ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part169】グリムコネクト

 今回の感想は2024年4月のダンガン文庫新作「グリムコネクト」です。

グリムコネクト1 ー赤ずきんの章ー (ダンガン文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 狂気に侵された童話の世界を浄化せよ──。不治の病に侵された妹を持つ少年、御空マヒルは少年院の図書室で真っ赤な本を見つける。好奇心から開いてみると、よく知る赤ずきんとは全く違う惨劇の物語となっていた。呆気に取られたマヒルは気づけば、真っ白な空間のなかで怪しげな少女の前に立っていた。「さあ、始めようか──これは正真正銘、君の物語だよ」そして始まる狂わされた円環の輪。失敗すれば死に、何度でも繰り返される狂った童話。クリア条件不明、難易度最大、味方なし。この物語の果てになにがあるのか。「いってらっしゃい。幸運を祈っているから──死んでおいで」

 

感想

 ――可愛い女の子にコロコロされるのはご褒美だろうか?

 うーん、ヤンデレヒロインの愛情に押しつぶされそうになるのは一向に構わないけど、実害が出るのは普通に痛くて嫌だよなぁ……。でもヤンデレヒロインって愛情が重すぎたり独占欲強すぎるだけだから、それと同じくらい重い愛返してイチャイチャできれば別に問題ないのでは? とも思ったりするわけで。

 実に難しい問題ですね。ふん。




 ……、そんな前置きはさておき。

 とりあえず、本作のあらすじをさらっていきますと。

 

””不治の病に侵された妹を持つ主人公。

 彼が図書館で見つけたのは、あまりに凄惨な内容の赤ずきんの本。

 気がつくと彼は不思議な空間にいて、羊飼いを名乗る謎の少女から「狂気に歪んだ物語を浄化しなければならない」と言われる。それが妹を救うためになるのだと。

 

 そうして始まる血と惨劇にまみれた赤ずきんの物語の攻略。

 死に戻りを繰り返して辿り着く結末は如何に――””

 といった感じでしょうか。



 もう少し端的に、個人的な印象を述べるなら。

ゲームのシナリオを読んでいる感」が強い作品でしたね。 

 サバイバルホラー系で、〇日間生き残るために何回もトライ&エラーとバッドエンドを繰り返して攻略のための手がかりを見つけていって、その情報を全部揃えてようやく生存のための最適行動が取れるようになる。みたいな。

 そういう系のノベルゲームをやっているような感覚が強かったんですよね。

 

 ですので、言うまでもなくそういう作品ならではの面白さや読者を惹きつけるものがしっかりあったと思います。

 主人公と一緒にゲームのシナリオを追いながら、何が問題なんだろう、どうやったら生き延びることができるのだろうって考えながら読むことができますし。急展開からのバッドエンドは何度目にしても心臓に悪いことこの上ないですし。それまでの失敗が繋がってようやく辿り着く最後の生存ルートは良かったぁ~って気持ちが溢れてきますよね。

 この手の臨場感やハラハラっていうのは、やっぱり読んでいて良い刺激になります。面白いです。



 また最初に述べたヤンデレ云々というのも。

 まぁー、なんとなく察していただければ、と思いますが。

 女の子に殺されるエンドもあるよっ☆ っていうことですね。

 個人的に女の子の愛情が重いのは大好物なんですけど、果たしてそれはどこまで許容できるものかというのは長年の悩みでありまして。でもヤンデレは取り扱いさえ間違えなければ一途で愛情深くて良いじゃないかと。ヤンデレが凶行に走るのって、それを受け止めきれないで逃げたりしようとする相手側が悪くないですか? とかなんとか色々考えます。

 なにはともあれ、本作のヒロインとなる赤ずきんのメイジーちゃん。

 とても可愛かったと思います。天真爛漫で優しい普通の女の子かと思えば……、というギャップみたいなのがとても良いですよね^^

 

 

