ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part92】魔王都市 ー空白の玉座と七柱の偽王ー

 今回の感想は2023年7月のガガガ文庫の新作「魔王都市 ー空白の玉座と七柱の偽王ー」です。

魔王都市 ー空白の玉座と七柱の偽王ー (ガガガ文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 無法都市を裁く、正義と仁義。

 人類と魔族の講和の象徴である共存特区『ニルガ・タイド』ーー通称・魔王都市。

 七柱の魔族の王が治めるこの街で、一柱の王が殺された。

 均衡が崩れ極度の緊張状態に陥る中、事態を重く見た人類連邦司法庁≪不滅工房≫は事件解決のため勇者の娘であるアルサリサ・タイディウスを魔王都市へと派遣する。

 彼女が組むことになったのは、なまくらキードと呼ばれる一人の捜査官だった。

 法の名の下に正義を執行する、勇者の娘。違法を厭わず仁義を貫く、不良捜査官。

 暴力と陰謀が入り乱れる混沌都市で、歪なコンビの常識外れの捜査が始まる。

 一方、魔王都市内では各勢力による衝突が激化し、巨大な抗争へと発展していく。

 刻限迫る中、アルサリサとキードは黒幕へと辿り着けるのかーー異世界舞台の世界破滅級クライムサスペンス。

 

感想

 本作の大筋は前述のあらすじの通り。

 魔王都市という魔族と人間が共存する街で、魔王が失踪したことで七人の後継者を名乗る魔族の派閥の抗争が常態化。そんな中で1つの派閥の王が殺される大事件が起きて、それを主人公とヒロインのバディで解決するというお話です。

 今回は感想をストーリー、設定、キャラで分けて話していきましょう。

 

 ――まずストーリーに関して。

 非常に丁寧で地に足ついていた物語だという印象でした

 序盤では魔王都市という世界観と主人公ヒロインを見せる導入として過不足なく、そこから事件の調査を通じてより一層この作品世界観を深めていく、そして終盤は一気に伏線回収をしていく。

 大きな驚きはないけれど、決して外すことのない面白さが担保されている、といった感じでしょうか。丁寧すぎて終盤の盛り上がりにやや欠けていたようにも思えましたが、全体的に見れば素直に良かったと言えますね。


 ――続いて、設定に関して。

 魔王都市という世界観、これが中々に凝っているもので感想として1つ1つ話すわけにはいかないので、特に個人的に良かったと思う部分に言及すれば。

 魔族たち、それぞれの派閥が持っている信念のようなもの、これが良かった。

 謙虚だとか慈愛だとか、様々な信念を魔族たちは語ってくれるんですけど、そのことごとくが「いや、そういう意味じゃないだろ」と言いたくなるくらい歪んでいるんですよね。人間よりも単純な生物的なスペックで勝っているからこその考え方というか、基本的に支配者のソレになってるんよ。

 この明確に人類とは違う価値観を持つ存在というのを描くそのものが面白いのは言うまでもないですし。人類との共存というものを考えるとハードルの高さ、魔王都市というものがいかに不安定な代物であるかが見えてきて、本作のクライムサスペンスとしての雰囲気作りにも活かされていたなと思います。

 ただ、個人的にはまだこれは設定止まりで終わっているようにも思えたので、今後この要素がキャラや物語の方にも活かされるといいかなと思いました。

 

 ――最後にキャラ。

 本作はいわゆるバディモノ。

 正義や法を何よりも重んじる堅物ヒロインのアルサリサと、魔王都市において問題解決のためなら非合法的な手段を使うことも厭わないようなキード。

 目に見えて対照的な二人だからこそ、反りが合わない部分、欠点を補い合うことができる部分があるというバディモノの華がしっかり魅力として出せていたと思います。こういう部分でもやはり丁寧さを感じる作品でした

 一方で個人的に少し気になったのが、二人とも大きな目的野望を持っているだけに芯が強いという部分。それ自体に悪い部分はなく、むしろキャラとして一貫性があるのは良いことなのですが。バディモノとしては、これのせいでその魅力が最大限に発揮されていないんですよね。

 二人は共に行動し、ときに協力して事件解決をしていくわけですが。お互いに芯が強すぎるが故に本質的な部分に変化が見られないように感じてしまったのですよ。二人が出会ったからこそ生まれる心情、の部分です

 この1巻としては、二人のバックボーンもまだ語りきってはいないように見えましたし、むしろ二人とも自分の野望のためなら相手を利用してやろうくらいに思ってるようですし、そう簡単に変化しては困ると思いますし、これは今後どうなるかに期待する要素として残されているのだとは思いますけど……、個人的にはやはりキャラ単体の魅力にプラスしてキャラが交わることによる変化も見たいので少し気になった部分になります。

 

 色々述べましたがまとめますと。

 物語の展開、設定の深掘り、キャラ、今後の期待まで含めて、とにかく全体的に丁寧な作品だった。

 という話ですね。

 

総評

 ストーリー・・・★★★☆ (7/10)

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10)

 キャラの魅力・・・★★★ (6/10)

 イラスト・・・★★★ (6/10)

 次巻以降への期待・・・★★★ (6/10)

 

 総合評価・・・★★★☆(7/10) 全体的に丁寧な良作でした。

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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