ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part103】化物嬢ソフィのサロン

 今回の感想は2023年8月のマッグガーデンノベルズ新作「化物嬢ソフィのサロン」です。

化物嬢ソフィのサロン ~ごきげんよう。皮一枚なら治せますわ~ (MAG Garden NOVELS)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 皮一枚だけの癒しの力ですが……その傷、全力でお治しいたします! 元オカンの少女が贈る心ぽかぽかハートフルファンタジー

 裕福な商社を営むオルゾン家の一人娘ソフィは、生まれつき皮膚の奇病にかかっていた。その異様な容姿により周囲から『化物嬢』と呼ばれ、学園ではいじめられる毎日。ついには退学し、屋敷で皮一枚しか治すことができない微妙な光の力の習得と勉学に励むことになる。そんなソフィは、ある日自らの病気を苦に命を絶ちかけ思い出す。自分がかつて日本に生まれ死んだアラカンのオカンだったことを!化物嬢ソフィが、今日もお客様の皮をお治しいたします!

 

感想

 本作の主人公は生まれつき皮膚病を患い、その容姿から周囲から化け物と揶揄される商家の娘ソフィ。

 自殺に失敗した彼女が思い出すのは、前世の記憶。娘を持つ母として子を思う気持ち、そしてその娘もまた皮膚病で苦しめてしまった経験を垣間見たことで、ソフィ自身もまた両親から愛されていたのだと自覚する。愚かな行動に走ってしまった自分を悔い、ソフィは自らの持つ小さな癒しの力を人の助けに使うために家族の協力の元サロンを開くことになるのだった。

 

 と、いった感じのお話。

 

 この作品はとにかく人の心に寄り添う、その温かさで満ちていた作品でした。

 ソフィが患う皮膚病は直接的に命にかかわる病気ではない。しかし、周囲から化け物と言われてはその心には見えない大きな傷が彫りこまれている。

 同じように、ソフィのサロンに訪れる人たちが抱えるのはその身に残る何らかの傷跡と、それ以上にその人にしか分からない大きな心の傷や悩み。中には過去に重傷を追ってしまって、生きているだけ良かった、傷跡が残ったくらいでなんだ、なんて言えるようなものもあったかもしれない。

 けれど、そうじゃない。

 体が無事ならそれでいいわけがない。たとえそれが小さな切り傷や火傷痕、あるいはニキビやほくろだったとしても、その目に見える皮膚の問題一つから発生してしまう、他人からは決して見えない心の怪我というものが必ずあって、ソフィのサロンはそんな来訪者たちの事情を丁寧に聞き取って心に寄り添う場所でした。

 

 これがすごく温かい。

 患者の一人一人に丁寧に向き合ってくれるお医者さんが持つような温かさ。

 何よりもソフィ自身が同じような苦しみを持つからこそ、こうして他の誰かを助けたいとする姿に非常に好感が持てます。

 

 また本作は、来訪者たち一人一人の事情を丁寧に聞きながらその問題を解決していく様子が短編形式で描かれているため。そんな来訪者一人一人がその物語の主人公としているように、身近で感情移入しやすいものとして描かれているのも面白かったですね。

 読書の良さとして、自分じゃない誰かの物語に入り込める、みたいなものがあると思いますが、それが短くたくさん味わえるような感じです。

 そして、それぞれの話が心の傷にまつわる内容であるので、必然誰かと関わるようなお話になります。その多くは家族や友人、恋人といった非常に近しい人とのお話。その関係性の中にある複雑な想いの数々を感じられるのも楽しいポイントでした。

 

 それから、個人的に注目したいのが。

 ソフィ自身の世界もまた、サロンを通じて広がっていると感じること。

 商家の家族の力を借りて、いくつもの交易先に宣伝を伸ばせるソフィのサロンには自然と老若男女国籍問わずで多くの人が訪れます。そして、色々な話を聞いていると、文字通り世の中には色々な人がいるということ。すると訪れた人の中には、ソフィの容姿を見ても全然おかしなことなんてないと言うような人もいるわけです。

 ソフィが化け物なんて言われて冷遇されているのなんか、案外小さな場所なんじゃないかと、そう思えてくるわけですね。

 ソフィ自身がどう思うかは分かりませんが。オカンだったときの記憶が戻った時にはこの程度の問題がなんだと結構受け入れてるみたいですし。

 

 ともあれ、そんな感じで。

 この作品は言ってしまえば、ただ何度も何度も訪れた人の話を聞いていく、ただそれだけのお話でしょう。

 しかし、そうして話を聞くだけでどれだけ悩みを持つ人が救われるか。そして訪れた人たちにとってその体の表面に抱えた問題がどれほど大きなものだったのか。そんな人の心を身近なものとして感じられる魅力のある作品でした。




 最後に、本作はTwitterのフォロワーさんからいただきました。

 素敵な作品をありがとうございました。普段大判ノベルスの作品に手が回らないので、こういう機会をいただけるのが本当にありがたいです。

 そして、その方が電子書籍特典が最高といっているのにめちゃくちゃ納得でした。

 電子書籍特典は、本編でソフィのサロンに訪れた人たちのその後が各4ページ程度のSSとして(合計すれば30ページくらいはあったでしょうか?)描かれるため、まさに必見といっていい内容でしたね。

 

総評

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 誰かの抱える悩みにそっと寄り添う温かい物語の数々が素敵でした

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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