 それから本作では、童話の二面性を強く感じるところも良かったと思います。

 童話というのは基本的には子どもにも分かるような内容で、絵本とかにもなるようなものですね。そうなると優しい、温かい、ほのぼの、というイメージは結構あるのではないかと思います。

 しかし一方で、よくよく考えると童話ってやってることエグくない? という印象があるのも事実です。例を挙げると、オオカミの腹を裂くだの、妬ましい女に毒林檎を食わせるだの、子どもたちを食べようとする魔女だのと……、枚挙に暇がなく。

 

 そして本作の場合、基本的には主人公が不幸な立場にあるんですよね。作中でも弱者と明言されるくらいに、特別な何かを持たない男です。

 そんな彼が狂気に歪んでいる童話の世界に入ることで、当然その残酷さや苦痛にその身を傷つけられていくわけですが。そんな中でも童話というモノの持つ温もりにちゃんと触れているんですよ。それが本来不幸の身でその上残酷な世界にいきなり連れてこられた主人公の心の変化に大きく影響を与えるっていうのは、物語としてすごく良いですよね。

 童話はやっぱり子どものためにあるものだと、いうコンセプトの一致と言いましょうか。

 またこの現実世界ではない架空の場所、であるからこそ。何度も繰り返して繰り返して1つ1つ何かを得ていき進歩していく。という目に見える成果を持って成長していくっていうお話は、この主人公に必要なものなんだろうなと思えるのも作品の要素と要素の相性の良さを感じて個人的には好きなところでした。




 ただ、一方で個人的に気になってしまったのが。

 本作のメインストーリーが童話世界の攻略である反面で。現実世界の話、主人公が本来持つ背景の部分がほとんど語られてないんだよなぁ、というところですね。

 通常のゲーム転移や異世界転移であれば、主人公が物語として本来あるべき場所の基準っていうのはもう転移後の世界になるので、その世界のことだけをどんどん描いていけば良いと思うのですが。

 本作の場合はそうじゃないと思うのですよ。あくまで、主人公の目的は現実にある病をわずらった妹を助けたいって気持ちで、そのために不思議な世界に迷い込んだ、という構図なわけですから。この基礎の土台となる現実の部分をもう少し1巻で話しても良かったんじゃないかなと。

 そうでないと、主人公への共感や好感がなかなか生まれてこないんですよ。最初にゲームのシナリオを読んでいるような感覚を話しましたが、もっと正しく言うと「小説の中にいる人物が、ゲームをやっている様子を一緒に共有している感覚」を私は感じています。

 そうなると私の中には「私自身 / 小説の中の主人公 / ゲームの主人公」という現実とフィクションの壁が2枚あるものと思っていて、この最初の壁を越えて見えるはずの「小説の中の主人公」というのをほとんど描かずに、その先にある「ゲームの主人公」ってものを描いてしまっているので、端的に言って”遠い”と感じてしまいます。

 ゲームの主人公の基準になるのは、小説の主人公なわけですから。その基準の部分の背景周りや設定はもう少しあってほしかったなと。そう思うわけですね。

 

 しかし、まぁ、分かってますとも。

 それはこれから話が進む中で少しずつ明かされていくモノだろ!

 と言われたらそれ以上でもそれ以下でもないことは……、分かってます。なので、この話はここまでです。

 

 

 

 そういうわけでまとめますと。

 ゲームのシナリオを見ているような面白さのある作品。童話というテーマを扱ってエグみのある描写が前面に押し出されているが、しっかりと優しさも垣間見える塩梅はいいと思う。一方で主人公の背景関連はもう少し語って欲しかったかなと。

 面白くはあるけど、一歩足りない。

 そんな感じですね。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)

 設定世界観・・・★★★ (6/10)

 キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10) 

 イラスト・・・★★★ (6/10)

 次巻以降への期待・・・★★★☆ (7/10)

 

 総合評価・・・★★★☆(7/10) とりあえずメイジーちゃんは可愛かった、ちょっぴり狂気的な女の子はいいぞ

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。 

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