ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part111】誰が勇者を殺したか

 今回の感想は2023年10月のスニーカー文庫新作「誰が勇者を殺したか」です。

誰が勇者を殺したか【電子特別版】 (角川スニーカー文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 勇者は魔王を倒した。同時に――帰らぬ人となった。

 魔王が倒されてから四年。平穏を手にした王国は亡き勇者を称えるべく、数々の偉業を文献に編纂する事業を立ち上げる。

 かつて仲間だった騎士・レオン、僧侶・マリア、賢者ソロンから勇者の過去と冒険話を聞き進めていく中で、全員が勇者の死の真相について言葉を濁す。

「何故、勇者は死んだのか?」

 勇者を殺したのは魔王か、それとも仲間なのか。

 王国、冒険者たちの業と情が入り混じる群像劇から目が離せないファンタジーミステリ。

 

感想

 これは、面白いとか面白くない以前に感情が動かない作品でしたね。

 

 まずは、本作の概要をお話します。

 

 勇者が魔王を倒して、そして勇者が死んでしまった。

 一体、何故なのか?

 それを知るべく、勇者の仲間だった剣聖、聖女、賢者、彼の故郷、様々な場所に行き話を聞くことに。すると徐々に勇者の旅の全容と何故彼が死んでしまったのかという真実に近づいていく、そんなお話でした。

 

 そして、本作はこれ以上でもこれ以下でもない。

 

 なんていうんでしょうか。

 ただ事実の羅列を読んでいたような。

 あるいは「こういう設定面白いでしょう」「こういう構成面白いでしょう」というアイデアノートを見せられたような。

 

 まず序盤の100ページくらいで「勇者の仲間がインタビューを受けて、勇者について語る」「その語った内容を断章としてリフレイン」するという構成が仲間3人分続き、なおかつその仲間3人が話す内容がほぼほぼ同じということで、これは普通にしんどかったです。なんで同じ話を2回見せられて、さらにその同じ構成を3回も見せられてるんだ? と疑問に思うばかりでした。エンドレスエイトにでも閉じ込められたかと疑ってしまいました。

 その苦行パートを乗り越えて、ここから話の転機かと期待すると「実はこうだったのだー」という話がすごいサラッと話される。

 さらにそこからどんでん返しあるのかと思ったら、またいきなりサラッと「実はこうだったのだー」というお話をしてきて……、そのまま読み続けて気がついたら物語は終わりました。
 読んでいるとたしかに「あー、なるほど」「そういうことか」「面白い設定じゃん」と何度も思うタイミングがあったと思うんですけれど、その設定や真実を明かす流れとか展開があまりに淡々としすぎていて、そこにびっくりするくらい感情が伴わない。

 違和感のある文章を読んで「たぶんこういうことなんだろう」と思ったら、それがそのまま書いてあり「うん、そうだよね」で終わってしまう。だからこそ読んでいる間の感情が常に一定、フラット、マジで動かないです。

 

 正直なところ。勇者の泥臭い努力、そこにある背景、そんな勇者を見て仲間たちが感じたこととか、そういうキャラの部分に着目してみると読者の感情を揺さぶるドラマの片鱗みたいなものもいっぱい感じたんですよ。

 しかし、ここに関しても結局のところ「勇者はすごいやつだった」「そんなすごいやつに出会って俺は変わることができたんだ」という、なんかごくごく普通のことしか書いてなくて……、あ、はい、すごいですね。としかわたしは思えずに終わったんです。

 キャラに好感を持つっていうのは、そのキャラが辿ってきた色々な出来事を見てようやくできることなんですから。勇者の仲間たちが、学校では勇者とこんな風に出会って切磋琢磨したんだという要約を各30ページずつくらい見せられたって、初見の読者は感情移入するより「へぇ、そうなんだ。いい話だね(他人事)」としか思えないと思うんですよ。

 

 そうなってくると設定やキャラが持つ要素は面白いものばかりなのに、それが1冊の本になって全く面白さになっていないというミステリーが生じるのです。

 高級食材を使って、味のない料理ができたかのような感覚かもしれません。

 もしくは庶民が高級料理を食べて「うーん、なんかよくわかんね」と言う感覚かもしれません。

 

 本当に、これは何をどう読めば良かったのでしょう?

 最初に言ったように、面白い設定とか構成のまとめられたアイデアノートを見て、素直に面白い作品じゃんって思えば良かったのでしょうか?

 あるいは勇者の変遷をたどる回顧録として考えれば、淡々とした事実の羅列を見るというのはバチッとハマっているものだとは思いますが……、わたしにはそれを面白さとして享受するのは難しいです。

 

 ひとまず、感想締めます。

 最初にも言いましたが、びっくりするほど感情の動かない作品でした。

 久々に読書で終始すっごい真顔でした。

 すみません、わたしには合わなかったようです。

 

 追記:最後のエピローグだけは面白かったです。勇者の仲間たち全員勇者好きすぎかよと言いたくなるアホらしいコメディがあったので。

 

総評

 ストーリー・・・★★ (4/10)

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10)

 キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 

 総合評価・・・★☆(3/10) 要素は光るものがあるのに、びっくりするほど感情が動きませんでした。 

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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