ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part101】男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと

 今回の感想は2023年4月のMF文庫J新作「男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと」です。

 ※現在2巻まで刊行中(2023年6月)、今回は1巻を読んだ感想ですね

男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと1 百合の間に挟まる男として転生してしまいました【電子特典付き】 (MF文庫J)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 絶対に百合にはなり得ない新感覚の学園バトル&ラブコメ

 男子禁制のゲーム世界に、どんなルートでも破滅確定のお邪魔キャラとして転生してしまった俺、ヒイロ。迫りくる死亡フラグを回避するには強くなるしかない。そんな必死の努力を重ねた影響か、エルフの姫ラピス、メイドのスノウ、妹のレイ、主人公キャラの桜など、ゲームのヒロインたちから好意を寄せられることに……。このままでは「百合の間に挟まる男」認定されて抹殺されてしまう! やっぱり死ぬの? どうする俺!? さらに、俺というイレギュラーをめぐって彼女たちが争いはじめて……って、女の子同士が仲良くなる設定はどこいったんだよ。百合の間に挟まる男は●ね!

 

感想

 これは良いですね!

 面白かった!!

 

 百合ゲー世界のお邪魔キャラに転生してしまった百合に挟まる男は絶対に許さない主人公の奮闘記。

 まず、本作は何と言っても、この一貫した主人公の姿勢がカッコいいのですよ!

 

 百合に挟まる男は死すべき。百合を見守る観葉植物になりたい。そんな百合への愛情が限界突破したような男が、しかしどういう因果か百合ゲームの邪魔男ヒイロになってしまった。当然ながら、その男は本来のシナリオではことごとく死ぬ運命にある。

 百合に挟まるくらいなら死んだ方がマシだと、百合を守るためならこの命いくらでも捨ててやろうと、そんな信念を持つならささっと死んでしまうのはむしろ本望ではないか? と思うけど、そうじゃない。

 

 本来のシナリオを知るからこそ、彼はヒロインたちに襲いかかる過酷な運命もまた知ってしまっている。それを知りながら放置して、百合を守るためでもなんでもないただの邪魔男として犬死にするのは、百合を守る信念に反するのだ。

 

 百合を守るだけなら、自分が邪魔男にならないようにひっそりすれば良いのでは?

 と思うけれど、それもまた悪手。

 本作は何故主人公が転生したのかが一切描かれない。故に主人公からしたら、無数の死亡フラグを持つお邪魔キャラになってしまった自分が、いつ誰にどんな理由で殺されるかが分からない。分からないからこそ、何が起こっても良いように力を付けなきゃいけない。積極的に、自分から動かなきゃいけなくなる。

 

 その命を百合を守るために燃やし尽くしたいからこそ、彼は百合世界の邪魔者になってしまう自分を自覚しながらも、なんとしてでも生き延びようとして、そして過酷な運命を全てはね除けるための力を欲する、そんなジレンマがまず本作の面白さを生み出してくる。

 さらにここにもう1つ重なるジレンマ。

 この1巻では中盤の展開、最初のクライマックスにあたる部分。

 転生したヒイロの妹であるレイ。

 本来であれば彼女は、自身の家柄に囚われその心を殺して生き、そしてやがては百合ゲーの主人公と出会って救われるシナリオになっている。

 ヒイロに転生した自分は、そんな未来の百合を守るためだったら、今現在目の前で泣いている女の子を見捨てていいのか? いいわけがない。そんなのは許しちゃあいけない。助けるしかないだろう。

 

 本作はとにかく、本来はただ邪魔な男であるはずのヒイロに転生した主人公が。

 最初からもう元々のシナリオ通りに振る舞おうなどという気持ちは一切無く。

 たとえそれがゲーム的に間違った行動だと分かっていても、自分の百合に命をかけるという信念のためには譲れないものがある。

 そんなスタンスを一貫している、これがしっかりカッコいいに繋がるわけです!

 

 そして、その結果がどんどんヒロインに惚れられてしまって。ハーレム主人公さながらのヒロインたちの修羅場に巻き込まれてしまって「百合を守るはずの行動がどうしてこうなんだ!?」という所謂勘違いコメディ的な面白さもしっかり担保してますし。

 そもそも百合に命かけるぜ! とかいう馬鹿げた言動を一貫している主人公そのものがコメディであるとも言えます。ヒロインを助けてぶっ倒れるときにすら「女の子と恋をするんだ……」と遺言を残そうとする姿は実にシュールでアホアホしい。

 

 百合を守るという、それだけの主人公の信念を軸にしてこれだけの魅力を生み出せるのは上手いと言わざるを得ませんよ。




 さらに、この作品で最大の問題になりそうな「百合に挟まる男」問題。

主人公がその信念を捧げるように、百合好きな読者もそういう気持ちを持っている人が少なくないかもしれません。

 が、しかし、本作はここが百合ゲーの世界で、本来はヒロインたちが結ばれる運命にある、としか言っていないんですよ。

 つまり読者から見ると、そもそもヒロインたちがイチャイチャしている姿を見ることもないですし、その結ばれるまでの過程に対する感慨が薄い。

 言ってしまえば百合要素がない。

 しかし、主人公から見ればそこには百合要素しかないはずの世界。

 故に、読者としては不快感を感じることなく、しかし主人公的には絶対に許せない自分の立場という苦悩を理解できる、その丁度良い塩梅になっているのですよ。

 これも上手な設定ですわ。



 なので、素直にハーレムファンタジーとして見て楽しめる作品。

 ヒロインたちは言うまでもありませんがみんな可愛い。

 そんな可愛いヒロインたちが主人公を巡って修羅場る展開、いいじゃないですか。

 目的が百合を守るためとはいえ、結果的にはヒロインたちを守るために常に全力で命を張るような男なんですよ。ヒロインたちが惚れる気持ちもよく分かりますし、応援したくもなる。

 ただ、百合に挟まるのはダメ絶対を信念としている以上、決してヒロインたちに靡くこともない主人公の気持ちも尊重してあげたい。

 なかなか難しいラブコメ具合になってきて、はてさて主人公の明日はどっちだ……、という感じで終わってて2巻以降もすごく気になりますね。

 3巻発売も既に決定しているようですし、早めに読みたいところ。

 

総評

 

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)

 設定世界観・・・★★★★☆ (9/10)

 キャラの魅力・・・★★★★☆ (9/10)

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★★☆(9/10) 百合を守るために戦う、その信念が生み出す波乱のラブ&コメディが面白い!!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp