ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【シリーズまとめ感想part44】茉莉花官吏伝 / 十三歳の誕生日、皇后になりました。

 今回感想を書いていく作品は「茉莉花官吏伝」および「十三歳の誕生日、皇后になりました。

 ビーズログ文庫より2017年~刊行中のシリーズ。茉莉花官吏伝が14巻、スピンオフ作品の十三歳の皇后が8巻まで刊行中(2023年3月現在)。※以降は「十三歳の誕生日、皇后になりました」は「十三歳の皇后」と略して述べます。

 作者は石田リンネ。イラストはIzumi

茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず (ビーズログ文庫)十三歳の誕生日、皇后になりました。 (ビーズログ文庫)

※画像はAmazonリンク(茉莉花官吏伝1巻、および十三歳の皇后1巻)

 

 

 本作のジャンルは中華ファンタジー

 まずは、作品の世界観を軽くご紹介。

 

 ””かつて大陸にあった大国「天庚国」――覇権争いによって4つに分裂した国はそれぞれが玄武、青龍、朱雀、白虎を守護神獣とした。

 このうち白虎を守護神獣とした国が「白楼国」、本編である茉莉花官吏伝の舞台。

 朱雀を守護神獣とした国が「赤奏国」、スピンオフの十三歳の皇后の舞台になります。””

 

 今回はこの二作品それぞれ、あらすじと簡単な感想を書いて、二作品の繋がりについて少しお話する感じにしようと思います。

 

1:茉莉花官吏伝

 あらすじ

 後宮の女官だった茉莉花は「物覚えがいい」というちょっとした特技がある。

 ある日、名家の子息のお見合い相手の練習をすることになった茉莉花は、そこでどういうわけか白楼国の皇帝である珀陽と出会う。

 珀陽は茉莉花の特技に才能を見いだし、彼女に科挙試験を受けるように命じる。

 こうして皇帝に見初められて始まる茉莉花の立身出世物語が始まった。

 

 感想

 茉莉花官吏伝の中心にあるのは、茉莉花の持つ才能と成長

 

 茉莉花の言う物覚えがいいというのは、一度見聞きしたものは忘れることがないというもの。

 これは間違いなく一種の才能だけれど、茉莉花自身はそうは思っていない。何故なら、覚えることしかできないから。

 例えば、楽の譜面や弾き方を完璧に覚えたとして、それを実際に自分が弾くことができるかと言われれば、それはできない。茉莉花にとって自分の物覚えがいいとはそういうもので、だからこそそんな自分が何かを成すことに消極的になっている。

 けれど、珀陽に見初められて科挙試験を受け、官吏を目指すことになった茉莉花はそこで正しく学ぶことを少しづつ理解する。官吏になってからも、様々な人と触れることで、学んだこと、覚えたことを、実際にどうやって役立てていくかを知っていく。

 そんな茉莉花の人として、官吏としての成長の変遷が茉莉花官吏伝という作品だと、個人的には思いますね。

 

 徐々に才覚を現していく茉莉花は、正直見ててゾクッとする場面も多いです。しかし、同時にあまり眩しいその才は、決して人の触れてはいけない花のように美しい。

 自覚のない天才の恐ろしさみたいなのを節々から感じて、そしてまだまだこれからも進化するだろう茉莉花を想像するだけで続きが気になってしまう。

 というか、最新刊付近ではもう既に「こいつやべぇな……」と思わせる発言がしばしば見られてますね。

 

 また、本作で一つ着目してほしいのが各巻のサブタイトル

 ことわざや慣用句をもじってつけられるコレは一言でその巻における茉莉花の成長を表すもので、毎回そのサブタイトル回収がされていて、これがすごく気持ちいいんですよ。

 個人的に好きなのは5巻の「天花恢恢疎にして漏らさず」と11巻「其の才、花と共に発くを争うことなかれ」ですね。茉莉花のヤバさを的確に表しすぎてる。

 

 その他にも、少しづつ育まれていく茉莉花と珀陽の身分違いの恋路も見守っていきたいですし、茉莉花は基本的に大陸の各国に派遣されて自国に留まらないので中華系ファンタジーの世界観を強く感じる諸国漫遊記のような面白さもあったり。茉莉花のやべー思考に適切なツッコミを入れてくれる常識人な春雪くんや、茉莉花とは別方向にやべー感じの御史台の翔景さん、茉莉花に色々とアドバイスをしてくれる子星さんなんかの他のキャラとの関わりも見ていて非常に楽しい。

 今では新刊を毎回楽しみに読んでいるシリーズです。

 

 巻別満足度と総合評価

 茉莉花官吏伝の巻別満足度と総合評価です。

 

 まずは巻別満足度。

 グラフを見ての通り、基本的には安定して楽しめる作品です。

 ただ7巻や13巻のようにしっかり魅せる巻では魅せてくれるので、次はいつ大きな進展があるのかなと楽しみに続巻を待っていられるシリーズになっています。

 

 そして総合評価です。

 シリーズ全体を通しての満足度は ★8/10

 非常に満足度が高い作品です。 

 

2:十三歳の誕生日、皇后になりました。

 あらすじ

 舞台は先述の通り、赤奏国。

 十三歳の誕生日、後宮入りを願い出るために皇帝の元を訪れた少女・蕗莉杏

 しかし、謁見の間にいたのは血塗れの青年・暁月。赤奏国は侵略戦争のみを是とする前皇帝によって人々は困窮を極めていた。本来、皇帝になるはずではなかった暁月だけれど、もはや風前の灯火と言える国の状況を憂い、暁月は皇帝を殺害しその王座を簒奪していたのだ。

 しかし、そんな事情は知らず、何がなんだか分からないままに暁月に「ちょうどいい」と言われた莉杏は、そのまま新たに皇帝となった暁月の妻になるのだった。

 

 感想

 本編である茉莉花官吏伝よりも真っ直ぐに恋愛を紡いでいるのが十三歳の皇后で最初に感じた印象。

 

 そんな本作最大の魅力は、莉杏が可愛すぎることですね。

 いや、もう、マジでヤバい。

 可愛すぎて語彙崩壊不可避なレベルで可愛いんですよ。

 

 成り行きで暁月と夫婦となった莉杏だけれど、暁月が皇帝となるに至って経緯、そしてその心中を少しずつ知っていき、そんな暁月を支えられる立派な皇后になりたいと思うようになるのです。

 十三歳な彼女の無邪気で幼い恋心。最初こそ暁月からもその程度であしらわれていたけれど。

 いつだって全力でひたむきに皇后として何をすべきなのかを学び、暁月を支える妻になりたいと願い、一歩ずつ成長していく姿を見せてくれる。

 これがもうとんでもなく可愛いんですよ。ただ幼いだけでなく確かな芯のある情熱的な恋の破壊力たるや。

 そして、彼女の真っ直ぐで全力の純粋な恋心が徐々に暁月をデレさていく様子よ! 暁月のデレも破壊力強すぎて、もうわたしニマニマが止まんなったんですよ!! 夫婦揃って読者を殺しに来てるのはもうごちそうさまです、としか言い様がないの!!!

 

 

 また、本作の特色としてあげられる点に、そんな莉杏が皇后として成長する過程がややミステリーちっくに描かれることがあります。

 

 まだ十三歳になったばかりの莉杏にとって、いきなり皇后になるということは、文字通りに人生が一転するできごと。

 いままでの生活とは大きくかけ離れた未知に囲まれた日々の始まりです。

 そこで立派な皇后となるために、一つ一つ目の前にある問題を考えて、そして莉杏なりの答えを出すという過程はまさしく謎解きをするようであり、ミステリーちっくな書き方が非常にマッチしていて面白いです。

 そして、課題を一つずつ越えるたびにそれを嬉しそうに暁月に話す莉杏が最高に可愛いんだわ。←結局、コレがいちばん重要。

 

 茉莉花官吏伝での茉莉花の成長はどちらか言えば、全うに職場で働く女性のソレなので、この成長過程の描き方は二作品でかなり違いを感じましたね。

 

 巻別満足度と総合評価

 十三歳の皇后の巻別満足度と総合評価です。

 

 まずは巻別満足度。

 グラフを見ての通り終始満足度が非常に高いです。

 というか、もうずっと莉杏が可愛いです!!!

 

 なので総合評価です。

 シリーズ全体を通しての満足度は ★9/10

 莉杏が可愛くて可愛い、大満足!!

 

3:二作品の繋がり

 最初に述べたように茉莉花官吏伝と十三歳の皇后は同じ世界観で、舞台となる国が異なっています。

 そして、この二作品の時系列は基本的に同じです

 

 したがって、それぞれの作品では他方の作品で起こった出来事が伝聞のようにして描かれることがしばしばあります。そしてどうやら珀陽と暁月の両皇帝はしばしばお互いの国や恋人(?)と妻の自慢、煽り合いをしているようで、仲の良い(?)姿が見られます。

 

 では、この二作品を読む順番でオススメはあるのか、というお話で。

 基本的に発売日順で読めば間違いないですね。

 その場合、以下の順番になります。

 茉莉花官吏伝 1~4巻 → 十三歳の皇后 1巻 → 茉莉花官吏伝 5~6巻 → 十三歳の皇后 2巻 → 茉莉花官吏伝 7~8巻 → 十三歳の皇后 3巻 → 茉莉花官吏伝 9巻 → 十三歳の皇后 4巻 → 茉莉花官吏伝 10巻 → 十三歳の皇后 5巻 → 茉莉花官吏伝 11巻 → 茉莉花官吏伝 12巻 → 十三歳の皇后 6~7巻 → 茉莉花官吏伝 13~14巻

 シリーズごとにまとめて読むのも良いのですが、先ほども述べたように二作品は時系列が同じなので、平行して読んだ方が楽しめると思います。

 また、基本的には十三歳の皇后の方が後出しになっているので、「ああ、茉莉花でのこのときに十三歳の皇后ではこうなってたのか」と思える場面が多々あります。そういう意味でも刊行順に読む方が楽しめるのではないかと思いますね。

 

 まとめ

 官吏伝、十三歳の皇后、どちらの作品もそのメインには主人公である茉莉花と莉杏の成長があります。しかし、その過程だったり、成長の方向性は全く異なるものであり、比較しながら読むと、また違った面白さも見つけられたりします。

 そして、二人の成長が違えば、その恋路もまた全然違っていて。

 三歩進んで二歩下がり、また一歩進むような茉莉花と珀陽。一歩ずつ着実に進む暁月と莉杏。作者自身、そう表現する二種類の恋はどちらもが楽しみですね。

 

 今回のまとめは以上で。

 最後に1巻のAmazonリンクとBOOKWALKERリンクを張っておきます。

 

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茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず (ビーズログ文庫)

 

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十三歳の誕生日、皇后になりました。 (ビーズログ文庫)

 

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茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず - ライトノベル(ラノベ) 石田リンネ/Izumi(ビーズログ文庫):電子書籍試し読み無料 - BOOK☆WALKER -

 

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