今回の感想は2024年5月のスニーカー文庫新作「語学留学に来たはずの貴族令嬢、なぜか花嫁修業ばかりしている」です。
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あらすじ(BWより引用)
「絶交です。大嫌いです! 二度と私に顔を見せないでくださいね!」「分かったよ。もう会わないようにしよう」
イギリスの学校で親しくなった久東聡太とアメリア・リリィ・スタッフォード。楽しい時間を過ごす中、聡太から日本に帰ることを聞いたリリィは怒りだし喧嘩別れしてしまう。
それから半年後、リリィは聡太の高校に留学し、さらに彼の家をホームステイ先に選んでいた。突然の再会とリリィとの同棲生活に戸惑いながらも聡太が「何しに日本へ?」と問いただすと、頬を赤らめたリリィから「はなよめしゅぎょう、です」と告げられて……。
感想
うん、良かったと思います。
本作は、イギリスで出会った女友達のリリィと喧嘩別れしたのに、何故か彼女が花嫁修業と言って自分の家にホームステイに来るところから始まるお話です。
しかしながら、これだけだとあらすじとしては不足していて。
冒頭に描かれるヒロイン視点によって、彼女は主人公の聡太と恋人になっていると思い込んでおり、だからこそあまりに素っ気なく帰国しようとしてしまう彼に怒ってしまった。けれどやっぱり寂しくなって追いかけて来た……、という具合ですね。
そのため、本作は勘違いとすれ違いをベースにした二人のやり取りを楽しむラブコメとなるわけですね。
ヒロインの方は導入の段階から、思い込みが激しく、人の話をあまり聞かないタイプだと分かります。そのため主人公の方に、恋人の意識がないだなんて全く思わないでしょう。けれど主人公が口にする言葉の些細な部分で、やっぱり彼は自分を好いてくれると一人相撲をしていきます。
一方で、主人公の方からしたら、花嫁修業というのは日本語のニュアンスを少し間違えているのだろうかとしか思ってなく。またヒロインのツンデレという性格も災いして、彼女が主人公が好きであることが真っ直ぐに伝わっていません。したがって、相手が自分のことを恋人であると思っているだなんて露ほどにも思っていないでしょう。
とはいえ、ヒロインは当然主人公のことが好きなので積極的なアプローチをすることはありますし。逆に主人公の方も、彼女が困ってるときには助けていき、それに際して自分から親密な関係であるような言動をするので。
正直、どっちもどっちでなんか距離感を間違ってない? とは思いますし。
すれ違いに気づくタイミングを作ろうと思えばいくらでも作れるだろうとも思います。
個人的には、このツンデレという性格さえどうにかなれば。
少なくともこのすれ違いは収まるのではないか?
と、そう思うくらいにはツンデレが恋愛の進展においては完全に悪手にしかなっていないんですけれども。
ただ、このすれ違いを上手いこと維持したままに話を転がすという点では。
どうにかヒロインの好意が上手く伝わらない理由は必要でしょうし。
そういう意味ではツンデレでなきゃダメなのかな、とも思ったりしました。
(本作のツンデレに関して、もう少しアレコレ言うなら。
まず本当に相手が恋人だと思ってるならツンデレのツン比率は下げるべきですよね。仮に本当に恋人だったとしても、別れても仕方ないと思えるような言動めちゃくちゃ多いですし。そういう意味では本作のツンデレって絶対、恋人のツンデレではないんだよなと。
ツンデレのツン多めが楽しめるのって、やっぱり付き合う前までの絶妙な距離感こそでじゃないかと。なのでその点ではすれ違い系で、実際にはまだ付き合ってない状態としては上手く機能してるのですよ。
だから、正直ツンデレという属性の扱いで言えば話に結びつけるのは上手いけど。ヒロインの立場からすると相性悪すぎるという。ツンデレの良し悪しが1つの作品である意味完璧に対比できてしまっているこのチグハグ感というのは、この作品のミソじゃないかと思います。まぁ、個人の好みだけで言えば、さっさと素直になりなさい、って思いますが。)
とはいえ、このすれ違ったままの状況がずっと長引くのは流石に話がだれる気もするので、どうにか上手いタイミングでお互いのすれ違いを認識して。そこからヒロインと主人公がそれぞれどう意識が変化するかというのを見せてほしいかなとは思います。
ですので、まとめると。
認識に大きな隔たりのある二人の噛み合わないラブコメ。
そのすれ違い模様を楽しむ分には、なかなか良かったと思います。
総評
ストーリー・・・★★★ (6/10)
設定世界観・・・★★★ (6/10)
キャラの魅力・・・★★★ (6/10)
イラスト・・・★★★☆ (7/10)
次巻以降への期待・・・★★★☆ (7/10)
総合評価・・・★★★(6/10) ツンデレの良し悪しを考えさせられます
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
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