ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part109】カルネアデス

 今回の感想は2023年9月のMF文庫J新作「カルネアデス」です。

カルネアデス 1.天使警察エルと気弱な悪魔 (MF文庫J)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 『天使警察エル』など、rurudo先生オリジナルキャラクターが小説に!

 

 とある満月の夜。

 気弱な悪魔・イヴはお腹を満たすために、人間の恐怖心を得ようとしていた。

 そこに天使警察のエリート・エルが現れる。

 捕まっても脱獄を繰り返す、イヴを捕らえるべく派遣されたのだ。

 しかし今回も、イヴは逃げおおせ、エルは必死に追いかける。

 そこで事態は予想外の方向へ――。

 異形の怪物に襲撃されて、ふたりは協力して逃走することに。

 襲撃を発端とする一連の怪事件を解決するために、ふたりは上司命令でバディを組まされる。

 互いに嫌がるエルとイヴだったが、孤独な天使と悪魔は捜査を通して絆と信頼を深めていく。

 やがて事件は他の種族を巻きこんでいき……。

 世界の真実を探る、少女たちの戦いが始まる。

 

感想

 うん、良かったですね!

 読む前から分かっていたことだけど、やっぱりrurudo先生のイラストが美しいんですわ。

 そこに怪しげな雰囲気のファンタジーといえばこの人、という綾里けいし先生の文章が合わさったらまさに鬼に金棒です。


 あらすじはおおむね述べた通り。

 天使。悪魔。獣人。吸血鬼。人間。

 五つの種族が生きる世界で、天使警察のエルが悪魔の少女イヴを捕まえることから始まる物語でした。

 

 周囲の天使たちは自分たちは特別であると信じて疑わず、他種族を傲慢にも見下す中で。自分が天使であることを誇りに思うものの、かといってそれが自分たちを絶対の特別とはしないで他の天使たちの傲慢さを間違っていると言う。

 自分の心に真っ直ぐで、それ故に周囲からは浮いてしまっているエル。

 

 彼女が出会った悪魔は、気弱で逃げ足だけは速く、しかし悪魔のくせして天使であるエルのことも心配してしまうような純粋でお人好しのイヴ。

 嘘なんかつけそうになく、見ていると何だか毒気が抜けてしまう、そんなイヴだったからこそ、エルは素直にその心を解くことができたんだろうなと。

 そんな風に感じる二人の絆はとても良いもの。

 

 基本的にはしっかりモノのエルと、マイペースでのんびりしたイヴという対照的な性格が相性抜群なのはもちろん。エルは自分の心に嘘をつかない実直な子で、イヴはそもそも嘘をつけない素直な子だから、お互いがお互いに向ける想いをはっきり伝え合うことができているというのが見てて非常にほっこりできるんですよ。

 この二人ならそりゃ、最初こそバディを嫌がっていても、すぐに仲良くなれるでしょうと。そんな納得を覚えながら、どんどん心を通わせていく展開は楽しくサクサク読めてとても心地良かったですよね。

 また、特典SSなどの話で、日常を見るとその微笑ましさは倍増。女の子と女の子が仲良くしているとそれだけで読者の心が幸せで満たされる、そんな空気はもう堪らないわけです。1巻で様々な困難を乗り越えて、バディとしての絆も強固になった二人の日常の光景がもっと見たい、2巻以降ではそういう部分にも着目していきたいです。

 

 

 そして、この作品がそもそもrurudo先生のイラスト、すなわちキャラから始まっている作品として考えると。そんな二人の関係性をしっかり魅力として引き出すための出会いからいくつも困難を乗り越えていく、その長い過程をテンポ良く1冊の中で見せられるのは作者の技量を強く感じる部分でした。

 また、天使と悪魔という設定、その背景にある世界観という部分にはまだまだこの1巻では描ききれない大きな秘密が隠されているようで。そしてそこに踏み込むには、きっと残酷な現実を目の当たりにしなきゃいけないのだというという不穏な気配が漂っているのが綾里先生の作風にマッチしていて今後に大きく期待したい部分となりました。

 その他にも、本作はエルとイヴ以外にも多くのキャラがいて、それもまた既にキャラの関係性という部分はある程度決まっているとなると、それが今後物語としてどんな風に見せられるかも気になるところですよね。1巻はエル×イヴにフォーカスしていたのもあって、まだまだ他のキャラとの絡みが物足りないぞ、という気持ちが正直結構あります。


 総括すると。

 この巻ではメインとなる二人の関係性や魅力をしっかり出し切るという部分にフォーカスされており、その点では非常に大満足。

 しかし、それ以外の部分では全体的に「続きが気になる」「話のネタは既に色々あるのだったら、それを早く見せてくれ~」という気持ちが大きいでしょうか。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★☆ (7/10)

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10)

 キャラの魅力・・・★★★★☆ (9/10)

 イラスト・・・★★★★★ (10/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★☆ (9/10)

 

 総合評価・・・★★★★☆(9/10) 期待通りの面白さ、美麗なイラスト、二人の少女のバディモノ。最高ですね!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp