ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【シリーズまとめ感想part33】浅草鬼嫁日記

 今回感想を書いていく作品は「浅草鬼嫁日記」です。

 富士見L文庫より2016年から2022年まで刊行されていた全11巻のシリーズ。作者は友麻碧。イラストはあやとき

浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 (富士見L文庫)浅草鬼嫁日記 十一 あやかし夫婦は未来のために。(下)【電子特典付き】 (富士見L文庫)

※画像はAmazonリンク(1巻および11巻)

 

 

 まずはいつものように本作のあらすじから。

 

 ””人間に紛れてあやかしが生きる浅草の街。

 高校生の茨木真紀、天酒馨、継見由理彦。三人はそんな街で普通の高校生として暮らしながら、しかし事あるごとにあやかしたちの問題に首を突っ込んでいた。彼らにはとある秘密があって……、それは三人が1000年前の大妖怪、茨木童子酒呑童子、鵺であった前世の記憶とその特殊な力を持っていること。

 浅草の街を舞台にあやかしと前世の因縁に満ちた最強の鬼嫁の物語が始まる。””

 

 といった感じですね。

 ジャンルとしてはファンタジー&恋愛になりますね。

 

 そんな本作はつい最近、2022年の11月に完結したばかりで。

 実を言えば完結を機に読んでみようと思って一気読みしてみた作品になります。もともと友麻先生は「メイデーア転生物語」を読んでいて、そちらがめちゃくちゃ好きで、他の作品も機会があればと思っていたんですよ。

 

 で、実際読んでみてこれがもう本当に良かった!!!

 

 より丁寧に言うのなら、「前世がある」という1つの要素を中心にして広がる物語と、これ以上無く深められるキャラクターたちの関係性が非情に魅力的な作品、なのですよね。

 

 なので今回はここについて詳しく話していくのを感想とします。

 

前世の使い方がめちゃくちゃ上手い!!

1:真紀と馨の関係性

 本作のメインヒロインおよびヒーローとなるのは茨木真紀と天酒馨。

 二人はかつて茨木童子酒呑童子であり、夫婦であった前世を持ちます。

 故に現代の浅草に生まれ変わった二人もまた自然と惹かれ合うのですが……、本作の二人の関係性はただそれだけの単純なものではなくて。

 

 前世がある、ということはつまり二人は一度死んでいるのです。

 そしてその死は決して幸せなものではなかった。

 悪い鬼だと言われて、人間の陰陽師によって調伏され殺されてしまっているのです。

 

 そんな二人がどういう因果か憎むべき”人間”に生まれ変わって、しかし人間に畏怖される”鬼”の力は持ち続けている。

 そんな二人の気持ちは二人にしか理解ができない。

 更に言えば、夫婦であり幸せな日々を送っていたはずなのに、それが壊れることを経験している二人だからこそ誰よりも「失うことを恐れ」「幸せであることを願う」のです。

 

 真紀と馨の関係性はただの恋人や夫婦なんて言葉じゃ説明できないくらいに深い。

 お互いに依存しあっているようで、けれど純粋に愛しあっているだけでもあって、この二人の願いは本作のテーマにも繋がる重要な部分。

 

 これがもう尊いとしか良いようがなく、読んでいると二人に幸せになって欲しいと願わずにはいられない素敵なものなのですよ。

 

 そして、ただ単純にイチャイチャを見てるだけでも楽しいですよ。

 会話の節々から夫婦感をにじませたり、真紀以外の人じゃダメだ、馨以外の人じゃダメだ、世界中の何よりもお前が大切なんだっていう好きの特大感情伝わってきたり、イチャイチャしてたりするのを見るだけで甘すぎて砂糖吐きそうになるので読んでて幸せしか感じないのです。

 

2:眷属たちとの関係

 かつて大妖怪だった茨木童子酒呑童子にはそれぞれ腹心とも言える四人の眷属がいまして、この眷属たちとの関係もすごく良いんですよ。

 

 眷属たちは当然あやかしです。

 なので全員がめちゃくちゃ寿命が長く、茨木童子酒呑童子の二人が亡くなった後も生き続けているのですよ。

 彼らが生き続けているのは言うまでもなく、茨木童子酒呑童子が守り抜いたから。けれど、そうやって守られて残された彼らは大切な主を失った悲しみを背負ったまま生き続けなきゃいけなく、果たしてそれが本当に幸せなのか?

 

 残された者たちは、その主が大切にしていたものを守ろうとする者、二度と悲劇を繰り返さないように影ながら戦い続ける者、亡き主たちの名誉を語り継ごうとする者、主との思い出と悲しみを抱え続ける者、忌々しい主がいなくなって自らの野望を叶えるチャンスとする裏切り者、などなど様々いました。

 しかし、この誰もに共通するのは主人である茨木童子酒呑童子への”愛”があったこと。敬愛、友愛、親愛、恋愛、形はそれぞれあれど大切に想っていたのは疑いようもない。裏切り者だって、自分自身の守り抜きたい信念と愛があったからこその凶行でしたし。

 

 そして、そんな茨木童子酒呑童子を愛し続けた者たちが、再び生まれ変わった真紀と馨に出会って、取り戻した関係性と新しい関係性。特に、今世では”人間”になってしまった真紀と馨だから、長寿命の眷属のあやかしたちとは必ず別れのときが訪れてしまう。

 前世と同じように、彼らを残すとしても、どういうふうに彼らを残すのか。

 悲しみだけで終わった前世のようにはしない。今世こそは幸せになる、真紀と馨の願いが一層深まると同時に、この眷属たちとの絆にめちゃくちゃ胸を打たれるんですよ……っ!!

 

 特に個人的には茨木童子、真紀の眷属だった水蛇のスイと吸血鬼のリンがめちゃくちゃ好きなんよ!

 てか、スイにフォーカスされた5巻6巻とリンにフォーカスされた8巻読んで好きにならないわけがないんだよ、あんなの!!!

 8巻のリンが放った激重感情の迷言は一生忘れられませんし(笑)

 

3:現世での家族との関係性

 真紀と馨の関係性の項でも少し言いましたが、

 二人は自らが人間から畏怖されるものと自覚していて、それでいて大切なものを失うことを常に恐れています。

 

 そんな二人がお互いに依存気味になっているのは、理解者が他にいないから。

 それは言うまでもなく、今世の家族ですら。

 言えるわけがないのだから。自分たちは鬼です、あやかしが見えます、なんて。頭がおかしくなったとしか思われないでしょう。だから、家族なのに、本当のことを言えない。でも、本当は言いたい。こんな自分でも受け入れて欲しい。

 そんな矛盾した気持ちも、前世があるというただそれだけで生まれてしまう非情に難しい問題。

 

 さらに加えて言うのなら、真紀と馨は夫婦であって、確かに家族になれるけど。お互いに愛し合うことはできるけど。そうじゃない。親からの愛情だけはお互いじゃ決して生み出せない。それが悔しくて悲しい。

 この部分は読んでいて本当に良かったんですよ。

 家族の愛と夫婦の愛の差で、そのどちらものをこんなにも強く魅せることができるのかと感動しました。

 

 また、家族での愛情では真紀や馨だけでなく、二人の友人である鵺の由理も家族が大きなテーマとなって物語が展開されていました。

 こちらは親と子ではなく、兄妹での関係性にフォーカスしてまして。

 また、由理のお話は前世でも今世でも、人間とあやかしは共存できない、という部分に比重が置かれていて、正直なところ読んでいて不安や悲しみでいっぱいだったんですよね。ただ、それでも決して切ることのできない縁はあるのだと、共存できないとしてもそうあろうと手を伸ばすことの大切さ、そういったものも同時に描かれていてこれが異種族間での交わり大好きなわたしにはブチ刺さったわけですよ。

 由理の妹の若葉ちゃん、登場シーンは多くないけど、めちゃくちゃ好きな子です。

 

4:前世から続く因縁

 ここまで三種類に大別して、前世があることで深まる関係性というものを話してきましたが、前世があるというのは言うまでもなく物語としても大きなキーになっているわけですよ。

 

 前世から始まっている因縁。

 生まれ変わった今世ではそれぞれがその過去に向き合う中で明かされる真実があり、償わなきゃいけない罪があり、逃れられない宿命の戦いがあるわけですよ。

 こういうのってシンプルに面白いじゃないですか!

 それだけでなく、特にこの作品の場合これまで散々述べて来たように過去から続く因縁という要素はめちゃくちゃ大きくて、これが何度真紀や馨を苦しめたことか。3巻や5巻や6巻、8巻9巻、10巻11巻……(うん、ほぼ全部だな)……において、その全てを受け入れ乗り越え進んでいく二人の戦いからは目が離せないのよ!

 

 もう終盤の怒濤の展開は圧巻の一言。

 この作品世界の全てには因果が繋がっていて、その集大成が今ここにあるのだという、控えめに言っても壮大過ぎるエピソードには感動と涙が止まらん!

 ここでは安倍晴明の生まれ変わりである叶先生がめちゃくちゃ好きになるのよ!

 

5:つまり結局言いたいのは

 浅草鬼嫁日記、マジで面白すぎました。

 前世の使い方上手すぎる。

 キャラの関係性をここまで深くできるのヤバすぎる。

 本当に尊い無理死ぬありがとうございました。

 

6:巻別満足度と総合評価

 最後に本作の巻別満足度と総合評価です。

 

 まずは巻別満足度。

 グラフを見ての通り、1巻から終始非常に高い満足感を得られた作品。

 ただその中で特別良かった巻を挙げろと言われたらやはり最終10巻と11巻、そして中盤のクライマックスである6巻になるでしょう。

 

 そして総合評価です。

 シリーズ全体を通しての満足度は ★10/10

 個人的神作です!!

 

おわりに

 既に作品の総評みたいなのは言ったので省略して。

 

 最初にも言いましたが、完結を機に読み始めた作品で。もともとメイデーアが好きだったから期待していたけど、本当にめちゃくちゃ良かったんですよ。現在刊行中の「水無月家の許嫁」も1巻を読んでいますが、この浅草鬼嫁日記と繋がりがあると分かって見え方が変わってきましたし。

 また、友麻先生の代表作である「かくりよの宿飯」をまだ読んでいなかったのですが、これはもうめちゃくちゃ期待して早く読まなきゃと思いました。

 

 読み終わってしばらくはロスになりますよ。これ。

 本当に良かったです。

 

 というわけで、今回の感想はこのくらいで。

 気になった方は1巻のリンクを貼っておくのでチェックしてみてください。

 

Amazonリンク

浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 (富士見L文庫)

BOOKWALKERリンク

浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 - 文芸・小説 友麻碧/あやとき(富士見L文庫):電子書籍試し読み無料 - BOOK☆WALKER -

 

前回のラノベ感想「おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!

【シリーズまとめ感想part32】おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ! - ぎんちゅうのラノベ記録

次回のラノベ感想「ライアー・ライアー」

【シリーズまとめ感想part34】ライアー・ライアー - ぎんちゅうのラノベ記録