ最高の仲間たちがいるから、という空気感。

 

 そういった一つ一つの小さな描写が本作を読む上での「安心感」というのを生み出しています。

 冒険が始まったばかりという作品であれば、新しい旅への緊張感や不安というものが必要でしょうけど。最初からアフターストーリーで紡がれる本作においては、この安心感というものが大きな武器になり、最高の魅力となって発揮されていたと思います。

 

2:ファンタジーラブが大爆発

 そして、本作最大最強の魅力。

 

 それは、愛!!!

 

 言ってしまえば、ファンタジーの愛情バリューパック!

 

 本作は記憶喪失の女の子を拾った勇者が彼女の身元を調べるために、世界各地にいる仲間たちの元を訪問していく、という流れで序盤の話は展開していきます。

 賢者ちゃん、騎士ちゃん、師匠、そして死霊術師さん。

 そしてそれぞれの仲間の個別パートでは、このヒロインたちが勇者に向ける愛が綴られるのです。

 その愛というのがファンタジー設定を存分に活かしたもの。

 

 本作には「魔法」と呼ばれる力が存在します。

 「魔術」と呼ばれる多くの人が使えるものと違って、「魔法」は一種の呪いのようなものとして描かれていまして。

 例を上げるのなら、勇者の師匠となった少女。彼女はあらすじに述べられている「千歳の幼女」にあたりまして、彼女のもつ魔法は「自分と、自分の触れるものの時間を止めてしまう」というもの。この魔法のせいで彼女は歳を取ることができない。

 ここで重要なのは、歳を取らない、ではなく、歳を取ることができない、ということ。

 そうです。ヒロインたちにとって「魔法」とは、自分が普通ではないことの証、異端である証明、孤独の象徴なのです。

 

 だからこそ、彼女たちはそれぞれが自分の魔法に起因する大きな悩みや苦しみを持っている。

 そして、だからこそ、そんな自分を受け入れてくれる勇者に対して大きな愛情を抱く。

 

 ヒロインは全員、勇者のことが好き。

 だけどその好きの意味合いは全く異なる。

 全員が全員、それぞれの形で愛を持っている。

 

 この描写が最高に溜まらないんですよ!

 例に挙げただけでも、何千年も生きるヒロインの好き、ですよ。こんなのファンタジー恋愛好きだったら、好きにならないわけがないの!

 そしてこんなファンタジーならではの最高の愛を四人のヒロイン、そして記憶喪失の女の子を吹くめて五人分も見せられたら普通に尊みの過剰摂取で死にます!

 

 ちなみに、個人的には賢者ちゃんの愛がいちばん好きですね。愛の多さ、素晴らしいですよ。



 以上2点、本作の素晴らしかったポイント!

 ファンタジー恋愛が好きなら読んで間違いない作品でした!

 

3:その他

 ※一応、細かい感想も書きます。

 

 ※本作は1冊で五人のヒロインを触れる都合上、それぞれの文量というのはどうしても短くなってしまっています。

 そこを深さが足りないと取るか、あるいは短編的な恋愛の詰め合わせと見て楽しむか、ここは読み手を選ぶかもしれないと思いました。わたしとしてはアフターストーリーである以上、少しづつ過去話を小出しする感じで描くのが丁度いいと思っているので満足していますけど。

 

 ※また、最初に言った安心感。

 これは裏を返すと、大きな予想外がない、と言うことができます。1冊の中で驚きやハラハラ感を味わいたい人には向かない作品かもしれませんね。

 とはいえ、これは1冊に山場がないというわけではありません。

 むしろ起承転結の構成は見事だったと思います。序盤は既に述べたように、勇者パーティーの仲間を掘り下げながら進んでいき、中盤の折り返しからはタイトルにもなっている記憶喪失の女の子の事情に踏み込み、一気にシリアスパートに突入していきます。

 序盤で過去話とそこから生まれた愛の尊さに魅せられ、終盤は勇者パーティーの何があっても大丈夫という絆に魅せられる。終始見所満載で読む手が止まらない作品でしたから。

 

総評

 ストーリー・・・★★★☆ (7/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) ファンタジーだからこその愛の形に大満足!!!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp